“波乱万丈の人生を生きる金の卵たち=DREAMERS”が、LDH martial artsとの契約をつかみ取り、自らの人生を変えるべくABEMALDHが始動させた格闘オーディション番組『格闘DREAMERS』でのサバイバルに挑んでいる。番組のテーマは「拳でつかみたい、夢がある」。とはいえ、厳しい生き残りをかけ、目の前に訪れる数々の試練を乗り越えた先に、思い描いていた夢は果たして存在するのか…。そこで夢を叶えるべく格闘の世界に飛び込む若者が増えるいま、日本の格闘シーンの一線で活躍する選手や関係者に、「格闘技に夢はあるのか?」という共通のテーマをストレートに投げかけるリレー形式のインタビューを実施。第6回目は和術慧舟會HEARTSの代表として数多くのプロ選手を育成、またABEMA格闘技中継の解説者としてもおなじみの大沢ケンジ氏。気になる彼の答え、胸の内とは――。

― 大沢さんから見て、格闘技の世界には夢があると思いますか。

あるんじゃないですか。取り組み方次第ですけど。成功した選手は華やかですよね。そういう世界になってる。それこそ朝倉未来とか、少年院にいたような人間がスターになれるっていう。僕らが現役の頃は夢のない時代もありましたけどね。地獄のようだった(笑)。

― 夢を持つこと自体に苦労したという。

DREAMがなくなってね。僕の現役時代は「いつか夢のある時代がくる」と思ってやってたんですよ。で、PRIDEとかができたんだけど重い階級が中心で、KID(山本“KID”徳郁)選手が軽量級を開拓して「やっと俺たちも表舞台で闘える」ってなったんですけど、そこでDREAM、日本の大きい大会がなくなって。苦しかった、あの時代は(苦笑)。

― 今は軽量級の選手も目指す舞台がありますね。

だからアマチュアで実績のある選手もどんどんMMAに来てますよね。PRIDE、HERO'S全盛期に小見川道大、宮田和幸といった人たちが来たのと一緒ですよね。『格闘DREAMERS』にもレスリングで実績がある中村倫也選手が出てますけど。「業界、潤ってきたな」って感じがしますね。柔道とかレスリングは実業団だったり“食う道”がある。それを蹴ってプロに来るわけですからね。それは夢があるからですよ。ONE、UFCRIZINと選択肢もあるしABEMAで見られるし。稼げるというのもあるし、有名になれるというのも大きいでしょうね。『格闘代理戦争』なんてプロになる前から注目されるんですよ。『格闘代理戦争』に出たいってジムに入る子もいましたから。

― プロのトップ以外でも注目されるチャンスがあるわけですね。

『Road to ONE』に出た若い選手が、そこまで実績があるわけじゃないんだけどインタビューされたり。それってやっぱりやる気が出るんですよ。リアリティショーもあるし、そこで人生を変えた平田(樹)さんみたいな選手もいる。そうやって注目されることで「掛け算」のチャンスが出てくるんですよ。注目されたところでいい試合をすればどんどん上に行ける。そこで結果が出なかったら、また一つずつ足し算で積み上げていくしかないんですけどね。でも昔は掛け算のチャンスがそもそもなかったですから。今はやり方によっては、双六で「サイコロ2回振れます」みたいなことがある。だから面白いですよね、凄くいい。やっぱりスターになりたいじゃないですか(笑)。人気っていう意味ではSNSも大きいですよ。

― 自己アピール、自己プロデュースがやりやすいですよね。

ウチのジムにも高橋“SUBMISSION”雄己っていうのがいるんですけど、SNSの使い方がうまいんですよ。まだプロ2戦なんですけど、何かありそうに見せるのがうまい(笑)。強いは強いんですけど、キャリア以上に名前を売ってるなと。今は売り方次第っていうところはありますよね。朝倉未来もYouTubeで一気に価値を上げたし、SNSの舌戦で注目される選手もいるし。平本(蓮)くんもそうですよね。もともとK-1で強かった選手ですけど、MMAでの実績はない状態ですから。ただやっぱり結果を出さないと続かないですけどね。

― 高橋SUBMISSION選手もそうですが魚井フルスイング選手もいますし、大沢さんのジムの選手はリングネームにインパクトがありますね。

ウチは名前ではっきり(個性を)打ち出す方向で。「普通、そこまでそのまんまの名前にしないでしょ」っていうくらいの(笑)。それもチャンスを掴むきっかけになりやすい。

― 格闘技界に新しい時代が来ている中で、特に立ち技では選手の多くが子供の頃から格闘技を経験して技術レベルも上がっています。そんな選手たちに何かアドバイスはありますか。

チャンスはあるからしっかり活かせよと。あとは自分を売ることばかり考えすぎないほうがいいよってことですね。結局は実力なんで、格闘技は。サイコロ2回振るチャンスがあっても、実力がなかったら「1」しか目は出ないよって。掛け算になっても1×1じゃダメですからね。だから練習が大事だし、試合で結果を出さなきゃいけないし。だから基本は「勘違いしないで練習しろよ」と。

― 大沢さんの、指導者としての夢は?

現実的な話をすると、UFCのチャンピオンを育てたいですよね。お金を稼ぎたいというよりそれです。いま日本も素材が揃ってきてるから、あとはジム、環境ですよね。それを創れるかどうか。

― 大沢さんは『格闘DREAMERS』を毎回見ているとか。

見てますよ。でも自分が現役だったら見れてないんじゃないかなぁ。映像はカッコいいし環境はいいしLDHの人たちも出てきて、あれ選手が見たら嫉妬しちゃいますよ。まぶしいものを見せつけられる感じですよね。だからこそ、番組に出てる人たちはこのチャンスを大事にしてほしい。キラキラしてますもんね、番組に映ってるものが。しかも他競技で実績のある人たちが出てきてる。

― あの番組に出ていない、下積み中の選手にしたら嫉妬の対象なんですね。

そうなりますよね。選手にしたらLDHから出てきた選手には負けたくない。でも強いだろうなぁ、と(笑)。環境が整ってますから。

― LDHが格闘技業界に本格的に参入してくるというのも大きい?

めちゃくちゃデカいですよ。それは「黒船」でもあるし。僕も『格闘DREAMERS』を見て気づきがあったというか刺激を受けたというか。「あ、ウチのジムもこのままじゃダメだ」って思うようになりましたね。目が覚めました。UFCでチャンピオンになる選手を育てたいと言っても、選手経験者が一人で自己資金だけでジムを作っただけでどこまで行けるのかなって。あくまでも素材勝負になってしまうというか「どこで練習しても強い」みたいな素材が入門するのを待つだけになっちゃう。でもLDHやアメリカのジムはしっかりした資本があっていい環境を作って選手を育てる。LDHが日本の格闘技業界に与える影響は、これからどんどん大きくなるような気がしますね。それはいいことでもあると思います。

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