総務省の接待問題をめぐり、立憲民主党など野党4党が提出した、武田総務大臣に対する不信任決議案の採決が1日、衆議院本会議で行われた。結果は、自民・公明両党などの反対多数で否決された。

「内閣不信任案は“伝家の宝刀”だ」恒例行事化に批判も…否決前提でも出す意味は?
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「内閣不信任案は“伝家の宝刀”だ」恒例行事化に批判も…否決前提でも出す意味は?
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 翌日、立憲民主党の枝野幸男代表が「今の政府の状況は明日にでも(内閣不信任案を)出したい。内閣をとても信任できるような状況ではない」ともう一つの“不信任案”に言及。こうした野党の動きに、自民党の二階幹事長は「私は直ちに解散で立ち向かうべきだと進言をしたい」と述べている。

 自民党一強となった安倍内閣時代は、毎年のように内閣不信任案が提出されていた。いずれもダブルスコア以上の大差で否決されていたが、ネットでは「今回もまた否決されるだけ」「内閣不信任案って何か意味あるのだろうか」「野党は何をしたいのか分からない」などの声があがっていた。

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 否決されるとわかっているのに、内閣不信任案を出す理由はどこにあるのだろうか。ニュース番組『ABEMA Prime』では、野党の現役議員と議論を行った。

■ 不信任案は“最大の意思表示” 否決されると分かっていても…「内閣を信任していないことは事実」

 不信任案について、立憲民主党の小川淳也衆議院議員は「法案や決議案の提出は野党の意思表示だ」と話す。

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「いろいろご批判はあると思うが、野党にとって最大の意思表示は法案と決議案の提出だ。だから『成立しないから出すな』『否決されるから出すな』だと、野党の意思表示そのものを否定することになる。決議案や法案の提出は、例えば今『(新型コロナで困窮した人に)持続化給付金を再給付して欲しい』や『医療現場に支給金をもっと出して欲しい』など、そういう法案も提出している。成立するしない、可決される否決されるに関わらず、野党にとっては“最大の意思表示の場”だという側面がある」

 新型コロナ対策やワクチン接種、東京五輪・パラリンピックなど、他にも目を向けなくてはいけないものがある状況で、このタイミングの“意思表示”は必要なのだろうか。小川氏も「私も党内で『タイミングは再考すべきだ』と主張した」といい、「ただ、幹部の間では、予算委員会で武田総務大臣の姿勢や答弁ぶりに相当いろいろな思いを抱えてきたのは事実。予算審議に区切りがついて、けじめをつけたかったのだろう」と見解を語った。

 小川氏の説明に自民党の牧原秀樹衆議院議員は「野党の皆さんが審議を出すのは国会上の権利だ」とした上で、「内閣不信任案が出て、全部の審議が止まるのはわかる。それは、内閣全体に対する不信任案だからだ。だが、今回は総務大臣に対する不信任案だったのに、すべての審議が止まった」と指摘。

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「みんな(デジタル庁の法案)審議のために相当な準備をして、委員会室にいた。武田総務大臣の不信任案で、デジタル改革担当の平井大臣に出たわけではないのに。もし内閣不信任案が出たなら、すべての委員会の審議が止まるのは理解できる。だが、なぜ総務大臣に出た不信任案によって、他の委員会が止まってしまうのか」

 武田総務大臣の不信任案によって、翌日に予定されていた消費者特別委員会なども全部流れてしまったという牧原氏。

 内閣不信任案は、これまで50回以上提出されてきた。可決されれば、政治の情勢は大きく変化するが、今までに可決された回数は、わずか4回。そのうち2回は第二次世界大戦後すぐのタイミングで、日本の政治自体が不安定だった。残りの2回は1980年の大平内閣、1993年の宮沢内閣で、いずれも与党、自民党の内紛が可決の要因だった。否決される可能性が高い中、このタイミングで不信任案を出すことはありえるのか、野党はどれくらい本気なのだろうか。

 この疑問に前述の小川氏は「内閣を信任していないことは事実。半々ではないか」と述べる。

「(内閣不信任案は)決議案の中で最も重い。さきほどもお伝えした通り、決議案は“最大の意思表示”。だからきちんと意思表示したい気持ちも、私も含めて当然野党は持っている」

「内閣不信任案は“伝家の宝刀”だ」恒例行事化に批判も…否決前提でも出す意味は?
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 今や“恒例行事化”とも揶揄される内閣不信任決議案。一方、小川氏は「恒例行事という使い方はすべきではない」と述べる。

「菅(かん)政権時代、小沢一郎さん含めて、与党内の一部に内紛があった。そのとき谷垣禎一さんが不信任案を出して、場合によっては『可決するのではないか』と思う局面もあった。重大政局の引き金を引く意味では(内閣不信任案は)まさに“伝家の宝刀”だが、野党の最大の意思表示である以上『恒例行事だ』と軽く見られるような使い方はしない方がいい」

 今年は衆議院選挙が行われる年だ。衆院議員は10月21日に任期満了を迎え、総選挙が行われる。秋までに行われる解散・総選挙を見据えて、小川氏は今の状況をどのように見ているのだろうか。

「私も旧民主党から野党でずっと踏ん張っている人間だ。経験上、野党に10%ぐらい支持率があるときは、自民党さんとそれなりに戦える。10%に満たないと、野党第一党として国民から認知いただいていない、期待に応えられていないと思う。自責の念はすごく感じている」

「内閣不信任案は“伝家の宝刀”だ」恒例行事化に批判も…否決前提でも出す意味は?
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 今年の総選挙では“新型コロナ対策”が、ひとつの目玉になるだろう。野党は与党を上回る対策を掲げ、選挙で戦う必要がある。小川氏は、与党の政権が長期化したことで発生した「権力の私物化や人事の恣意的な行使」に言及。その上で「今の惨状では、その受け皿に野党が足り得ていない」と話す。

「これはひとえに野党側に責任がある。旧民主の分裂や合流騒動もあった。『野党も野党でお互いのメンツや立場で食い合っているではないか』と(国民に思われた)。本当に、国民のために真剣に真摯に、凄まじい覚悟でやっているのか。政策や新型コロナ対策も大事だが、政治姿勢は口先では伝わらない」

 与野党の激しい攻防が予想される秋の解散・総選挙。新型コロナによる国民の不安をいかに取り除くか、その上で真摯な政治姿勢を見せられるかが、ポイントになりそうだ。

ABEMA/『ABEMA Prime』)

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