“SNSに群がる報道”からの卒業を 災害発生時のデマとメディアの役割
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 13日夜に発生した、福島県と宮城県で最大震度6強を観測した地震。ANNのまとめによると、15日夜現在、全国で合わせて156人がけがをし、福島県新地町で300戸、宮城県山元町でおよそ900世帯が一時断水した。

 そして近年、自然災害が起きる度に注目を集めるのがSNSだ。

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“SNSに群がる報道”からの卒業を 災害発生時のデマとメディアの役割

 福島市内の実家で被害を受けた俳優のなすびは一夜明けた14日、“不謹慎だ”との批判を受ける覚悟で笑顔の写真をTwitterに投稿した。「亡くなった方がいなかったこと、そして青空が綺麗だったということもあって。地震を辛い経験として自分の心の中に閉じ込めてしまっているかもしれないし、僕の笑顔で元気になってくれればいいなと思い、そこに賭けた。これで炎上してもしょうがない、謝るしかない」。

 なすびの懸念に反し、このツイートはネット上では好意的に受け止められた。

“SNSに群がる報道”からの卒業を 災害発生時のデマとメディアの役割

 テレビ朝日佐藤ちひろアナウンサーは14歳の時、福島県南相馬市の実家が東日本大震災で被災した。「周りに比べれば私にはそこまでの被害がなかったから、不満や恐怖を外に出すことができず、感情を内側に閉じ込めた。今回は東京にいたので10年前ほどの揺れではないが、それでも怖かった。SNSを見ると同じような声があったので、自分の感じた恐怖が“変じゃない”と気付くことが出来た。SNSがあって良かったと思った」と話す。

■多くの方は冷静だったのではないか

“SNSに群がる報道”からの卒業を 災害発生時のデマとメディアの役割

 他方、SNS上には「デマ」の存在も。今回も、この地震が自然災害ではなく人工的に引き起こされたものだという陰謀論をツイートしたユーザーがいたことから、Twitterでは「人工地震」が一時トレンド入り。さらに関東大震災の際に発生した朝鮮人虐殺事件を踏まえ、“外国人が井戸に毒を投げ入れている”との投稿も拡散した。

 タレントの池澤あやかは「人工地震や井戸の情報については、“そんなわけないじゃん”という意味のコメントを添えてリツイートしていた人も多かったと思う。ただ、そのことで結果的により多くのユーザーの目に触れてしまうことになるし、さらにトレンドに上がってしまえば、別の影響を与えてしまうことにもなる。“間違っている”“通報する”というコメントを添える、それ以上に黙ってTwitter社に通報した方が、デマの拡散防止のためにはいいのではないか」と話す。

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 東京大学大学院総合防災情報研究センター特任准教授の関谷直也氏は「やはり災害時は多くの人が不安を抱え、他者とコミュニケーションを図りたいと考えるので、そういう中で噂も広まっていく。人々の不安に耳を傾けることも大事だし、いわゆるフェイクニュース、嘘の情報の中には簡単に見分けがつかないものもある。一方で、デマにはある程度パターンがある。今回も見られた“人工地震”や“誰かが井戸に毒を投げ込んだ”といったパターン、あるいは“余震が来るかもしれない”とか、“外国人が窃盗を行っている”といったパターンの情報は、これまでの地震の際にも拡散が繰り返されてきた。こういう情報が広まりやすいのだ、ということを知っておけば、これは流言だと判断できると思うし、基本的には自ら拡散しないということが大切だ」と話す。

 「今回の地震では福島県内では家の中が大変になっている方々もいるが、現時点では家屋の全壊・半壊の報告もなく、東日本大震災や熊本地震と比べれば被害が少なかった。その意味では多くの方は冷静だったのではないか。確かに人工地震や井戸に関するひどいツイートが見られたものの、そこまで大規模には拡散してないのではないかとは思うし、福島第一原発に関するデマなどもなく、むしろ他愛のない情報が目立ってしまうくらいだった。逆に言えば、なすびさんの笑顔のメッセージが添えられたツイートが好意的に受け止められたのも、そのためだろう」。 

■“SNSに群がる報道”からの卒業を

“SNSに群がる報道”からの卒業を 災害発生時のデマとメディアの役割

 また、人々が悪意なく拡散してしまった情報が混乱を招く懸念もある。今回もTwitter上には「千葉県の工場が爆発している」という情報が写真付きで拡散したが、実際は安全対策のためのガスの燃焼による「フレアスタック」とみられている。また、フェイクニュースの中には過去に発生した災害現場の写真を引用しているものもあり、見極めが難しい。

 テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「熊本地震の際には“動物園からライオンが逃げた”というデマが拡散し、後に発信者は逮捕されたが、もし本当に逃げていのだとしたら、周辺にいる人は安易に外に出ないという判断をしなくてはいけない。本当だとしたら危険だと思った人が善意で情報を拡散させてしまう難しさがある」と話す。

“SNSに群がる報道”からの卒業を 災害発生時のデマとメディアの役割

 近くのスーパーでトイレットペーパーの在庫が無くなってきているというSNSの情報に接したというなすびは「しばらくは停電もしていたし、ラジオしか情報の頼りがなかったので、SNSもそこまで頻繁には見なかった。トイレットペーパーの情報を見たときには“本当かな”と思ったし、実際その現場を見にたわけではないので、確認できていない情報を発信するのは避けようとは考えた」と振り返る。

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 また、こうした場面での報道機関の役割について、ジャーナリストの堀潤氏は「今回は“まずい情報はみんなで通報しようと”、集合知でデマを打ち消す動きが早かったと思う。ただ、デマとは別に、古くなった情報、伝聞、伝聞の情報が拡散され続けてしまうという問題もある。あるいは情報発信で支援が必要であれば連絡が取れるよう、僕は災害発生時に自分のLINEのIDを開放ししている。SOSを聞いて駆けつけると、中には“友達から聞いた”“インスタで拾った”といったものもある。そういう情報の仕分けは、マスメディアが積極的にコミットしていく必要があると思う」と指摘する。

 「相変わらず、SNSに写真が投稿されると、各局の番組が群がる。これはそろそろ卒業した方がいいのではないか。そもそもSNSで注目される現場というのは、遅かれ早かれ情報が上がって発表されるようなものだし、火災であれば警察や消防が現場に入ることになる。それに対して報道が関わっていかないといけないのは、地元でもまだ共有されていない、警察や消防にも入っていない、しかしかろうじてスマホでSOSが取れた、といったものではないか。僕が取り組んでいるように、“何かあったら連絡をください”という関係をマスメディアが個人と作っておくことで、まだ誰も報じていない現場にタッチすることができる。そちらにシフトしていってほしい」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

災害時に広がるデマ情報...拡散する“3つの要因”
災害時に広がるデマ情報...拡散する“3つの要因”