ゴレイロ(GK)が自陣ゴール前でルーレットをすることなどあるだろうか──。
しかし、フットサル日本最高峰『Fリーグ』の舞台でそのまさかのプレーが現実のものとなった。バサジィ大分に所属するゴレイロの矢澤大夢が自陣で相手にプレスを仕掛けられるも、まさに闘牛士のような身のことなしで相手のプレスを剥がして味方へとボールを渡したのだ。
この一連のプレーに「ゴレイロがルーレット!?」と驚く人もいた。
とはいえ、プレーにぎこちなさはなく、あまりにもナチュラルなルーレットだった。
それもそのはず。矢澤はフットサルを始める前にプレーしていたサッカーではフィールドの選手としてFWからCBまで様々なポジションでプレーしていた。今回は、中学の間に磨き上げられた技術が発揮された場面でもあった。
ボールを受ける前の身体の向きが少し悪く、ボールを蹴りにくい体勢で相手に寄せられてしまいながらもプレスを回避する様に、解説を務めた元日本代表の北原亘氏も「矢澤うまかったですね!」と絶賛した。
サッカーと比べフットサルのコートはかなり狭いため、プレスをかいくぐるために、ゴレイロにも一定以上の足元の技術が必要とされている。
さらにFリーグには、相手陣内までドリブルでかけ上がり、ゴールないしはアシストをしてしまうゴレイロもいる。サッカーではほぼ見られないこういった光景も、コートの狭いフットサルならではの魅力と言えるだろう。
しかし本来の仕事をないがしろにしているわけではなく、ゴールを守るという最大の役割しっかりと果たしている。
この試合に関しても大分は17本のシュートを受けながら「シュートストップに自信を持っている」と公言する矢澤の好セーブが光り、失点を2に抑えた。
今シーズンのFリーグの試合も残りわずか。優勝は名古屋オーシャンズに決定したが、こういったサッカーでは見られないフットサル特有のプレーも魅力の一つだ。
文・舞野隼大(SAL編集部)
写真/高橋学