あの“手の動き”は試合終了を意図する合図だったのか、はたまたギロチンチョークに対するタップだったのか…女子MMAの試合でレフェリーに対して行われた猛抗議がファンの間で議論を呼んでいる。
2月5日に放送されたONE Championship「ONE: UNBREAKABLE III」のメインイベントでスタンプ・フェアテックス(タイ)がアリヨナ・ラソヒナ(ウクライナ)と対戦。3ラウンド終了と同時にスタンプがギロチンチョークにタップし、MMAで初となる黒星を喫した。しかし試合後、スタンプが「私はタップしていない!」とレフェリーに食い下がる場面も見られ、ネット上でも「タップか否か?」の論争が巻き起こっている。
元ONE女子キックとムエタイの二冠王者で、MMAにも挑戦し、前人未到の三冠制覇が期待されるスタンプ。プライベートではONEムエタイフライ級王者のロッタン・ジットムアンノンとの交際なども注目を集めたが、その後に破局。リングでもキックタイトルに続き、昨年8月にムエタイ王座から陥落するなど不振が続いている。
一方、ラソヒナは元弁護士という経歴を持つファイターで、過去の戦績は12勝4敗と試合経験も豊富。グラップリング技術に長け殆どの試合で1本勝ちを収めた腕十字という強力な武器がある。
この日、スタンプはショートに刈り上げ、真っ赤に染めたヘアスタイルで登場。無敗が続くMMAでの再起に向け、強い意気込みが感じられる。実力・キャリアともに充実した相手との初めての対戦ということで真価が問われる試合だ。
1ラウンド、蹴り、パンチと強力なスタンプだが、ラソヒナも打ち合いに応じる姿勢を見せる。ラソヒナは中央、シングルでテイクダウンを取るとスタンプもオモプラッタから体を入れ替えてマウント、強烈なヒジを見舞う。さらにスタンプはバックにまわってチョークなど熟達ぶりを感じさせる動きを披露する。しかし、ラソヒナもパスガードから腕十字、数度のタックルでテイクダウンする場面など見ごたえのある攻防が続いた。
2ラウンド、スタンドではスタンプに分があるが、ラソヒナも打ち合いつつテイクダウンを狙っていく。しかし、スタンプがしっかりとタックルを切って対応すると、至近距離で右ヒジとパンチをまとめてラソヒナをグラつかせ、さらにフロントからバックへ回るなど動きが素早い。
一連の攻防で鼻から鮮血を流したラソヒナだが、マウントを取られると下から三角、さらに腕十字と危機的状況でも1本を狙える怖さを持つ。2ラウンド後半にもスタンプの左でガクリと腰を落としダウンしたラソヒナだが、残りは20秒。ここはゴングに救われた。
スタンプ優勢で迎えた最終3ラウンド。足を使い“待ち”の姿勢が目立つスタンプ。ABEMAでゲスト解説を務めた平田樹も「いつもは前に出る印象ですけど、今日は全然前に出ない」と指摘する。
残り1分、プレッシャーが弱いスタンプについて実況の西達彦アナウンサーが「(タックルで切られたくない)スタンプの弱気が出ているのかも…」という言葉に示し合わるかのようなタイミングで、ラソヒナが下がり気味のスタンプにタックルを仕掛けテイクダウンに成功。すかさずフロントチョークに移行すると、試合終了とほぼ同時にスタンプが左手で“ポンポン”とタップともとれるジェスチャーをしたことを受け、レフェリーが試合をストップ。しかし、この判断が議論を呼ぶことになる。
試合終了のゴング直後、3ラウンド圧倒したこともあり自身の勝利を確信したスタンプは力強いガッツポーズ。しかし、自らの敗けを宣告されると「WHY? 私はタップしていない!」と困惑ぎみにレフェリーのオリビエ・コストに食い下がる。
レフェリーの判断についてネット上でも意見が分かれたが、解説の大沢ケンジも同様に「極まってる感じのフロントではなかったですけど…なんだこれは」など釈然としない様子。スロー映像で、タップととれる左手の動きを確認した視聴者からは「あー完全にタップだ」「したつもりなかったんだろうけど、動きはタップだな」「練習の癖がでたのかな…」など様々な反応が寄せられた。
この議論を受け、ONEの公式SNSが「スタンプが激昂。レフェリーのストップは妥当か?」などファンへ問いかけると「私はタップに見えた」「彼女のファンだけどあれはタップ。反射的に動いたのかもしれないけど…」とする声に加え「スタンプの大ファンです。あれはタップだと思う。でも彼女が受け入れることができなかったのは理解できる。努力に時間を費やしてきて敗北を受け入れるのは難しい」など、試合後の出来事について同情的な意見も見られた。