「家がしんどい」言えない子供たち、“お小遣い”を渡せない親…新型コロナで貧困家庭の負担が増加
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 新型コロナウイルスの感染拡大は、子供たちにどのような影響を与えたのだろうか。外からは見えづらい、家庭内の実情をまとめた調査結果に注目が集まっている。

【映像】子供に「お小遣い渡せない」コロナ禍で年収200万円世帯の負担が増加(調査結果)

 大阪府立大学・人間社会システム科学研究科の山野則子教授らは、全国の保護者2582人、児童相談所、教育委員会などあわせて2298の機関に対して調査実施。新型コロナの影響で「子供がなんらかのストレスを抱えている」という回答は9割近くに上り、収入の格差が家庭の問題に大きく影響していた。

「一番気にしているのは学業の遅れ。親も子も生活リズムの乱れに困っている。あと『居場所に困った』という子供が、保護者の想像外に多かった。親が仕事に行ってしまい、子供たちが急に家に居なきゃいけなくなった。貧困に関連して『将来の進路について不安になった』という人も多かった。親の収入が厳しければ厳しいほど、いろいろな問題が高く出た。親の精神的負担も収入によって違う」(以下、山野則子教授)

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 新型コロナ感染拡大の前後を経済的に比較すると、年収200万円から400万円の世帯で「子供にお小遣いを渡すことができなかった」「新しい服や靴を買うことができなかった」という項目が増加傾向にあった。仕事や収入の変化、生活リズムなどが乱れ、高まるストレス。山野教授は、親のストレスの矛先が子供に向かうリスクについて、懸念を示す。

「学校が休校になることで、社会から親と子も閉ざされてしまう。より内にこもって暴力が子供に向かいやすくなったり、子供も遊んだり発散できず、ゲーム依存症になったり、いろいろな問題が起きている。感染拡大が高い地域ほど厳しい状況だ」

 政令指定都市で、教育委員会が休校中に受けた「虐待の相談件数」は前の年と比べて2倍に増加している。感染者の多い地域では「家庭内暴力の相談件数が増えた」と答えた児童相談所の職員がコロナ前と比べ、40%増えていた。

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 去年1年間の児童虐待の認知件数などが過去最多だった埼玉県では、県警に児童虐待対策室を新設するなど、コロナ禍における児童虐待の防止に取り組んでいる。

「地域や家庭も表面的に見て判断しないことが大切。子供は『家がしんどい』と言えない。表面だけを見て『あそこの家は大丈夫』と判断せず、“言えない声”があると思ってほしい。しんどければしんどいほど、人に攻撃的になったり、アグレッシブになったりする。そこを単に批判的に見るのではなく、あたたかく受け止めていただきたい」

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■「学校は虐待が発見できる場所」調査から導き出された“教訓”

 山野教授らが発表した調査結果について、ノンフィクションライターで記者の石戸諭氏は「非常に良い調査だ」と話す。

「休校処置が、どのような影響を及ぼしたのか。結果、以前から虐待問題でリスクが高いと言われている低所得の貧困家庭に負担がいった。感染を防ぐために『ステイホーム』や『家にいよう』という声が上がったが、調査で家庭の格差が如実に現れた」(以下、石戸諭氏)

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 新型コロナの感染拡大によって、全国で相次いだ休校。山野教授らの調査から導き出された“教訓”として、石戸氏は「緊急事態宣言が出ても幼稚園や保育園、学校は閉じてはいけない」と指摘する。

「幼稚園や保育園、学校は家庭以外の1つの“居場所”になっている。今後も緊急事態宣言が出る可能性はある。そのとき、幼稚園や保育園、学校などの教育機関は最も閉じてはいけない場所であることが明らかになった。学校は家庭で起きている虐待が発見できる場所でもある。緊急事態宣言が発令されても、学校機能は維持しなければならない」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

【映像】コロナで貧困層に影響...家は格差の塊?
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