石井杏奈、女優として生きる覚悟「自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから」

 『MONDAY』『DRIVE』など意欲的な作品を数多生み出してきたSABU監督が、「自信しかない作品」と満を持して世に放つ最新作は、竹宮ゆゆこによる小説を実写映画化した『砕け散るところを見せてあげる』。高校生の男女による、常識を覆す衝撃の愛の物語となった本作、W主演を中川大志石井杏奈が務め、未知の顔を見せた。

 平凡な⽇々を送る濱⽥清澄(中川大志)はある⽇、学年⼀の嫌われ者と呼ばれる孤独な少⼥・蔵本玻璃(石井杏奈)に出会う。玻璃は救いの⼿を差し伸べてくれる清澄に徐々に⼼を開くようになるが、彼⼥には誰にも⾔えない秘密があった。その秘密に気づき始めた清澄に“恐るべき危険”が迫り、友⼈の⽥丸(井之脇海)や尾崎姉妹(松井愛莉清原果耶)も⼼配するなか、物語は予測できない衝撃の展開を⾒せていく。

 劇中、石井は、壮絶ないじめに遭い傷を負いながらも、清澄と出会うことで救われていく玻璃を体当たりで熱演。「もう自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから、玻璃に全力を注ぎたいと思った」と振り返る石井に、作品愛から女優としての現在地まで語ってもらった。

「この子のヒーローになりたい」と思ったヒロインで、生きた芝居を経験

石井杏奈、女優として生きる覚悟「自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから」

――玻璃を石井さんが演じることで、新たなヒロイン像が生まれた印象を受けました。作品を引き受けるにあたり、どこに魅力を感じていたんですか?

石井: 原作を読ませていただいたときに、ジャンルが絞られていなかったので、いつまでもワクワク感や高揚感が続いて、ページをめくる手が止まらなかったです。読み終わって、小説で描かれている蔵本玻璃という人間が、とても好きだなと思えました。言動や行動に共感して、肯定して、応援したい気持ちが芽生えました。自分自身が玻璃を演じることによって、玻璃を助けてあげたいな、という思いになっていました。

――応援したいような気持ちとは、特にどのあたりで思われたんでしょう?

石井: 玻璃はいじめられていますが、根は本当にまっすぐで、ピュアで、普通の女の子です。清澄によって本当の姿が見えたときに、とてもかわいい笑顔で笑ったり、相手を思う気持ちを一番大切にしていたので、「こんなにまっすぐで人間らしい女の子が、独りで戦うなんてー!」と、思って。愛をすごく感じて、清澄の気持ちがわかりましたし、「この子のヒーローになりたい」という風に私も思いました。

石井杏奈、女優として生きる覚悟「自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから」

――玻璃が清澄に会って変わっていく様子が、劇中、真摯に伝わります。

石井: ありがとうございます。実は、自由に演じさせていただきました。最初、自分が思ったようにやってみて、SABU監督に「“こうしてほしい”と言われるのかな…?」と思っていたのですが、「それでいこう」と監督も言ってくださって。現場での空気感、大志くんが演じる清澄の出方で、自分を変えていきたいな、全力で受けとめたいな、と思っていました。なので、台本を最初に読んだときに感じた流れのまま、演じさせていただきました。演じたというよりも、生きた感覚が私にはありました。

――清澄と玻璃は、お互いにだんだん惹かれていくわけですが、玻璃は清澄のどういう部分に惹かれたと考えますか?

石井: 映画を観て思ったのは、清澄は愛に溢れている人なんです。誰かを愛すということは、1回自分を愛さないとできないことですし、自分を犠牲にしてまで誰かに尽くすことは、勇気や体力がいるのであまりできないけど、清澄は実践していて。彼の心の中には、本当に大きな愛の引き出しがあるんだな、と思っていました。その愛を最初に感じたときに、玻璃は「この人についていきたいな」と思えたのかもしれないです。

腹をくくることが多かった人生、「どう思われてもいい、と思ってやることは多い」

石井杏奈、女優として生きる覚悟「自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから」

――玻璃をやる上では、石井さん自身、体裁を気にしていられなかったかもしれません。自分のすべてをさらけ出すような覚悟も持って、作品には臨んだんですか?

石井: 覚悟はありました。小説を読んだときから…お話をいただいて玻璃役が決まった瞬間から、もう自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから、玻璃に全力を注ぎたいと思いました。例えば、叫ぶシーンとかも、本当だったら次の日の喉のケアの心配をしなければならないと思うのですが、そういう心配が自分の邪念になるぐらいだったら、まっすぐに今日だけを見て生きたいと思えたくらい、この作品にかける覚悟みたいなものは、ありました。

――ある種、腹をくくるみたいなことは、作品や女優業特有のものなのか、これまでも、腹をくくってきたことも?

石井: 多いです!このお仕事を始めたときから、くくらないとって、思っていました。私は、自分に嘘をつきながらはできないから。自分を1回忘れてやらないといけないとなると、恥ずかしさや照れ、緊張などが邪魔してきます。「もうどう思われてもいい、どうなってもいい」と思って、やることは多いです。

――暴力を受けるようなシーンでは、かなり痛々しいメイクも施されていますよね。ああした特殊メイクをすると、気持ちの乗り方も違いますか?

石井: 違います!メイクや容姿から変えていただくと、とても気持ちが変わります。でも、鏡を逐一見ているわけではないので、途中から自分が特殊メイクしていることを忘れてしまっていて、合間にふらっとコンビニに行こうとすると、マネージャーさんに止められたりしました(笑)。自分の顔、ボコボコだと思っていなくて、忘れちゃうんですよね(笑)。

石井杏奈、女優として生きる覚悟「自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから」

――ちなみに、石井さん自身、高校生時代はどんな感じだったんですか?

石井: そんなにこう…陽気ではなくて(笑)。休み時間も、自分から友達に話しかけにいくというよりも、本を読んでいたり、ずっと校庭を見ていたり…していました(笑)。ひとりで、ふわーっと過ごす時間が好きでした。

――何となく、イメージがつきます。「高校生=恋バナ」とか、そっち寄りではなかったんですね。

石井: するときはありました!みんなが盛り上がっていたりすると、一緒に話したりして。でも、私は当時からお仕事をしていたので、そのときに出ていたドラマの準備とか、…例えばクラリネットを吹く練習とかをしなければならないとかがあって。なので、あまり友達と遊ぶ時間に費やしてこなかったので、少し戻れたらな~と、思います。

――戻れるなら何をしたいですか?

石井: 学校に行って、部活をやって、家に帰るなど、普通なことをしたいです!

自分のことを嫌いにならないように、いつまでも好きで居続けられるように

石井杏奈、女優として生きる覚悟「自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから」

――SABU監督は石井さんの作り出した玻璃をそのまま解放したようですが、ほかに、SABU監督からの演出で印象に残っていることはありましたか?

石井: 一番印象的だったのは、撮影が始まって少ししたときに、「このシーンを増やしたいんだよね」と言われて見せられたシーンがありました。それが、一番最後のシーンなんですけど。

――最後のところなので、記事では詳細を伏せますね。お話できる範囲で伺いたいのですが、あるとないで、印象が変わる重要なシーンだと思います。

石井: そうなんです。あのシーンを追加で撮影と教えてくださったとき、私は本当に嬉しくて!私たちが生きた青春を、もう一度よみがえらせてくれるというか…そういう気持ちにさせてくれるというのが、本当に嬉しかったです。でき上がった流れを観ても、本当に素敵だったので、嬉しくて、涙が出そうなぐらい。SABUさんの思いがそこに込められたのかな、と思いました。

石井杏奈、女優として生きる覚悟「自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから」

――素敵なシーンで言えば、真っ赤な嵐(北村匠海)とその母親(原田知世)のシーンも印象に残りました。石井さんはいらっしゃらないシーンではありますが。

石井: 本当に!冒頭、原田さんと北村さんのシーンが流れるじゃないですか。その段階で、「わー!この映画めちゃくちゃ好きだろうな」と私自身が思えたくらい、本当に素敵で。原田さんと北村さんの醸し出すオーラや空気感が、この映画にすごくマッチしていました。

自分は出ていませんが、大志くんと一緒におふたりのシーンを見学に行きました。現場では、やわらかい日常がしっかりと動いていて、とても素敵だなぁと。おふたりと同じスクリーンに出られるのが嬉しかったですし、完成した作品を観ても、あの場面があるから映画がまとまっていると思いました。あのシーンがあるから「愛は素敵なんだよ、愛ってずっと持っていたら終わらないんだよ」と伝わる気がして。この作品を経て、よりおふたりのことも好きになりました。

――気になって現場に見学に行かれるなんて、よほどですよね。本当にいい作品だったんですね。

石井: あの日は、朝から晩までおふたりのシーンがあり、あとは私と大志くんの、シーンが少しあったんです。朝から見学に行って、夜も深い時間まで、ずっと大志くんとふたりでモニターの前でじっと見ていました(笑)。そういうことって、なかなかないじゃないですか。疲れたらやっぱり眠たくなってホテルに戻ったり、自分のシーンが終わったら帰ることが比較的多いと思うのですが、「ここにいたいなあ」と思って。それは大志くんも同じだったので、一緒にいました。そういう空気感すらも素敵だなと思いましたし、自分がこうやって思えるのはすごい現場だな、と感じていました。

――『砕け散るところを見せてあげる』に出演したことが、女優としてまたひとつ邁進するきっかけになったような、そんな気持ちもありますか?

石井: そうですね。今回の作品では、自分が「演じる」より「生きれた」と思えたことが、一番の人生の財産でした。こういう気持ちになれるように、自分を持っていくことが自分の今の課題でもありますし、常に新しい役を、自分の全精力を使って生きるようにしていきたいです。そうすると、自分が『砕け散るところを見せてあげる』という作品が大好きになったように、きっとこれからも、こういう大好きな作品がさらに増えていくと思うので。自分のことを嫌いにならないように、いつまでも好きで居続けられるように、全力で向き合っていきたいなと、この作品を経て改めて思いました。

石井杏奈、女優として生きる覚悟「自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから」
石井杏奈、女優として生きる覚悟「自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから」

取材・文:赤山恭子

写真:You Ishii

映画 『砕け散るところを見せてあげる』

石井杏奈、女優として生きる覚悟「自分なんてどうでもいい、身体がどうなってもいいから」

【ストーリー】

 平凡な日々を送る濱田清澄はある日、学年一の嫌われ者と呼ばれる孤独な少女・蔵本玻璃に出会う。玻璃は救いの手を差し伸べてくれる清澄に徐々に心を開くようになるが、彼女には誰にも言えない秘密があった…。その秘密に気づき始めた清澄に<恐るべき危険>が迫り、友人の田丸や尾崎姉妹も心配する中、物語は予測できない衝撃の展開を見せていく。この物語は、ラブストーリーなのか、サスペンスなのか…。ラストは、世代を超えた壮大な愛に包まれる。

出演:中川大志 石井杏奈

井之脇海 清原果耶 松井愛莉 / 北村匠海 矢田亜希子 木野花 / 原田知世 / 堤真一

監督:SABU

原作:竹宮ゆゆこ『砕け散るところを見せてあげる』(新潮文庫nex)

主題歌 :琉衣「Day dream ~白昼夢~」(LDH Records)

4月9日(金)新宿ピカデリー、イオンシネマ他にて全国公開

©2020 映画「砕け散るところを見せてあげる」製作委員会

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