緊急事態宣言下での所属議員の夜の飲食、森発言に端を発する東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の騒動、さらに総務省幹部らが菅総理の長男が勤める東北新社の接待を受けていた問題など、秋までに控える衆院選で自民党への逆風となりそうなトピックが相次いでいる。
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その予兆は、すでに地方に現れている。大分市議選(21日投開票)では、立憲民主党、日本維新の会が議席を伸ばす中、最大会派の自民党は3人の現職候補が落選した。また、北九州市議選(先月31日投開票)でも現職候補6人が落選、議席数を22から16に減少している。
こうした状況について、自民党幹部は「やはり自民党に対しての厳しいご意見があるということは、我々は承知しておかなければならない」(森山国対委員長)、「全く影響ないとは申しませんが、衆議院議員は衆議院議員で、それぞれの地域で日夜懸命に努力しているわけだから。他の選挙区に直接すぐ何か影響があるということは考えにくい」(二階幹事長)とコメントしている。
■北九州市で二重の衝撃
25日の『ABEMA Prime』に出演した報道アナリストの新田哲史氏は「大分市は村山富市元総理の地元だし、北九州市は製鉄会社の労働組合の存在もあるので、野党が弱くはない地域だし、内閣支持率の低下を見てもわかるとおり、全国的に自民党政権への不満が溜まっているのは間違いない。与党系が苦しむ選挙というのは、もちろん自分たちのミスが原因である場合も多いが、経済情勢が厳しくなっていたり、自然災害、あるいは今回のコロナのようなことが起きたりすると、政治に対する関心が高まり、現職を見る目も厳しくなる。それでも2つの選挙区の投票率を見れば、組織力のある自民・公明の陣営にとって有利な状況であったはずだ。にもかかわらず、現職がこれだけ落選してしまう。異常事態だと見て間違いない」と話す。
「北九州市議選の選挙区の一つ、小倉北区が象徴的だ。落選した自民党の3候補はいずれも60代で当選回数が3回、4回。政治家としては一番脂が乗っている時期。そういう候補者が、というのが衝撃的だ。まず後援会などの組織を固めて、そこから逆風が吹いても離れないような票を積み上げていくわけだが、その部分が軒並み離れていってしまったということだろう。加えて、北九州のような政令市クラスの市議選で無所属の新人がトップ当選するというのも衝撃的だ。やはりコロナ禍で伝統的な選挙活動がやりづらくなる中、ネットを積極的に使っている候補者にはチャンスが出てきつつあるということだと思う」。
小倉北区でトップ当選を果たした新人の大石仁人氏はInstagramやYouTubeも活用したほか、GPSで選挙活動中の自身の位置情報を発信していた。
「トラディショナルな地方選挙というのは、“同じ小学校の出身”みたいな、学区域のようなところで地盤を固めていくが、大石氏のような方は薄く広く、選挙区全域から空中線で支持を集めていく。そのようにして他の候補が気づいたときには若い新人候補がトップに躍り出ていたというケースが、ここ5、6年あちこちでみられる現象だ。地方ではSNSをしっかり活用できる候補者は決して多くはない。大石氏も、子育て中の同世代の有権者などに刺さるよう、しっかり情報発信をされていた。ライトな自民支持層、あるいは支持政党なしの方々が“ちょっと自民党がだらしない。お灸をすえるか”“でもちょっと野党には…”と考えていたところにアピールできたのではないか。今は60代、70代でもスマホやタブレットを使えるようになっているので、コロナ禍で直接的な訴えができないとなると、ネットで日頃から地道に発信をしていた大石氏が目立ったのかもしれない」。
■小池都知事も虎視眈々?
7月に予定されている東京都議選の“前哨戦”ともいわらえる千代田区長選(先月31日投開票)でも、小池知事が支援した樋口高顕氏が自民・公明推薦の候補ら3人を破って初当選を果たしている。
新田氏は「樋口さんは国民民主党も推薦していたが、これは小池さんとも近しいと言われている玉木さんが、衆議院選に向けて都内での党の存在感を少しでも高めたいと考えたからではないか。小池さんも、去年の都知事選では街頭活動をしなかったのに、今回は自ら選挙カーに乗るという力の入れようだった。今回の千代田区長選を前哨戦として、ひとつ次に向けた布石を打てたということだろう。この先、“ホストシティの長としてオリンピックを成功させた”という実績を提げた小池さんが衆議院選のタイミングに何かを仕掛けてくる可能性はある」との見方を示す。
「菅さんもそれを見越して対策を打つとは思うが、選挙の時期が延びれば延びるだけ打ち手も限られてくる。当初は4月という解散のタイミングもあったと思うが、長野、北海道の補欠選挙でも自民党は厳しいと言われているし、第一コロナでそれどころではない。都議選とのダブル選という選択肢もあるが、伝統的に国政選挙以上に都議選、そしてリアルな選挙活動を重視してきた公明党としては、“同時並行”にはリスクが高すぎる。一方、小池さんは前回、予想よりも速く安倍さんに解散を打たれてしまったために、急ごしらえの組織で戦わざるを得ず失敗した。菅さんの人気が低下し、自民党内で“菅降ろし”のような流れが出てくるのを上手く捉え、例えば裏で繋がっているとも言われる二階さんの勢力とくっつく可能性もある」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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