出荷されずに廃棄される野菜を少しでも消費者のもとに届けるために…。農家と企業がタッグを組んで開発した、「もったいない」をなくすための新商品とは。
三浦大根で知られる神奈川県・三浦市。温暖な気候を生かした農業が盛んで、大根のほか、キャベツの一大産地となっている。甘みとふんわりとした食感のあるキャベツだが、コロナ禍で飲食店の需要が激減し、去年は価格が下落。三浦市でキャベツの栽培を行う、三浦市農協営農部長の出口剛さんは、「去年は(キャベツ価格が)結構安かったし、やっぱり(コロナで)消費が伸びなかった。経費倒れになって出せば出すほど赤字になってしまったし、せっかく良いものが出来ても売れなかった。(廃棄キャベツは)トラクターを入れたり畑の中にすき込んだりしてしまっている。やっぱり自分の作ったものは最後まで売りたいし、極力ロスは出したくない」と、苦悩をにじませた。
さらに、コロナの影響による需要の落ち込み以外にも、豊作が続くなどして価格が下がると、せっかく育てた野菜も廃棄せざるを得ない状況になるといい、多いときには収穫したうちの半分を廃棄に回すこともあるという。
そうした「もったいない」をなくすために開発された新商品は、大量廃棄の状況を知った食品メーカーの「生鮮品であるキャベツを加工食品にすればロスを減らせるのでは」というアイデアがきっかけ。実際に三浦市に赴き、キャベツ農家にも試食してもらうなど、何回も試作を重ねた。
石井食品の広報担当・松井真実子さんは「どうしても日持ちの問題があるので、加工食品にすることで日持ちの問題を長く使って頂けるように。商品開発を進めながら地域の皆様と地域活性化の取り組みをしたいと、三浦市と三浦市農協の協力で今回新発売という形になりました」と開発の裏側を明かした。
新商品の「神奈川三浦のキャベツを使った トマトソースハンバーグ ロールキャベツ風」は、三浦産のキャベツをふんだんに使用し、ソースの重さの半分がキャベツだという。農家の意見を取り入れ、三浦産キャベツのふんわりとした食感と甘さを生かした仕上がりになった。
実際、同商品の開発は出荷ロスに悩んでいた農家の助けになっているという。出口さんは、「それはありがたいことですよ。本当に。三浦キャベツのアピールにもなるので」と喜びを語った。一方、松井さんは「三浦市のキャベツ、生の状態のものの販売量を少しでも高めるという意味でも、私たちが商品にすることで販路に役立てたら。市の皆様にも凄く協力して頂いていますし、農協の方々も凄く協力的で、『一緒に発信していこう』『この取り組みを伝えていきたいね』と三者で頑張っているところです」と、取り組みについて思いを語った。
同商品は三浦市内のスーパーで1月に先行販売されると、1週間で2万食を出荷するなど大好評。初年度で6トンの予定だった材料となる三浦産キャベツの仕入れを15トンまで増やし、関東一円や関西の一部スーパー、インターネットでも購入できるようになった。実際に購入した消費者からは「キャベツのシャキシャキ感が生きていておいしい」「甘みがあって子供がおかわりしていた」などの声が届いている。
石井食品によると、最終的な出荷数は30万食を超える勢いだという。松井さんは「まだまだ伝統野菜だったり、なかなか知られていなかったり…。後継者問題があって今後種を残していけるのかとか、そういう野菜がたくさんあるので、少しでも地域活性だったり農家さんが喜んで頂けるような形にできれば」と、意気込みを語った。
(ABEMA/『ABEMA Morning』より)