去年11月から12月に行われた内閣府の「男女間における暴力に関する調査」。内閣府は、これまでに結婚したことのある男女2591人に、「身体的暴行」「心理的攻撃」「経済的圧迫」「性的強要」について配偶者からいずれかの被害を受けたことがあるかを調査した。
回答した1400人の女性のうち、被害経験が「あった」と答えた人は25.9%にのぼり、4分の1以上を占めた。男性は1191人のうち、18.4%が「あった」と回答している。また、被害があったと答えた男女のうち、「身体的暴行と心理的攻撃」の両方の被害にあっている人が女性では13.5%、男性では19.2%となった。そして、命の危険を感じたことが「ある」と答えた人は女性が18.2%、男性が5%だった。
こうした行為について誰かに打ち明けたり相談したと答えたのは、女性が45.4%、男性が31.5%で、半数以上は誰にも相談していなかったことがわかった。相談しなかった理由については「相談するほどのことではないと思ったから」が47.8%で最も多く、2番目は「自分にも悪いところがあると思ったから」で32.6%だった。
一方、無理やり性交をされた経験があるかという質問で、「ある」と回答したのは女性が6.9%、男性が1%。加害者との関係を見ると、女性では「交際相手・元交際相手」、男性では「通っていた(いる)学校・大学の関係者」が最も多くなっている。
また、加害者が親族や交際相手以外だった人に加害者との上下関係について聞いたところ、「上位だった」と答えた人が55.3%になった。
配偶者からの暴力被害について、臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は「多いなという印象を持たれると思うが、ここでいう暴力とは身体的暴力だけではなくて、心理的暴力や経済的な圧迫、性的強要も含む。特に心理的攻撃は、今でこそモラハラみたいな言葉がそれなりに知られるようになったが、大声で罵ったり怒鳴ったり、物を壊したり、SNSで誹謗中傷したり、その人の交友関係やメール・メッセージの中身を厳しくチェックしたりする、異性との会話を許さない、などということも含まれる。そういう意味では暴力の範囲は広く、それに気づいていない加害者、被害者が実は多いということだと思う」と懸念を示す。
また、こうした行為を相談していない人が一定数いることについては、「自分の受けている行為がそれにあたることがわからないと、当然なんとかしようということにならない。もうひとつは、苦しいと思っていても“この状況をなんとか変えられる”と思っていない人が多い。“自分で解決するのは無理だし、相手は変わらない。自分にも悪いところはある。耐えるしかない”という心理になってしまうと暴力が続いてしまうという構造になる」とした。
無理やり性交をされた状況としては、「相手から不意をつかれ、突然に襲いかかられた」「相手から『何もしない』『変なことはしない』『乱暴しない』などとだまされた」「相手との関係性(相手との関係が壊れる、仕事への影響等)から拒否できなかった」などが上位にあがる。
藤井氏は「親密な関係だからこそ、日頃の社会的な関係を崩してしまうとか、さらなる被害があることを懸念して中々被害者が訴え出られないということは多い」とした上で、「アンケート見て知っていただきたいのは、被害を受けているのは自分だけではないということ。こうした状況に苦しんでいる人はたくさんいて、中には支援を得て問題が解決した人も多数いる。自分も苦しみから抜け出せるきっかけを見つけられるんだと認識していただきたい。僕らがカウンセリングなど支援をしていて一番難しいと感じるのは、“こういう状況をなんとかしたい”と本人が最終的に思えるまでのプロセス。今苦しんでいる方にお伝えしたいのは、もし状況を変えたいと思ったら変えられると思ってほしいことと、いろいろな相談資源・リソースはあるということ。あとひとつは、被害を受けている人がアクションを起こすということは、自分自身を救うだけではなくて、加害者が大事な人であればその人を救うことになるし、夫婦間で配偶者暴力が子どもにも波及している場合、子どもを救うことにもなりうると考えていただきたい」と促した。
最後に藤井氏は「特に配偶者間暴力では,(1)加害者による暴力、攻撃、強要等で被害者が思考停止に近い状態にあること、(2)実家などの家族関係や社会的関係を断絶させられていて、他者視点が入らない状況であること、(3)たまに優しかったり、暴力がない期間があることで、『放っておいてもよい方向に変わってくれるかも』という期待を抱かせていること、といったことは特徴的。当てはまる状況がある場合は、声を上げていただきたい。解決までの時間や道筋はケースバイケースだが、求め続けていただく限り、専門的支援の手はあり続ける」とした。
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