大抜擢のデビュー戦で、打撃も寝技も巧い女子ファイターがニンジャチョークで見事な1本勝ち。公式SNSが「ショッキング・サブミッション!」と驚きを持ってこの勝利を伝える一方、謎の大失速に解説陣が「拳が折れたか?」「折れた手で締めた」など、異なる視点でザワつく一幕があった。
3月19日に配信されたONE Championship「FISTS OF FURY III」女子ストロー級においてマイラ・マザール(ブラジル)とジェネリン・オルシム(フィリピン)が対戦。この日がONEデビュー戦、実績のないオルシムが上位ランカーを相手に躍動。試合中盤、負傷を思わせるアクシデントも最後はニンジャチョークで見事な1本勝ちを収めた。
フライ級からストロー級に転向してきたランキング5位のマザールと、この日ONE本戦デビューとなったオルシムの対戦。過去MMA7勝のマザールに対して、実績では明らかな差があるオルシムだが、オルシムはフィリピンが誇る格闘集団“チーム・ラカイ”に所属している。
試合は序盤から予想を裏切るようにオルシムが躍動。脇腹への蹴り、フロントからのニンジャチョークなどで締め上げると、さらにヒザを叩き込んでマザールをニアフィニッシュまで持ち込む展開。
ここを凌いだマザールはスタンドで散打仕込みの打撃で応戦。オルシムとの乱打戦に持ち込むが、至近距離でコンパクトに右を当てたオルシムの返り討ちにあいダウン。ムエタイで金メダルを獲った実績のあるオルシムが打撃でも強さを見せる。
2ラウンド、両者譲らないスタンドでの打撃戦。距離を縮めてオルシムがワンツーを放つと、マザールも相手の蹴り際に右ストレートを打ちこんで反撃。そんななか、ここまで好調だったオルシムに異変が。ラウンド中盤から突如として、手が出なくなった。
あまりにも唐突なオルシムの失速にABEMAで実況を務めた西達彦アナウンサーが「ちょっと手をかばってますか?」と問いかけると、解説の大沢ケンジも「右打たないですね、折れてるのかも…」と回答。明らかに前蹴りで相手を突き放すような行動を見た若松佑弥も「確かに右手が痛そうですね」と応じた。
そんな様子に視聴者も「急に止まってしまったな…」「拳じゃなくて肩を痛めたのかも」「右の人差し指をかばってるように見えた」「空振りの右フックのあとからおかしくなった」など、次々とオルシムの異変を指摘する声が上がる。スロー映像で序盤の打撃戦を観た大沢もオルシムのなんらかの負傷を確信したように「こんなに元気に右打ってた選手が全然右打たなくなりましたからね…」と続けた。
マザール有利に傾きつつある最終3ラウンド。ゴングとともにワンツーを放って前に出たマザールに対し、オルシムは1ラウンドでみせたニンジャチョークへ。1ラウンドでは極めきれなかったものの、今回はガッチリと首を極めてマザールからタップを奪った。
鮮やかなオルシムの1本に若松が「一瞬で決まりましたね。折れた手で締めましたね」と話すと、西アナは「本当にそうなのかは判りませんが…」と断定を避けたが、若松は「絶対に折れてますよ」と即答。じつは若松も2年前のONEで同じ右拳を試合中に骨折しており、自身の過去の経験から何かを感じ取ったようだった。
前回の試合では、3日前にエントリーされた選手に屈辱的な1分完敗。その後のチャンスを失っていたオルシムだが、今回ランカー相手に演じたアップセットについて公式SNSでは「ショッキング・サブミッション!」と驚きをもって伝えており、地元フィリピンでは一躍時の人に。試合後には早くも「ラカイ初の女子王者へ!」など期待の声が上がっている。
(C)ONE Championship