女子テニスの大坂なおみ選手が、全豪オープンで2019年以来2年ぶり2度目の優勝を果たした。20日に行われた同大会の決勝では、アメリカのジェニファー・ブレイディ選手と対決。見事ストレート勝ちを決め、世界ランク3位から2位へ浮上した。
【映像】ルイ・ヴィトンのワンピース(販売価格42万6800円)を着て微笑む大坂なおみ選手 ※1分ごろ~
明星大学准教授で臨床心理士の藤井靖氏は大坂選手の強さについて「心技体がばっちりそろった結果だ」と分析する。
「優勝後にコーチであるウィム・フィセッテ氏やフィジカルトレーナーが取材に応じていた。身近に見ている彼らが『(大坂選手に)心理的成長があった』と言っていた。大坂選手はこれまで、心の部分に課題があったと言われていた。今回は心技体がばっちりそろった結果なのだろう」(以下、藤井靖氏)
21日、豪・メルボルンで恒例の優勝記念撮影にのぞんだ際には笑顔を見せていた大坂選手。今年1月、ブランド・アンバサダーに就任したルイ・ヴィトンのワンピース(販売価格42万6800円)を着て東京オリンピックへの意気込みを語っていたが、今まですべてがうまくいっていたわけではなかった。
大坂選手は2019年1月の全豪オープンで4大大会連覇を成し遂げ、世界1位に。しかし、同年7月に行われたウィンブルドン選手権では1回戦で敗退。記者会見では涙が止まらず、途中退席した。同年のグランドスラム3連勝を目指した全仏オープンテニスでも、大事な場面で凡ミスを連発。反撃の機会をつかめず、無念の3回戦敗退を味わった。
翌2020年も全豪オープンでは3回戦敗退、女子テニスの国別対抗戦フェドカップ予選ラウンド(スペイン対日本)でもまさかの黒星を喫し、涙を流した。
「大坂選手ぐらいになると、練習で相当な努力を重ねていて、技術やフィジカルは超一流だ。その積み重ねをそのまま出せば、結果はついてくる。そういう意味では、大坂選手の心の成長によって、技術や体を邪魔しない状態になったのではないか」
「自分の心が、体や技術を邪魔しないようにするのは実は難しいこと。大坂選手のお話やエピソードを聞いていると、大坂選手にとって心を邪魔しない技術は、“思考停止の技術”なのではないかと思う。前日の食事だったり、入場のときに名前が書いてある壁に左手をタッチすしたり、試合中にコートのラインを踏まないことだったり、大坂選手にはルーティンがある。いつも通りのルーティンをやると『自分はこれでいいんだ』『成功することができる』という安心感が生まれて、余計なことを考えずに済む」
準決勝後のインタビューではギリシャ料理に関する“ゲン担ぎ”を明かし、会場を笑いで包んだ大坂選手。さらに藤井氏は大坂選手が持つ“言葉”にも注目する。
「強いサーブを決められたときも『It is what it is.(それは仕方ない)』と気持ちを切り替えて、それ以上考えないようにしているのだと思う。また試合前には自分の気持ちをチームで話をすると明かしていて、自分の中に留めておかずにきちんと内容を人に話すことによって、昇華して試合に向かっている。気持ちを言葉にして表すことは単純だが、心が体や技術を邪魔しないためには重要だ」
敗北の苦難を乗り越えた大坂選手だが、私たちが生活の中で応用できる技術として藤井氏は「ゲン担ぎのルーティンや自分だけに刺さる言葉を持っておくといい」と話す。
「本番前には、大坂選手が厳しいトレーニングをしているようにちゃんとやれるだけの準備をすることが大切。また、準備したことを100%発揮させるために、当日は余計なことを考えずに済む状態にする。人それぞれ効くものは違うが、自分だけに刺さる言葉などを持っておくといい」
加えて藤井氏は「プレッシャーがかかる場面で,我々は物事を評価したり判断したり反応したりすることで,感情が揺り動かされがち。よい意味で思考を停止することは実際にはなかなか難しいことだが,何かを“する”ことでそれができることがある。大坂選手のようなゲン担ぎのルーティンを重要な局面に取り入れるのもその一つの方法」とした。
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