北海道は9日、道内に5か所ある道立病院の全診療科で、受診時の問診票から性別を問う項目を撤廃する方針を明らかにした。
「患者に性別マイノリティがいる前提で見直してほしい」と訴えていた渕上綾子議員。渕上議員自身もトランスジェンダーであり、今回の方針は渕上議員の質問への回答で示されたものだ。
今回の北海道の方針について、ネット上では「保険証やその他の手段で性別はわかるから書かなくても問題ない」「医師が個別に確認すればよいだけでは?」などの賛成意見が寄せられている。一方で、男女で体の構造が違うため「正しい診察と治療のためには、性別情報は必要なのではないか」という指摘も相次いでいる。
問診票に性別を記載しなかった場合、どのような問題が起きるのだろうか。ニュース番組「ABEMAヒルズ」では、道立病院局に話を聞いた。
「もともと泌尿器科に性別欄がありました。大学から派遣されている先生(医師)もいるので、大学で使っている問診票を確認しました。結果、派遣元の大学でも問診票に男女の性別欄がありませんでした。我々もそれをならって今回改めることになりました」(以下、道立病院局・経営改革課 中島茂紀課長補佐)
また、デメリットの部分については、万が一、当日の事故などで保険証を持っていない患者が来た場合は「何らかの手段で性別を確認しなければならない事態が生じるかもしれない」と話す。
「普通に保険証を持って窓口に来られた方は、本人に申し出をいただかなくても保険証で確認する方法もあります。先生の(問診の)段階では、カルテを見れば性別が書かれているので、特に問診票という手段を用いて確認しなくても、支障はないかなと思っています」
■トランスジェンダー・サリー楓氏「この性別欄は何に使うの?」日常の疑問
このニュースに企業の新規事業やイノベーションのコンサルタントを務めている建築家のサリー楓氏は「道立病院が発表した内容に『診察上の必要性に十分に踏まえつつ』の記述があるように、泌尿器科や産婦人科などの病気がある場合は、 しっかり性別を把握することも大切」と話す。
「医療情報として(性別情報を)取得することと、 性的マイノリティーに配慮することが、 必ずしも対立するわけではない。保険証で性別の確認が取れるときは問診票に性別欄を記載しないなどの配慮が必要になる。医療体験の向上につながるのではないか」(以下、サリー楓氏)
サリー楓氏自身もトランスジェンダーの一人だ。過去にはドキュメンタリー映画『息子のままで、女子になる』に出演し、男性として生まれた葛藤、就職を前に女性として生きていく決意が紹介された。
「美容院に行って、(記入票に)性別欄があったとき、今の顔に似合うヘアスタイルを求めて来店したのに『この性別欄は何に使うの?』と思った。海外では、ミスターやミス・ミセスなどの呼び方で性別がわかってしまうので、それらを用いずに名前を呼ぶことで配慮している事例もある」
また「『戸籍は女性に変えたが、体の構造は部分的に男性』『もともとは女性として出生し男性として生活をしている方が生理中である』などの場合も踏まえて、まずは適切な医療を届けることが大事だ。」とした上で「戸籍上の男女を把握して分類することに重きを置くのではなく、多様なジェンダーを適切に把握していくことが必要。そういった情報をどのように取得していくのか、考えていく必要がある」とコメント。
一部の病院から消えつつあるものの、まだ問診票に男女欄を設けている病院は多い。性別に関する何気ない一言で、相手を傷つけないためにはどのようにすればいいのか。社会全体で性的マイノリティに対する配慮や対応が求められている。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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