20~59歳の6万人に対する調査の結果、国内に8.9%(約1100万人)の当事者がいると推定されているLGBTQ(電通ダイバーシティ・ラボ調べ)。“左利き”の人とほぼ同じ比率に相当することになるが、暮らしの中では様々な不利益を被る場面も少なくない。

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■「仕組みが変わることで安心する人がいる」

保険に入りづらい、賃貸契約の審査で落とされる…ゲイのシングルファザーと考える、“選択肢を認める社会”

 そんな中、当事者たちの生命保険の悩み相談に応じるのが、パートナー共済代表理事の小吹文紀氏だ。「保険に加入するときには、家族のことや体のことを明かさないといけない。その話を聞いてくれる人がどんな人かも分からない状態でスタートするのは不安があると思う」。

保険に入りづらい、賃貸契約の審査で落とされる…ゲイのシングルファザーと考える、“選択肢を認める社会”

 16年前に離婚、ゲイのシングルファザーとして当時4歳だった息子・文貴さんの子育てを始めた。「当時は“ひとり親”という言葉はなく、“母子家庭”、“父子家庭”だった。しかも父子家庭は非常に珍しかったので、そこはすごく意識した。子どもに対して1人の人間として向き合うこと。そうすることで、友達や私に対しても向き合うようになってくれる」。

 新宿2丁目も、小吹さんが20代の頃は今のように誰もが足を運ぶエリアではなかったという。そんな街にあるバーで小吹さんとともに取材に応じてくれた文貴さんは、現在20歳の大学生。「父から特別にカミングアウトされたということはなく、そうなのかなと思っただけ。俺の中ではカレーの好き嫌いの話をしているのと同じ感覚。カレーが嫌いだからといって、その人を差別することはないと思う。だけど、カレーが嫌いということについては配慮しないといけないはずだというか。僕にとってはそんな感じ」。

 文貴さんの話を受け、小吹さんは「わざわざ面と向かって“実はですね…”というのはなく、自然に親子でいるだけだった。男女の両親がいる方も、関係性やセクシャリティについて子どもにわざわざ話さないのと同じで、聞かれなかったし。でも、世の中にはこんなことがある、ということを彼なりに受け止め、そして理解ができなくても、“そうなんだ”ということで過ごしてきたんだと思う。今日は取材のためにわざわざその言葉を発しなければいけないかな?くらいのレベル。逆に文貴の言葉に勉強させられたが、カレーが好きかどうか、付き合ってみて始めて知るということだってあるはず。結婚してから知ることもあって、知ったから別れることもある」と笑顔を見せた。

保険に入りづらい、賃貸契約の審査で落とされる…ゲイのシングルファザーと考える、“選択肢を認める社会”

 また、これまでのことを振り返り、「苦労や悩みはいっぱいあったが、むしろLGBTということで悩んだことはあまりないし、それは別の次元の問題だった。今でこそゲイという言葉が一般的になったが、当時は自分について“ホモ”とか“オカマ”と言ったほうがわかりやすかった」と話す小吹さん。

 「私は豊島区のパートナーシップ制度に関わらせてもらったが、各地に広がってきていて、すでに76の自治体で導入されている。法的拘束力はないが、仕組みが変わることで安心する人がいるということが世の中に伝わることがとても大事なことだと思う。LGBTQだけの問題に限らず、どんな課題があり、そしてどんな選択ができるのか。解決するための仕組み人も排除しない。そんな世の中になっていくといいと思う」。

■「認める文化が広がってくれるといい」

保険に入りづらい、賃貸契約の審査で落とされる…ゲイのシングルファザーと考える、“選択肢を認める社会”

 一方、レズビアンやゲイのカップルの場合、賃貸物件の審査が通らない例もあるという。株式会社IRISでは、そうした問題に対して当事者たちによるサポートを提供している。

 代表取締役の須藤啓光さん自身も最近、審査落ちしてしまったという。「やはり管理会社や大家さんによっては、ゲイカップルなどが弾かれてしまう傾向があると思う。おそらく担当者の個人的な判断で落とされてしまったようだったので、担当者へ、知り合いの役員の方に事例紹介をさせて頂く旨を伝えたところ再審査になり通過した」。

 須藤さんのパートナーは、同性婚の訴訟で弁護団の一人だ。「パートナーシップ証明書の範囲は限定的だ。同性婚が実現すれば、不動産が買いやすくなったり、相続の問題も解決できるようになると思う。僕は子どもが欲しいなと思っているが、ゲイカップルにとっては非常にハードルが高い印象がある。代理母も難しいので、週末里親などを検討している段階だ。小吹さんが仰った通り、LGBTだけでなく、生きていく上で生きづらさを感じている方々はいっぱいいると思う。みんなが生きやすい社会、差別ではなく、認める文化が広がってくれるといいと思う」。

保険に入りづらい、賃貸契約の審査で落とされる…ゲイのシングルファザーと考える、“選択肢を認める社会”

 ふたりの話を受け、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「この社会には“マジョリティ幻想”みたいなものが未だに存在する」と指摘する。

 「たとえばサラリーマンの夫と専業主婦の妻、そして子ども2人の“標準家庭”というモデルが今もメディアで使われるが、今の本当の“標準家庭”は単身世帯だ。つまり、結婚している人がマジョリティというわけではないということ。賃貸の話についていえば、単身の高齢者が借りられないという問題があるが、あと2、30年すればそういう世帯が多数になってくる。そうなっても家を貸さないと言うのだろうか。

 結婚、子育てについても同様だ。恋愛をして幸せな結婚をして子どもを産み…という価値観があるが、それも本来は経済的なセーフティネットなど、社会的な意味合いの方が大きかった。恋愛や結婚をしていなくても家族は作れると思うし、子どもは親が育てなければならないというわけではない。好きにやればいいじゃん。ただそれだけだと思う」。

 その上で「選択的夫婦別姓を導入するという話と同じ構造があると思う。カレーの話に例えれば、カレーのことは見るのも嫌だという人も確かに存在する。しかしそれに対して“何を古くさいことを言っているのか!昭和の価値観だ!”と一方的な上から目線で言っても、何の解決にもならない。いかに分断を生まないように議論をしていくのか。それができないからこそ、解決にも至らないのではないか」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

ゲイの父親と20歳の息子が育む"新しい家族のカタチ"LGBTQと社会の理解
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