新型コロナウイルスのワクチン先行接種が17日から始まった。河野ワクチン担当大臣は「3月1日の週に500箱、8日の週に500箱。ワクチンが順調に入ってくればという前提だが(全国に)この数量で配りたい」と述べている。
【映像】接種券が届いた後はどうすればいい? 新型コロナワクチン接種、7つの手順
安定供給できるのか、変異型ウイルスへの対応は可能なのかなど、さまざまな課題が懸念されているワクチン。“接種記録の管理”も課題の1つになっている。
「ワクチン接種の記録システム、ナショナルデータベースのシステムについては2月17日にシステム開発・運用に関する契約を締結した」(河野ワクチン担当大臣)
膨大な量になると予想されるデータを一括管理するためワクチン接種記録システムを導入した政府。4月から始まる高齢者への接種に備えるという。
新たな記録システムはどのようなものなのか。セキュリティ面に心配はないのだろうか。『ABEMA Prime』では、開発チームのキーマンとなる小林史明内閣府大臣補佐官に話を聞いた。
■医療従事者4万人への先行接種 副反応情報は「毎日出す」
内閣府大臣補佐官で自民党前青年局長の小林史明衆議院議員は「(これまでのところ)順調にスタートしたと見ている。今後、この4万人の副反応の情報は毎日出していただき、それを電子的に集計していく。もし何か重篤な副反応があればすぐ皆さんに公開して、原因が何であるかをちゃんと分析してお話をすることが、安心に繋がると考えている」と説明する。
ひろゆき氏は「どこの国も最初は『ワクチンは危険だ』となる。フランスも6割の人が『ワクチンは嫌』という空気感だったが、もう何万人も打ち始めて、『まぁいいや』とガンガン受けるようになっている。そういう意味では、そんなに気にする必要はないと思う。あとは、日本中の人たちにどのようにその記録システムを使ってもらうかどうかが気になる」と話す。
小林氏によると、新型コロナワクチンは、これまでのインフルエンザワクチンのような予防接種と大きく違うところが3つあるという。
「普段から厚生労働省と自治体の仕事の中で、多くのお子さんに予防接種を実施している。年に1回のインフルエンザワクチンも数千万人の方が受けている。そういう意味では、(国民が)予防接種やワクチンを受けられる態勢はある」
「ただ、今回新型コロナワクチンについては、大きく違うところが3つあると考えている。1つ目はやはり1億人近くの人が一定期間に2回接種をすること。ファイザー社製だと3週間経ってから打つ。『あんまり期間を空けても良くないのではないか』という話もあるから大変だが、一定のタイミングで打っていかないといけない」
「2つ目は副反応だ。先ほども重篤な副反応やアナフィラキシーの確率が出ていたが、実際に軽微な副反応もある。例えば1回ワクチンを打ったら、6割くらいの人はその場所に違和感を数日感じたり、ちょっとした肩こりのようなものを感じたりすることがある。2回目を打つと、今度は1割くらいと言われているが、一定の発熱も訴える人もいる。これだけ国民的な関心も高くて、軽微な副反応があったとすると、やはり自分の住んでいる地域の病院や自治体にすごい数の問い合わせが来てしまう可能性もある」
「3つ目は、すでに世界保健機関(WHO)で議論が始まっている接種履歴の問題だ。国をまたいだ移動をするとき、ちゃんとワクチン接種をした証明を相手側から求められる可能性が出てくる。以上の3つが、普段の予防接種やワクチン接種と実は大きく違うところだ。そこを考えると、これまでと同じやり方ではまずい。そこで河野大臣が任命され、私もまさにこの役割を担った」
ひろゆき氏は「考慮しないといけない点」として、日本に輸入されたファイザー社製の新型コロナワクチンの保存方法に着目。
「ファイザー社製のワクチンは、マイナス70℃の冷蔵庫で保存しないといけない。インフルエンザワクチンなどは日本中のクリニックへ送って『どうぞ打ってください』とできるが、今回はできない。クリニックに送ったとしてもマイナス70℃の冷蔵庫がなかったら、一瓶5人分を1週間以内に使い切らなければいけない。そこに人数を割り当てないといけない」
「また、今V-SYS(ワクチン接種円滑化システム)という仕組みを国が作っているが、本来ファイザー社は一瓶6人分で作っている。無駄なスペースが少ない注射器できちんと取ると6人分打てるので、今は5人分の注射器だが6人分打てるようになると、今度は今作っているシステムで1人分多くなるからシステムが対応できなくなる。一瓶あたり6人いけるなら、今出ている仕様書では想定できていないのではないか」
ひろゆき氏の話を聞いた小林氏は「まず、このファイザー社製ワクチンの取り扱いが難しいというのは、ひろゆきさんがおっしゃる通り」と同意。
「当初は集団接種会場と呼ばれる体育館やホールのような場所で、自治体がワクチンを用意して打つという流れを中心に考えられていた。途中からちゃんと安全に運べば小分け可能だとわかったので、福岡市のように大きなクリニックに小分けにして打つ準備を進める自治体も出てきた。身近な所で打てるようになるので、国民の皆さんにとっては選択肢が広がってくる」
“システム屋”として福岡市の嘱託の仕事をしているひろゆき氏。「公の情報だけで説明させていただくと、福岡市はワクチンを700のクリニックで受けられるように調整している。近所のかかりつけのお医者さんの方が、今までの接種履歴が把握できる。そうすると1つのクリニックに1瓶送ったとして、ワクチンを打てる人が4人しかいなかったら1人分が無駄になる。それが700個で起きるとしたら、週に4人分が700個で2800件無駄になり、月あたり約1万件が無駄になる」とコメント。その上で「でもそういう想定を今、国はしていない。今ですら(ワクチンが)足りない状況なのに、システム側が対応できればいいが、そのシステム側がちゃんとなっていないから、僕はヤバいのではないかと思っている」と懸念を示した。
小林氏は「まずV-SYS自体は物の分配がメイン」とシステムの役割に言及。「ワクチンがいくつ必要なのかを医療機関や自治体がV-SYSで入力していくと、そこに必要な数が分配されていく。1瓶5回か6回かという問題は、今のところ、途中で変えられるようになっていると説明を受けている」と明かす。
「ただ、V-SYSのシステム自体が(ワクチン供給よりも)先に作られたもの。途中から(使用している)状態なので、そこはしっかり確認をしたい。医療機関でロス等が発生しないのかどうかは、我々もチームで想定に入れている。だから1週間に1瓶打ち切らないといけないのに、1回分キャンセルが出てしまったら、どうやって埋めていくべきか、今検討を進めている。実際に、早ければ4月から始まる高齢者接種までに対応を考えていきたい」
「V-SYSは物流用。普段のワクチン接種と唯一違う差分というのを埋めているのはV-SYSだ。物の調達がとても大変なので、ここは国が用意する。ただし、接種会場やお医者さんの確保などは普段通り自治体の皆さんにお願いすることになっている。共通のルールを作るところは、よりもっと国が踏み出して対応を決めていく」
また河野大臣は、V-SYSに加えて、個人の接種状況がリアルタイムに把握できる新たなワクチン接種記録システムを作ると発表。小林氏は「今私が作っているワクチン接種記録システムはだれが、いつ、どこで、どのようなワクチンを打ったかがわかるもの」だとした上で、混乱を抑えるために自治体に任せるべき部分を整理していくという。
「例えば、ワクチンを接種するために、国民の皆さんには接種券が届く。この券を接種時に持っていく。当初、高齢者3600万人に接種券が一斉に送られる形になっていたが、これをやると何が起こるか。予約したいから、一斉に電話する。間違いなく自治体のコールセンターはパンクするし、クリニックに直接電話してもそんなに複数の回線引いていないから、電話が繋がらないことで混乱が起きる。だから、これはもう自治体に自由にさせてやってもらおうと、我々が着任して数日くらいで決めた。(接種対象者を)1歳ずつずらして、遅らせてもいいし、自治体に任せたほうがいい部分で任せていなかったものもあった。ここの整理をどんどんやっている」
「問い合わせに対応しきれなくなると、国民の皆さんに不安が広がって、ワクチン接種自体が止まる可能性がある。国としてしっかりやるべきことは、国民の皆さんに適切な情報提供ができる体制を作ること。それが成功の最低条件だろうと思う」
■「アベノマスク」「10万円給付金」配布問題の反省を教訓に
思い浮かぶのは昨年、新型コロナウイルス感染症の流行の影響によって発生した国内のマスク不足だ。この解消を目的に安倍前総理は、全世帯にガーゼ製の布マスク2枚の配布を実施したが、当初目標とした全戸配布に時間がかかったことは記憶に新しい。ワクチン接種券の配布に、この反省は生かされるのだろうか。小林氏は「まずは目的の共有が大切」だと述べる。
「マスク配布時の反省があるとすると、何のためにやるのか、まず前提が説明されないまま始まっていた。皆さんこれに違和感を持ったのだと思う。確かにみんなマスクをした方が感染を抑えられることは後からわかって一気に浸透した。それによりマスクの需給ギャップがすごく埋まり、値段がグッと下がったという効果が確かにあった」
「もう一つ、10万円給付でも反省する部分がある。10万円給付も自治体ごとにバラバラのシステムでそのままいった。そうすると自治体ごとに圧倒的に(配布のスピードに)差があったり、紙に印刷したものをとにかくチェックしなくてはいけなかったり、自治体にお願いしたまま、国が『10万円給付をやってください』というと、大混乱になる。だから、国が共通して用意しなくてはいけないものはちゃんと責任もって用意する。その上で自治体にやっていただく。今回、その反省は活かされていると思う」
小林氏によると、現時点の運用として、配布される接種券にはシールが4種類入っており、1回目・2回目それぞれの“打ちましたシール”、打ちに行ったが何かの理由があり“打たなかったシール”が2枚入っているという。右端に切り取り線がある“接種済み証”に、接種した会場で“ワクチン打ちましたシール”を貼ってもらって終わりだ。
小林氏の話を聞いたひろゆき氏は「接種券を自治体が作って配って、各会場や病院で予約をして登録をする、そちら側のシステムがない」と指摘。「各自治体がやるようになっているので、国が全体を見ることになっていないと思うが」と述べた。
小林氏は「その通り」と肯定した上で「1月20日に我々が就任した時点で、昨年から予約に関する部分は『全て自治体に独自でお願いする』という方針で進んでしまっていた」と回答。
「すでに自治体の方々が契約を始めて、構築が始まっていた。これを無理やり国で作りにいくこともできなくはないが、間違いなく自治体は混乱する。今回の接種記録システム自体も1月20日に就任して、間違いなく必要だと思ったが、今から作るべきかどうか。(新システムを作ると発表した河野大臣の決断は)正直しびれる判断だった」
いよいよ日本でも始まったワクチン接種。スムーズに国民が接種完了するには、接種体制やシステムをしっかり整える必要がある。
「システムがうまくいくことももちろん大事だが、それ以上にワクチン接種全体がうまくいき、とにかく国民の皆さんがワクチン接種を行い、この新型コロナの状況を早く抜け出すことが重要だ」
混乱を招くことなく、新型コロナに打ち勝っていくことを願いたい。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側