ゲイであることを隠しながら生活する男子高校生とBL好きの女子同級生との恋愛を通じ、世間にはびこる“ふつう”という価値観とのギャップに向き合う男女の姿を描いた映画『彼女が好きなものは』が2021年秋に全国公開されることが決定、神尾楓珠が主演を演じることが分かった。

 原作は、小説家・浅原ナオトの「彼⼥が好きなものはホモであって僕ではない」(角川文庫刊) 。Web⼩説サイト「カクヨム」で話題作となり、2018年2⽉に書籍化され、2019年4⽉にはNHKで「腐⼥⼦、うっかりゲイに告る。」のタイトルでドラマ化もされ、⼤きな反響を呼んだ。

 ゲイであることを隠して⽇々を過ごす男⼦⾼校⽣・安藤純と、BL好きを隠しているクラスメイトの⼥⼦・三浦紗枝が、書店で鉢合わせたことから急接近。やがて紗枝から好きだと告⽩された純はある想いを秘め付き合うことに―。

 映画化にあたって原作者の浅原は「原作執筆時、『同性愛』ではなく『同性愛者』の話を書こうと……別に思っていませんでした。でも、結果的にそうなりました。普通になりたい願望と、普通になれない現実。『好きな相手が同性でもいいと思うよ』では片づかない複雑な内面を書いた物語は、多くの方の共感と好評を得て、映画化にまで至りました。その複雑さはこの映画にもしっかり残っていると思います。」とコメントし、映画として新たな息吹をもたらした本作の出来栄えに太鼓判を押している。

 主役の安藤純を演じるのは、「アンナチュラル」(18/TBS系)、「3年A組 今から皆さんは、人質です」(19/日テレ系)など話題のテレビドラマに出演し、2021年は、現在公開中の『樹海村』や、4月2日に公開を控える『裏アカ』などの映画出演も続く、今最も注目を集めている俳優、神尾楓珠。「異性を愛したい」「家庭を築きたい」と世間で“ふつう”と言われる幸福を手にしたいと願いながらも、自分らしさとの狭間で葛藤する純を繊細に演じている。

 本作が映画初主演となる神尾は「撮影時にはそのことにとらわれることなく、作品のことをただただ考える毎日でした。草野監督とは、作品に対しての共通認識を持つことが出来、現場ではお互いが委縮することなく、言いたいことを素直に言える環境を作ってくださったことに感謝しております。」とその心境と撮影当時を振りかえりながら、本作について「『自分らしさ』とは何か、『自分らしく生きること』とは何か。そういったことを考えるきっかけになってくれれば、嬉しく思います。」と意気込みを語っている。

 監督を務めるのは、『にがくてあまい』(16)や『世界でいちばん⻑い写真』(18)で、若者の瑞々しくも壊れやすい⼼模様を丁寧に描き出してきた草野翔吾監督。草野監督は本作について「私達がどこかで見ないふりをしていた本音の言葉に溢れた原作を映画化するにあたり、自分にできることがあるのだろうか、と真剣に悩みました。でも、同じかそれ以上に、純のことを、純を取り巻く環境を多くの人に知ってほしいと強く思いました。」と映画作りへの思いを語り、神尾についても「私が原作を読んだイメージそのままの純を繊細に表現してくれました。」と絶賛している。

『彼女が好きなものは』

監督・脚本:草野翔吾

原作:浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」(角川文庫刊)

主演:神尾楓珠

ストーリー

わかり合えない僕らは、それでも「ふつう」の幸せを手に入れたい―

 ⾼校⽣の安藤純は⾃分がゲイであることを誰にも告げずに⽣きていた。ある日、書店でクラスメイトの三浦紗枝が、男性同⼠の恋愛をテーマとした、いわゆるBLマンガを購⼊しているところに遭遇する。BL好きであることを秘密にしている紗枝は「誰にも⾔わないで欲しい」と純に⼝⽌めをするのだが、彼⼥はまだ知らなかった。⽬の前にいる純が、彼⼥の好きなゲイであることにー。

 純には妻⼦ある同性の恋⼈マコトがいるが、書店での遭遇をきっかけに、純と紗枝は急接近する。紗枝の友⼈達とダブルデートをしたり、クラスメイトたちと遊園地で遊んだりと仲を深めるうちに、純は紗枝から告⽩をされる。 「⾃分も“ふつう”に⼥性と付き合い、“ふつう”の人生を歩めるのではないか︖」。⼀縷の望みにかけるかのように、紗枝の告⽩を受け⼊れ、付き合うことになったのだが…。

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