プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」のドラフト会議が3月27日に放送される。前回大会「第3回AbemaTVトーナメント」でも、将棋界では例のなかったドラフト会議は大きな注目を集めたが、その中で周囲の予想がまるで当たらなかったのが、三浦弘行九段(47)の指名だった。本田奎五段(23)、高野智史五段(27)と、いずれも面識がない若手を指名。本戦まで勝ち進んだ。「チームみんなで頑張って勝ち上がることができました」と振り返る実力者が、今年のパートナーに選ぶのは誰か。
初めての団体戦に加え、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算というルールの中、若手の勢いと、自分の地力がうまく噛み合い、予選を見事に通過。本戦でも1回戦を突破しベスト4入りを果たした。「個人的にそれなりによくやった方で、チームメイトの2人が頑張ってくれた」と、充実感を得られた大会だった。会ったこともない2人を指名した理由は「好青年を選ぼうと。好青年の2人で気持ちよく団体戦を戦うことができました」と、棋力はもちろん人柄も考慮しての指名だっただけに、今でも「チーム戦が終わった後でも練習対局を継続して、研究会みたいな形で今でも交流は続いています」と、新たな絆は大切にしている。
若手2人が実力者たちに挑み、ぎりぎりの勝敗になったところでリーダー三浦九段に回ってくる。そして結果を出す。本田五段は実質的なデビュー年度でタイトル挑戦、高野五段は新人王獲得という有望株だが、土壇場になるほど力を出す先輩が、実に頼もしく見えたことだろう。「苦しい戦いはずっと続いたんですけど、いい形でバトンをつなげてくれたという思いはあります。もうちょっと本音を言えば、楽に行きたかったというのはあります(笑)」と、目尻も下がった。
初めて同士の3人で組んだチームで、ここまで結果と絆を築ける三浦九段だけに、2度目のドラフト会議が、俄然注目を集める。「あまり言うとヒントになっちゃうから細かく言えないんですけど…」と真面目な性格から、言葉を選び始めると「自分の気持ちが一番楽な方で選ぼうかなと思っています」と、いろいろな意味で取れるコメントを絞り出した。
気持ちが楽とはどういう意味か。同世代が楽なのか、年下が楽なのか。むしろ面識がない方が、気が楽なのか。「私が頭に思い描いているのは、漠然と2人。いろいろ人間関係もありますので。ただ、視聴者の方としては、競合とかで私の思惑が外れた方がおもしろい展開になるんじゃないですかね」と、もう一歩だけ踏み込んで話した。ただ、前回のドラフトでも大本命だった藤井聡太王位・棋聖(18)にわずか2人しか指名を入れなかったぐらい、棋士の考えることは読みにくい。視聴者にとっては、指名時にようやく意味がわかるレベルかもしれない。もし、この指名が当たるなら、その人は相当の“三浦九段通”だ。
◆第4回ABEMAトーナメント 前回までは「AbemaTVトーナメント」として開催。第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦になった。チームはドラフト会議により決定。リーダー棋士が2人ずつ順番に指名、重複した場合はくじ引きで決定する。第3回は12チームが参加し永瀬拓矢王座、藤井聡太王位・棋聖、増田康宏六段のチームが優勝、賞金1000万円を獲得した。第4回は全15チームが参加。14チームは前年同様にドラフトで決定。15チーム目はドラフトから漏れた棋士によるトーナメントを開催、上位3人がチームを結成する。対局のルールは持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チーム同士の対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負に変更された。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。