8日は、女性の差別撤廃と地位向上を考えたり、そうした活動への勇気と決断を称える記念日「国際女性デー」。『ABEMAヒルズ』は、若者の立場からアクションを起こしている女性に話を聞いた。
「国際女性デーを祝うということにはずっと違和感があって。これだけジェンダー平等が実現されていない中で、祝えることってどういうことがあるのかなとは思う。もちろん私たちが今当たり前に感じられている権利を獲得してきてくれた上の世代の労力には感謝を示せるかなと思っている」
努力を重ねてきた上の世代に感謝しつつも、国際女性デーを祝うことには違和感があると訴えるのは、NO YOUTH NO JAPANの代表・能條桃子さん。「#わたしたちの生きたい社会をつくろう」をスローガンに、若者の声を社会に届ける活動を行っている。
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会・森前会長の女性蔑視発言が問題になった際は、再発防止策などを求める署名を募り、15万を超える賛同が集まった。
「私たち今6万人くらいフォロワーがいて、ほとんどが10代20代。発信していく中でかなりジェンダーに対する意識は高くて、『何解説してほしいですか』と聞くと、ジェンダー・LGBTQ・環境、この3つくらいが本当に大きなトピックとしてくる。やっぱりみんなそういうところを気にして見ているからこそ、それがちゃんと政治の世界にも伝わればいいなと」
世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で、日本は153カ国中121位と先進国の最低水準。中でも、女性議員の数が少ないことから政治の項目では144位と、非常に低くなっている。女性、そして若者の声を政治家に―。能條さんは政治に興味を持ってもらうための情報発信をする一方で、政治家に対しても働きかけているという。
「若手の議員さんはかなり意識が高い人が多いというのはやっていて感じる。国会議員はほとんど50代以上が占めているというのもあって、若返らせることは大事だけど、現実問題やっている人たちが変わるわけではないから、アップデートしてもらうために働きかけないといけないなと思う。若い世代の方がジェンダー意識は高い傾向にあるが、上の世代でも意識高い人もいれば学ぼうとしている人もいるのかなとは思う。ただ、世代の価値観、特に受けてきた教育やその権力を得るまでの過程の中で自分が経験してきたことを覆すのは難しいのかなと思う」
問題は世代間のギャップ。能條さんは、古い価値観や負の課題を次の世代に受け継がないことが大切だと訴えている。
「私たち20代は男性も女性もある程度、ジェンダー平等感覚というのは教育の段階から当たり前のようにあって、例えば“女子は男子より劣っている”と思っている女子もそんなにいないし、“男性が絶対働いて稼がなきゃいけない”と思っている人もそんなに多くないんじゃないか。20代が思っているのは、“自分たちの常識に早く社会がアップデートされたらいいな”というところかなと。それはジェンダーだけではなくて、例えば同性婚とかそういったイシュー(課題)にも関わると思うが、“それぞれが自分らしく生きられればいいだけなのにな”と思っているところはあると思う」
■ジェンダーギャップを埋める方法は「現状ない」中で目指す方向は
ジェンダーギャップの埋め方について、臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏にも話を聞いた。
「(世界経済フォーラムの)順位にも出ているように、日本には顕然としてジェンダーギャップはあると思う。能條さんが言うように、若い世代を中心に平等意識、差別や偏見をなくそうという気概みたいなものはどんどん広がってきていると思うが、残念ながら現状そういったものをなくす具体的な方法は見つかっていない」
現状について厳しい認識を示す藤井氏。性差別の中には2つの種類があると指摘する。
「よく言われることではあるが、敵意的性差別と好意的性差別。敵意的性差別は、森さんの『女性は話が長い』という発言のような、女性を敵視してネガティブな部分を指摘した性差別。これは明らかにみんながダメだと思うこと。もうひとつ平等の足かせになっているのが、好意的性差別。これは、女性の方が細やかだからそういう仕事は女性に任せた方がいいなど、あたかも女性を褒めつつ女性に合った仕事をしてもらおうといった話。これも結局ジェンダーロールを押し付けているだけで、逆に言えばそれ以外の仕事は男性がやるという発想とも受け取られる。好意的性差別の意識を強く持っている人は敵意的性差別意識も高いというという研究結果もあるので、女性と男性のそれぞれいい面を生かしていこうという話も、根本的には差別感情がなくならないことにつながっていくと思う」
では、具体的な解決策がない中でどのように進んでいけばいいのだろうか。
「政治家や管理職の男女比率を是正していこうという向きは、それはそれでいいと思うが、女性の比率を増やすにあたって男性を減らそうとすると必ず抵抗が起きる。結局のところ既存のシステムに対する安心感は男性にも女性にもある上に、社会の仕組みを変えるイメージや道筋を個人のレベルで現実感を持って考え続けるのはきわめて難しいので、なかなか実際には変わっていかない。そういう意味では、パイが100あるとしたら100以上に増やして、男性を減らさずに女性を増やして比率を変えるということを考えていかないと、心理的抵抗は乗り越えられないのではないか。平等を目指すための一時的な不平等、つまり女性の方にあえて有利的な地位を与えることができればいいと思うが、なかなかそれは難しい面もある。企業や組織には相応の負担や大きな決断が必要ではあるが、何らかの形で比率を変えて、その後に男女関係なく『何のために誰が必要か』を考えていく流れが大きな理想ではないか」
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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