中国の「海警法」に対抗するには…? “sengoku38”こと一色正春氏「日本は“口だけ”だ。誰かが尖閣諸島に住むという方法もある」
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 「明らかな主権侵害行為だ。中国海警局の船が軍事作戦に従事するという性格を明らかにした」。中国政府が施行した「海警法」について、自民党の大塚拓国防部会長はそう危機感を顕わにした。

・【映像】“sengoku38”こと元海上保安官の一色正春さんと考える、海警法と尖閣諸島のリアル

中国の「海警法」に対抗するには…? “sengoku38”こと一色正春氏「日本は“口だけ”だ。誰かが尖閣諸島に住むという方法もある」
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 中国側が定めた管轄海域において外国船が海警局の命令に従わなかった場合、武器の使用を認めるという海警法。日本側は施行直前の3日に行われた実務者協議で「国際法に違反する」と抗議しているが、海警局の船は今週に入ってからも尖閣諸島周辺の日本の領海に相次いで侵入している。

 9日の『ABEMA Prime』では、この問題について明海大学の小谷哲男教授(国際政治)と、2010年9月に尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突の映像をネット上に公開したことで知られる、“sengoku38”こと元海上保安官の一色正春氏に聞いた。

■「海警が軍の一部であることが明らかになった」

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 菅総理に招かれて意見を述べた慶応義塾大学の細谷雄一教授(国際政治)は「もし何か起きれば、今までとは違って軍事衝突に近い形になる。あるいは軍と連動してくる。緊張のレベルが明らかに1ランク上がったと考えた方がいいのではないか」と指摘している。

 小谷氏は「この問題を10年近く見続けてきたが、“ようやくできたのか”というのが正直な感想だ」と話す。

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 「法律の中身を見てみると、明らかに日本の海上保安庁法を参考にして作られている。海警という組織は2013年にできたが、実は今まで根拠法がない状態で存在してきた。だからこういう法律を作ること自体は全くおかしなことではない。アメリカやインドの沿岸警備隊(コーストガード)の場合は軍だし、インドネシアも海上警備は軍が担っている。だから国際的に見て海警局がやっていることはおかしいとは言えない。ただ、中国共産党の中央軍事委員会の下で行動するということとに関しては不気味さを感じざるを得ない。その点は今回の法律ができたことで、むしろ海警が軍の一部だということが明らかになったので、他国から見れば組織的な侵攻だと位置付けられる可能性は高まった。

 また、軍であれ海上警察であれ、武器の使用基準については“交戦規定”という内規が作られ、それに基づいて実行することになっている。これは自らの手の内を見せてしまうことになるため、どこの国でも基本的には表には出していない。ポイントは、今回の法律の施行後、海警内でこの交戦規定が変わったかどうかだ。組織図上、海警は軍である武警(人民武装警察部隊)の下にあり、さらに武警は習近平をトップとする軍事委員会の指導を受けることになっているので、交戦規定もそのラインで作られると考えた方が良い。これまでも海警は武器を使ってきたし、外国の船に体当たりをしたり、放水をしたりしてきた。それが今後どうなるのか、そこは見極めるしかない」。

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 さらに小谷氏は「国際法の観点から見て、明らかに逸脱している部分がある」と別の問題を指摘する。

 「他国の軍艦や海警の船のような政府公船については国連海洋法条約に基づく“主権の免除”という原則があり、たとえ日本の領海内に入ってきたとしても、平時においては日本の権限が及ばないことになっている。しかし中国は今回、領海だけではなく排他的経済水域、さらには大陸棚においても自分たちの権限が及ぶと主張している。話にならないほどの権限の拡大だ。中国が海上警備をするための組織を持つこと自体はおかしいことではないし、国際法上、むしろやらなければならない義務でもある。中国側はその点をもって“国際法に基づいている”と言っているのだろうが、“自分たちの海に関しては適用されませんよ”という考え方は問題だ」。

■「誰かが犠牲になってからでなければ反撃もできない」

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 こうした中国側の動きに対し、日本の海上警備力はどうなっているのだろうか。

 小谷氏は「尖閣問題は2012年に大きくなったが、南シナ海ではその少し前、フィリピンが島を取られてしまっている。これはフィリピンに日本の海上保安庁のようなしっかりした海上警備力が無かったからだ。ベトナムやマレーシアも同じような状況に追い込まれている。その意味では日本は海上保安庁がしっかりしているというのが他国に比べて有利な点だ」との見方を示す。

 一方、一色氏は「あれから10年が経つが、状況は決して良くはなっていってないと思う」と訴える。

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「1960年代に尖閣諸島の領有権を主張しはじめ、1992年には領海法で尖閣諸島をいわば“国有化”、そして2009年には海島保護法によって人民解放軍の任務に魚釣島警備を加えた。その間、日本はほぼ無反応だったと言っていい。今も国会やメディアは森さんの発言のことばかりをやっている。中国はそういう様子を見ながら、一歩一歩、侵略を進めてきた。言わば“敵ながらあっぱれ”だ。加えて、海警は質・量ともに向上してきていると思う。今回の法律によってすぐに何かが起きるとは思わないが、いわば安全装置がひとつ外れた状況だ。現場の人間にとってはかなりのプレッシャーになると思う。南シナ海では体当たり、武器の使用が行われているが、同じことが東シナ海で起こってもおかしくない」。

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 8日の国会で、岸防衛大臣は「海上保安庁で対応が困難となった場合には自衛隊が対応することになる」と説明。しかし実際に武器が使用された場合について、一色氏は悲観的な見方を示す。

 「現行法では日本側が武器を使えるのは、あくまでも“正当防衛”という形においてのみ。つまり、やられてからでしかやり返せない。もっと言えば、誰かが犠牲になってから、ということだ。これは自衛隊が出ていけば全て解決するというものでもない。なぜなら自衛隊においても海上警備行動、つまり法律上は警察だし、相手がどんなミサイルを持っていたとしても、正当防衛でしか反撃することはできない。また、交戦規定についても、日本はどういう場合には攻撃ができ、どういう場合には攻撃ができないんだという議論を国会でさんざんやってきた。だから“日本はここまでなら攻撃してこない”ということが他国に丸わかりだ。だから理論だけで言えば、はっきり言って我が国はものすごく不利な状況にある。こちらはサッカーの試合をしようとしているのに、相手の選手はボールをラグビーのように持って走っていく」。

■「今の日本は“口だけ”だ。確実に守る方法を」

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 8日の国会では、菅総理も「中国海警法についてはその運用により東シナ海や南シナ海などの海域において緊張を高めることは全く受け入れられない」と答弁している。そんな中、自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護る会」が、自衛隊と米軍による尖閣諸島周辺での定期的な共同演習の実施などを緊急要望している。

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 小谷氏は「そもそも中国が軍ではなく海警を出しているのは、いきなり軍を出してしまうと自衛隊、さらには米軍が出てくることを恐れているからだ。そうであれば、“これ以上やると…”と言い続けることで中国の尖閣進出を抑制する効果が期待できる。自民党内から出た提言も、そういう意図があってのことだと思う。ただ、同様のことはこれまでも言い続けてきたが、それでも海警が少しずつ出てきて尖閣における日本の主権を脅かしているのは間違いない。こちらがどこまでやるのか、向こうも探っているということだ。

 また、国際法というのは違反すれば警察が取り締る、裁判に持ち込まれる、そして罰を受ける、という国内法とは異なっており、誰かが取り締まったり罰を与えたりするものではない。それでも国際社会が国際法を重視するのは、二度の世界大戦を経験し、みんなが守るルールがなければ世界の平和と安定は守れない、ということを確認したからだ。“国際法は役に立たないから無視してもいい”などと誰かが言い出せば、再び昔の国際社会に戻ってしまう。国際法を破った国による被害を受けた国は必ず押し戻す、そして一緒になって押し戻してくれる仲間を作るという、地道な行動を続けるしかない」。

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 一色氏は「現実的には最大の抑止力になっているのは在日米軍の存在だと思う。だから合同演習を行うのも間違っていない。ただ、いつまでもアメリカに頼ったままでいるわけにはいかない。灯台を破壊してもいいというのが海警法だ。日本も相手の嫌がることをやらなければダメだ。例えば日本が竹島でやられていることを考えれば、尖閣諸島に誰かが上陸して住んでしまうという、日本独自で、なおかつ確実に守る方法もある。その意味では、今は“口だけ”だと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

“sengoku38”こと元海上保安官の一色正春さんと考える、海警法と尖閣諸島のリアル
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