「なぜ“影の政府=ディープステートは存在しない”という前提なのか。みんな生活が苦しい。そこで気づいてほしい」Qアノン信奉者に聞く
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 トランプ前大統領の支持者による議会乱入事件。暴徒と化した人たちの中には、政財界のエリートらが世界支配を企んでいるとの“ディープステート陰謀論”を信じ、真の平和な社会を取り戻すという壮大な目的を掲げる人たちがいる。いわゆる「Qアノン」だ。

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 そうした思想の信奉者はアメリカ国外でも急速に広まりを見せており、日本にも情報共有や意見交換を行うコミュニティーが存在する。その一つ、「QArmyJapanFlynn(QAJF)」の参加者は「私たちがやることは情報拡散運動」「各県に1人ずつくらいQアノンがいてくれるよう開拓したい」と話す。

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 特徴的なのは、彼らがディープステートに関する情報を独自に収集・解釈し拡散させることだ。

 「街の電力1年分くらいの、とてつもないフリーエネルギーを持っているという情報もあるらしい」

 「“超富裕層”と呼ばれる支配者層が、世界の残りの人々を奴隷化、家畜化しようとコントロールしている」

 「戦争もそうだし、コロナ騒動も、ディープステートが人口削減をするために行われた」

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 隊員の一人、Hiromiさんは「答えはなく、メッセージがあるだけ。それについて様々なQアノンたちが考察している。自分なりに調べて補完して考えを作り上げている。その数を増やして、ディープステートたちを倒していくための戦いをしていこうという感じ」と話した。

■「パックンさんもアウトだと思う。」

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 「もともとYouTubeなどで都市伝説や陰謀論などを見るのが好きだった。そこから世の中の不思議を知ったので、これは拡散しないといけないと思った。そういう中でQアノンのEriさんに出会い、隊員になった」と話すのは、QAJF隊員の2Heyさんだ。ただ、パックンが「ご自身のことは陰謀論者だとは思っていないのか」と尋ねると、Qアノンやディープステートに関してはそうではないと強く否定する。

 「政治家や貴族、宗教など、全ていろんなところで繋がっていると思う。そして、政治やメディアが洗脳、印象操作、言論統制を行っている。おかしい情報をアメリカから持ってきているという意味で、パックンさんもアウトだと思う。ただ、ディープステートがあるとかないとか、そんなのは関係ない。なぜ、“ない”という前提で話をするのか。無駄な議論はやめようよ。“俺、ディープステートだ”とか、“悪いことしている”などと自分から言うわけがない。だから、まずは“あるかもしれない”で考えていこうよ。今の生活が苦しい。そこで気づいてという話」。

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 2HeyさんがQアノン、ディープステートを信じる根拠は、“今の生活”だ。

 「一緒に考えてもらいたいが、なぜ戦争はなくならないのか、なぜ貧困がなくならないのか。アフリカなどの恵まれない子どもたちの問題が、なぜ解決しないのか。あるいはなぜこんなに税金を取られ、なぜ借金苦から抜け出せないのか。なぜこんなに家族がバラバラで、婚期も遅れているのか。夏休みの学童保育の説明会に行ってきたが、参加者は過去最多だと言われた。僕らが小さい頃、そんなに多くの人たちが共働きだったのだろうか。やはり全てが人口削減に繋がってくるし、全てがディープステートによって僕らの生活が脅かされているということだ」。

■「堀さんもチェックメイトだ。もうヤバい。」

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 こうした2Heyさんの主張もまた、自分なりに集め、解釈をした結果だという。これらの主張の真偽に対してパックンが疑問を呈すると、2Heyさんは「誰かから与えられる情報なら、テレビと一緒。嘘ばかり言っているのを鵜呑みにして、みんな勉強した気になっているだけ。僕たちにはQという軸があって、海外のアノンさんたちがSNSなどネットに色々な情報を流してくれているので、それを自分で拾いにいって勉強する。そこから刺激された人たちが“こういうふうなのがあった。こういう事実があった”という形でSNSに共有したり、YouTubeに動画をアップしたりしている。もちろん、本当も嘘も混ざっているので、そこは保留する。戦争がなぜ起こっているのかといった疑問については、辻褄が合う。点と点が結ばれる」と説明する。

 「Qの計画に沿った拡散運動をしている。信じてなんて言わない。こういう情報があるから、見てみてと言っているだけだ。僕たちはいたって真面目に日本を救おうと考えてやっているのに、皆さんは馬鹿の一つ覚えのように、僕らの言葉を“陰謀論”“都市伝説”だと決めつける。そうさせられているのに。しかし最近、僕も含め隊員100人くらいがTwitterアカウントをBANされた。だからTelegram、Gabなどをやっている。これも言論統制だ。ただ、最終的には全て開示されることになる。これからトランプ大統領が開示するので待っていてほしい。いつか気付く。その時には、ドンマイ、という感じだ」。

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 ジャーナリストの堀潤氏が「資本主義の仕組みの中、私たちが知らず知らずのうちにどこかの誰かを搾取しているのだと自覚するのは大切だ。ただ、やはり情報を拡散するだけでなく、それぞれの現場に行って、目の前で困っている、傷んでいる人たちを助けてあげてほしいと思う」と話すと、2Heyさんは「すごく必死だなと思った。あなたもチェックメイトだ。もうヤバい。批判というか、違う方向に印象操作に誘導するところがアウト。ディープステートがいそうなのにも関わらず、現実から目を逸らして自分たちが悪いかもしれないみたいな言い方してしまう。そういう印象操作をするのがいけない」と訴えた。

■「自分に対する真実の追求をしなかった、その姿勢を改めなければいけない」

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 一方、画家で映画監督の増山麗奈氏は、最近までこうした考えを信じてしていたことを後悔していると明かす。

 「福島第一原発事故の被害者の方や被爆者の方などの取材を続ける中で、なぜこんなにも国益に反することが行われているのだろうということを感じるようになった。そして、そういった情報がテレビでは報じられなかったり、真実を追求しようとしたジャーナリストの方が職から外されている様子を見て、何かメディアや国の背景には大きな動きがあるのではないかと考えるようになった」。

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 そんな中で行き着いたのが、2heyさんたちと同じ、「Qアノン」だった。

 「5年ほど前、投資家の方と映画への出資についてお話をしている時に、小児性愛、カニバリズムの瞬間だという写真を見せてもらった。その時は“そんなことがあるわけないだろう”と思ったが、後にQアノンが発信していた情報の中に、セレブや政治家たちが若返りになるからと小児性愛、さらに人の血を吸い、肉を食べているという話が出てきた。そこで5年前に見た写真のことを思い出し、“これは本当なのではないか”と感じるようになった。実際に陰謀論者の方と仕事をしたことはほとんどなかったが、関係する動画を見るようになると、真実や論拠を確認することなく、どんどん信じてしまうようになった。周りに伝えても信じてくれないだろうという思いはあったし、環境問題に取り組むジャーナリストの家族とは全く話が合わなかった。だから私が変な宗教に入ったのではないかと思っていたかもしれない。それでも、現実では言えないからということで、ネット上での仲間意識のようなものも生まれていったと感じている」。

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 新型コロナウイルスについても、“人口コントロールのために作られた”という説を信じていたという増山さん。しかし周囲に感染者が現れたことで、次第に自らの考えを疑うようになっていったという。

 「感染した友人・知人の話を聞くと、後遺症に苦しんだり、仕事に復帰する時に悩んだりしている。それなのにトランプ支持者たちがマスクをせずに集会をしているのを見て、許せなくなってきた。特に1月20日の就任式の日に、すでにアメリカでも45万人以上の方が亡くなられているという状況の中で、自らの政権がいかに立派だったかを語るトランプさんの姿を見て、私は何を信じていたのだろうと自問自答するようになった。それでもギリギリまで、トランプさんが緊急放送で全世界に何らかの新しいメッセージを発信するのではないかと期待をしてしまっていた。記事を書かせていただいたり、メディアで発信をさせていただく立場であるにも関わらず、自分に対する真実の追求をしなかった、その姿勢を改めなければいけないと強く感じている」。

■「アメリカでは極めて深刻な問題になっている」

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 2heyさんらの議論を受け、成蹊大学非常勤講師でジャーナリストの中岡望氏は「アメリカでは一方的な情報が入ってきやすい。SNSはもちろん、ローカルニュースやラジオのトーク番組にも非常に右翼的な人が出てくるので、それを毎日のように聞くうちに、事実を知ろうとする前に、感情で対応するようになる。そこに大統領が“あのメディアはフェイクだ”と言うので、ますます反対の意見を聞かなくなっていく」と話す。

 「Qアノンを信じる人たちにはミレニアル世代が多い。彼らはこの20年くらいのネオリベラリズムの経済政策によって犠牲を強いられてきたし、リーマンショックを経験し、インターネットネイティブでもある。また、元々保守派だった人が多く、反リベラル派、というベースがあるので、そこにトランプがオーバーラップしてきた。そして金持ちが悪いんだ、と論理が飛躍する。アメリカは伝統的に陰謀論が好きな国ではあるが、極めて深刻な問題になっている。今の状況に不満があるという点では日本の若者たちも同じだとは思うが、ここまで広がりを見せるとは思ってもみなかった」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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