「メディアは発表された数字をそのまま報道してきた。真剣にデータを収集し検証を」東京都の病床使用率の問題点を指摘したファクトチェック・イニシアティブ楊井人文氏
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 1都3県に出されている緊急事態宣言の期限が7日に迫る中、「病床が逼迫している状況、厳しい指標もギリギリの指標もある。国民の皆さんの命と暮らしを守るためにも、2週間程度の延長が必要ではないか。専門家、関係者の皆さんのご意見を伺った上で最終的に私自身が判断をしたい」と述べた菅総理。

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 ところが、その判断の根拠にもなる重要な指標が修正されていることが物議を醸している。厚生労働省が公表してきた東京都の重症者病床の使用率が、先月16日には約86%だったのが、翌週23日には約33%と大幅ダウンしたのだ。

 この問題について、大手メディアに先駆けて自身のnoteで報じたファクトチェック・イニシアティブの楊井人文事務局長は、「簡単に言えば、東京都が国に対して嘘をつき続けていたということだ」と話す。

「メディアは発表された数字をそのまま報道してきた。真剣にデータを収集し検証を」東京都の病床使用率の問題点を指摘したファクトチェック・イニシアティブ楊井人文氏

 楊井氏によると、東京都は「病床使用率」を算出する際の分母にあたる「病床確保数」について、「人工呼吸器またはECMOを装着している患者数」(図におけるB群)の合算値)という独自の「重症者」数をベースにしていた。しかし、「ICU等で管理している患者数」(図におけるA群)も合算しなければ、国の基準における「重症者」数にはならない。それが他の道府県との数字との食い違いを生んでしまっていたというのだ。

 「少なくとも昨年9月以降、重症者のベッド数は500床だと報告してきたが、そんなはずはないだろうと思った。だから国の基準で見た場合の重症者が500人を超えると病床使用率が100%を超えるなど、異常な数字が出るようになっていた。このことはメディアも気付いていたはずなのに、発表された数字をそのまま報道していた。そこで私が2月の中旬くらいに“さすがにおかしいでしょ、どうなってるんですか”と取材を進めると、厚労省の担当者が“東京都がきちんと報告してくれないので、おかしな数字だとは分かっていたけれど、そのまま出してきた”と明かした。先週になり、ようやく“1000床あった”と修正報告をしたために、使用率の数字がガクンと下がったという経緯だ」。

「メディアは発表された数字をそのまま報道してきた。真剣にデータを収集し検証を」東京都の病床使用率の問題点を指摘したファクトチェック・イニシアティブ楊井人文氏

 東京都の担当者は4日、『ABEMA Prime』の取材に対し「重症者の基準は医師などが参加する都のモニタリング会議で国よりも先に決めたもので、リアルな実態を反映していると考えている。都としても妥当なものと考えて報告してきたし、国はそれを妥当なものだろうと受け止めていた。ただ、重症者数については去年8月、都と国が別の基準を持っていると報じられたことを受け、国の基準で報告するよう変更した。そして重症病床数についても、2月中旬に厚労省から働きかけがあったため、国の基準で1件ずつ病院に確認し、数えなおした」と説明。

 その上で、「日々動く要素ということもあり、わかりやすい数字(1000件)に丸めて報告しているが、これよりも少ないということは無いし、医療従事者も十分確保した数なので、仮に1000人の重症者が出ても対応できる。実態は厚労省の発表でも注釈で補足していたが、資料上、急に1000床に増えたことで困惑させてしまったことは反省している」と話している。

「メディアは発表された数字をそのまま報道してきた。真剣にデータを収集し検証を」東京都の病床使用率の問題点を指摘したファクトチェック・イニシアティブ楊井人文氏

 曖昧な基準で算出された指標やその推移を元に重要な政治判断がなされてしまう現実。楊井氏は「原発事故の際に国会が独立検証委員会を設けたように、緊急事態宣言の解除後にも同様の委員会を設けるべきだった。そして菅首相も、それから小池知事も。ステージ3を目指す、ステージ3になれば解除する、ということを発出時に明言していた。しかしステージ3以下、ステージ2相当になっても延長をしようとしている。またゴールポストを動かすのか、という感じだ」と苦言を呈する。

 「都に関しては、実はこれが2回目だ。都は昨年4月末、3300床を確保していたにも関わらず2000床と虚偽報告をし、延長が決まった後でこっそり訂正の報告している。私はこの時もメディアに対して発表をしたが、スルーされてしまっていた。今回はメディアも目を覚ましてくれたのか、読売新聞をはじめ取り上げてくれるようになったが、やはり発表というものに頼りすぎだと思う。個々の病院の逼迫状況にフォーカスして、なぜ医療提供体制が偏るのか、といった問題について明らかにすることも重要だが、全体に関するデータ、基準がどうなっているかも重要だ。メディアも真剣にデータを収集し検証してもらいたいし、例えば菅総理の発言の“厳しい指標がある”が何の数字のことを指しているのか、しっかり質問すべきだと思う」。

「メディアは発表された数字をそのまま報道してきた。真剣にデータを収集し検証を」東京都の病床使用率の問題点を指摘したファクトチェック・イニシアティブ楊井人文氏

 現場で重症者の対応にあたってきた愛知医科大学病院循環器内科助教の後藤礼司医師は「先月16日頃は愛知県も病床が逼迫し、重症者や死亡者が多い状況にあった。ただ、実際にどれくらいの人が救命できなかったのか、病院へ辿り着くことができなかったのか、振り返って検証が全くされていない状況が続いている。基準をクリアしていても緊急事態宣言を延ばさなければいけないというような議論は、そういうところにも原因があると思う。ファクトと数字、さらに現場にいる人間しかわからない感覚、例えば5床あると言ってもマンパワーが不足していて対応できない、というケースもある。数字だけでは語れない部分もあるということも感じている」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

"緊急事態"再延長?東京の病床率に疑義も...国と都がバラバラ"重症者の定義"
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