東京都健康長寿医療センター研究所が発表した「SNSの利用状況と精神的な健康との関連」の研究結果が話題になっている。
「LINE利用者は心の健康状態が比較的良く、Twitterでつぶやく人は孤立感を感じやすい」
同研究所が調査をしたのはLINE、Facebook、Twitter、Instagramの4つのSNS。「発信」と「閲覧」でそれぞれ「週に数回以上利用する」と答えた人を「定期利用者」として、心の健康について質問。都内在住の18~97歳の計8576人から郵送で回答を得たデータだ。
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結果は全ての年代でLINEを頻繁に利用する人は、LINEをしない人に比べて精神的な満足感や幸福感といった心の健康状態が良いことがわかった。一方、Twitterを頻繁に利用する人は発信と閲覧両方の利用者に悩み・抑うつ傾向が強くなる関係が示されている。さらに、中年者及び高齢者でTwitterを定期発信している人は、孤立感を有している割合が高くなる傾向も認められている。
コロナ禍で対面交流が減る中、使うSNSによって精神面に大きな差がある――。ニュース番組「ABEMAヒルズ」は、今回の調査の研究員である桜井良太さんを取材。桜井さんは「もともと『高齢者の孤立状態が健康に悪い』ということが話題になっていた」という。
「孤立している高齢者ほど死亡率が高い、認知症の発症率が高いという背景があった。じゃあ、オンラインでの付き合いはどうなのか。オンラインでつながっていれば、いい影響が心や体にも出てくるのか。それを調べようと思ったのが最初の動機。全世代に枠を広げて、SNSと心の健康(の関係)を広く調べた」
実際に出た調査結果には桜井さん自身も「驚いている」と話す。
「LINEのような顔が見えるコミュニケーションを高頻度に行っている人は『心の健康度が高い』と、ある程度予想していた。一方、Twitterに関しては世間の予想通りのような結果が出るとは思っていなかったので、そこはびっくりした。『Twitterをやっている人ほど心の健康が悪い』という因果関係はなく、今回は一時点で横に区切ってみて、そういう関連性があっただけ。もちろんポジティブな情報発信をされている方はたくさんいて、平均的にみると今回の結果が出てきた。原因は、匿名性が高いSNSツールというところにあるのではないかと思う。どんな悪口を言っても個人が特定されない、そういった部分が表に出てきているのでは」
調査結果について、臨床心理士で明星大学心理学部・准教授の藤井靖氏は「SNSはつながりの範囲と使用用途によって、心に与える影響が違う」と話す。
「今回調査されているのはLINE、Facebook、Twitter、Instagram。主要なSNSの中でもつながりの範囲と使用の用途がそれぞれ違う。LINEであれば、身近な人とのやり取りが圧倒的に多く、使用の用途も日ごろの連絡や共有が多い。Facebookも実名の繋がり。それに対してTwitterやInstagramは、不特定多数の人とのかかわりがある。結果として心に与える影響も違ってくる」
その上で藤井氏は「SNSは利用時間とバランスが大事」とコメント。「利用時間が長いと、より心理的な影響も大きくなる。SNSと対人のコミュニケーションのバランスがアンバランスになってSNS中心になってしまうと、その世界だけで視野が狭くなってしまう」と警鐘を鳴らした。
「特に心が疲れた時にSNSついつい見ちゃうことは場合によってはあると思う。そういうときに特定のものにだけではなく、自分の心のよりどころ、依存先をできるだけ多く持っているほど、より(心の)不健康になりにくい」
健康な心を維持するためには、SNSと適度な距離を保つことが必要なのかもしれない。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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