9日、音声アプリ「Clubhouse(クラブハウス)」で専門家をゲストに迎え、勉強会を開催した平井デジタル改革担当大臣。Clubhouseとは「世界中の人が気軽に話し合える場所を提供する」をコンセプトに、相手とラジオのような会話を楽しんだり、会話を聞いたりすることができるアプリだ。招待制ながら、日本でも芸能人や著名人が続々と使用し始め、流行の兆しを見せている。

【映像】「画面が真っ白…」Clubhouseが中国で利用できない仕様に

 日本では、大臣までClubhouseを活用し始めたが、一方で隣の中国では、Clubhouseの利用が突然できなくなったと香港メディアなどが伝えている。

「Clubhouse」中国で利用不可の背景に3選狙う習近平主席への忖度? 数カ月以内に“中国版”誕生の可能性も
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(4枚)

 中国のSNSでClubhouseについて話し合うチャットルームを開くと、画面が真っ白に。すべて削除されている。Clubhouseのアプリのみならず、関連する話題もNGなのだろうか。

 中国でも今月に入って利用者が増えていたClubhouseに一体何があったのか。上海に住む日本人のみゆきさんは「2月8日の夜に突然ルームが全く表示されない状態になった」と明かす。

「私は1月29日から使い始めたのですが、そのころはモバイル・スマートフォンで特にVPNをつながなくても普通の状態で、お話ができていました。それが2月8日の夜に突然ルームが全く表示されない状態になって『ネットワークが繋がりません』みたいなメッセージが出てしまって、何度も試してみたんですけどダメで。繋がらなくなってしまいました」(上海在住・みゆきさん)

「Clubhouse」中国で利用不可の背景に3選狙う習近平主席への忖度? 数カ月以内に“中国版”誕生の可能性も
拡大する

 さらに規制のスピードについても「早かった」と話すみゆきさん。「確かにルームのタイトルを見ていると『台湾問題について語り合う』とか、ネット上では中国でタブー視されているトピックのルームが立っていた」といい、「音声チャットだからモニタリングが難しい部分もあるんでしょうけど、いつかは誰かが気付くんだろうなと思っていた。そういう意味では(規制は)早い対応だったのでは」と話した。

「Clubhouse」中国で利用不可の背景に3選狙う習近平主席への忖度? 数カ月以内に“中国版”誕生の可能性も
拡大する

 中国のClubhouseでは、新疆ウイグルや香港問題など、中国で自由な議論が許されないテーマも取り上げられていた。そうした内容が検閲対象になったのだろうか。

 中国外務省は、突然「クラブハウス」が利用できなくなったことについて「把握していない」と主張。ただ、その上で「中国のインターネットは開放的なものであり、中国政府は法に則ってインターネットを管理している」と述べ、「国家の主権や安全を守り外国勢力の干渉に反対する決意は揺らぐことはない」と続けた。

 また、今回の規制により中国版Twitterの微博(ウェイボー)、中国版Googleの百度(バイドゥ)のように「中国でオリジナルの音声アプリが立ち上がるのでは?」という声もある。海外のSNSが流行すると、そこに規制をかけると同時に中国で同じようなSNSが必ず生まれてきた中国。中国人民大学に留学経験もあるニューズウィーク日本版編集長・長岡義博氏は「新疆ウイグルやチベット問題は中国にとって最も敏感な問題。それをテーマにしているアプリを中国共産党が許すことはない」と指摘する。

「中国は毎回、ある意味仕事が速い。今回は逆に約1週間、よく規制されずに持ったと思うほどだ。中国外務省は『把握していない』と言っているが、インターネットを管理するのはまた別の部署。驚異になる情報を『グレート・ファイアウォール』(中国においてインターネットに存在している大規模情報検閲システムとその関連行政機関の通称)でシャットダウンしている。今回も同様だろう」(以下、長岡義博氏)

「Clubhouse」中国で利用不可の背景に3選狙う習近平主席への忖度? 数カ月以内に“中国版”誕生の可能性も
拡大する

 中国国内でも人気を集め始めていたClubhouse。長岡氏は規制の背景として、2022年の第20回党大会で習近平主席の3選を実現したい中国共産党の思惑があるのではないかと指摘する。

「今年は中国共産党が創設100年を迎える年。中国共産党は、1921年7月に誕生した。今年の夏に大きなイベントもあると予想される。さらに来年は第20回共産党大会が開かれる。トップである総書記は普通は2期で終わるが、習近平主席が3選するのではないかと見られている。3選すればおそらく、終身主席になる。そのためには政策的にプラスな実績を積んで、マイナスは極力抑えたい。習主席本人はそう思わなくても、周囲の人間が『Clubhouseのようなサービスを認めていると、中国共産党にとって批判的な言動が広がってマイナスになる』と考えて止めたのではないか。そうすれば、来年習主席が3選したときに自分が出世できるという思惑も働いたはずだ」

 また、今後について長岡氏も「早ければ数カ月以内に中国版Clubhouseが立ち上がるかもしれない」とコメント。「Twitter、Facebook、Googleそれぞれに既に中国版がある。中国版Clubhouseができれば、膨大なユーザーがいるのでビジネスは十分回っていく。少数民族問題などのきわどい発言があれば、すぐシャットダウンできる技術も中国は既に持っている。共産党にとって害のない中国版Clubhouseを開発するだろう」と語った。

ABEMAABEMAヒルズ

【映像】停止後は"中国版Clubhouse"登場!?
【映像】停止後は"中国版Clubhouse"登場!?
この記事の写真をみる(4枚)