新型コロナウイルスに感染して一時、重症化した男性が「感染者が少しでも減り、医療関係者の助けになってほしい」と実名で取材に応じた。
40度に迫る発熱と悪寒。酸素マスクをつけられた男性は、愛する妻に「死にそう」とメッセージを送った。兵庫県加古川市の会社役員・前川真一郎さん（51）。新型コロナウイルスへの感染から重症化、闘病のすべてを語った。
「3カ月に1回くらい仲間内でするゴルフコンペだったんですが、今だったらしてもいいんじゃないかという話を数人でしまして。みんなの予定が合う日が11月8日だった」（前川さん、以下同）
「今だったらいいんじゃないか」。この判断がその後の運命を大きく変えた。感染拡大の第3波が迫っていた去年11月8日。前川さんはゴルフコンペを開き、打ち上げでは友人ら17人が居酒屋で鍋を囲んだ。そして翌日、同席した1人の感染が判明。「自分は大丈夫であってほしい」という願いもむなしく、会食から4日後、前川さん自身も39度の発熱。PCR検査で陽性となった（17人中8人が感染）。
「夕方の4時くらいに、出先で非常にしんどかった。その時に39度近くあって、間違いなくコロナだろうと。妻と息子はどこかに逃げなきゃいけない。たまたま母親が住んでいないマンションがあったので、そちらに行くことになった」
真っ先に考えたのは家族の身を守ること。そんな思いの中、自ら運転する車で病院に向かい、そのまま入院した。しかし、発症当初からの高熱は下がる様子もなく、症状は悪化の一途をたどった。
「40度近く毎回熱が出ていた。息がちゃんとできない状況で、『非常に酸素の濃度が低いのでICU（集中治療室）に行ってもらいます』と。本当にショックでした。『ICUに行かされちゃうんだ』とパニックでしたね。（息が）苦しいので吸おうとして、二酸化炭素を出せないまま吸おうとしていた。溺れている中、『みんな助けてくれ』という状態。（熱が）上がってくる時がものすごく悪寒がする。寒くて、ペットボトルにお湯を入れて持ってきてもらって背中に入れたり。そういうことが続いている時は『なんでこういうことになったんだろう』という、後悔というか…」
ICUに入ることが決まった後、前川さんはかろうじて動かせる指先を使い、妻にメッセージを送った。その後、医師や看護師の懸命な治療もあり、前川さんは一命をとりとめた。そして、一般病棟に戻ることができた前川さんは、病室で51歳の誕生日を迎えた。
「小さい誕生日ケーキがついていた。そんなことがあるとは思わないので、うれしいなと。皆さん（医療従事者）のおかげで生きて帰ることができた。しゃべれるようになってから看護師さんに話を聞いた。何が一番大変かを聞いていくと、『とにかく人が足りない』と。僕らが寝る時のシーツは業者さんが洗うのかを聞くと、看護師さんが洗う。全部看護師がするというのは本当に大変だと思った。看護師さんに少しでも楽になってもらいたい、何かできないかという思いがものすごくあった。誰でも絶対大丈夫というのはない。今は細心の注意を払っていただきたい。それが（自分が）助けていただいた医療関係者のためにもなる」
前川さんははじめ、感染したことを誰にも知られたくないと思っていたという。しかし、20日間以上に及ぶ入院生活の中で、感染リスクにさらされながらも献身的に働く看護師らの姿を目の当たりにし、自らの体験を実名で語ることで少しでも実情が伝わればと、今回実名で取材に応じてくれたということだ。
（ABEMA／『ABEMA Morning』より）
