格闘技の試合はトップ争い、タイトル争いだけでなく“生き残り”をかけた闘いという面もある。これ以上は負けられない。そういう状況での闘いだ。
3月20日の修斗・後楽園ホール大会では、魚井フルスイングvs後藤丈治が“生き残りマッチ”と言ってよかった。
リングネーム通りの豪快なパンチでインパクト絶大なKOを量産、RIZINにも参戦した魚井だが現在は連敗中。対する後藤は修斗に参戦したところで連勝がストップしていた。
勝負のポイントは、やはり魚井の“フルスイング”だ。昨年11月、立ち技格闘技イベントRISEに参戦した魚井は敗れたものの、その拳で相手を負傷させている。一発もらったらそこで終わるかもしれない。そんな緊張感のある選手だ。
この試合でも、魚井は序盤から距離を詰めてパンチ。蹴り脚を取っての一撃も怖い。しかし後藤も臆せず圧力をかけ、パンチでバランスを崩させる。ローキックも効果的に決まった。
魚井は金網を背負いながら“逆転ホームラン”を狙う。しかし狙いすぎると当たらないのが格闘技の打撃だ。テンポよくジャブを繰り出す後藤が試合のペースを握り、3ラウンドが終了。魚井としては本領発揮とは言えない一戦だった。後藤がそうさせなかったのだ。
ただ魚井がパンチを出すたびに、会場にはスリリングな雰囲気が充満した。後藤ペースの中で、最後まで緊張感は途切れなかった。判定3-0で勝った後藤も、試合後にこう語っている。
「一発もらわないようにするのが大変で、かなり神経使いました。絶対チャンピオンになります」
ベルトに向かって前進した後藤と後退した魚井。コントラストがハッキリと出る試合でもあった。その厳しさもまた格闘技だ。
文／橋本宗洋
