密の回避が課題になっている東京五輪・パラリンピックの聖火リレー。密を避けるよう呼びかけられていたにもかかわらず、愛知県を回っていた6日の聖火リレーには沿道に大勢の観客が押し寄せた。
【映像】聖火リレー連日の「密」臨床心理士が指摘する“集団心理”
また、7日に過去最多の新規感染者878人を記録した大阪府では、吉村知事が公道の聖火リレーを中止する意向を表明。これを受け、組織委員会の武藤事務総長が緊急会見を開き、「万博記念公園内で一般の観客を入れずに実施する」とコメント。公道における聖火リレーが中止されるのは初めてだという。
なぜ、聖火リレーに人が集まってしまうのだろうか。明星大学心理学部准教授で臨床心理士の藤井靖氏は「人間の心理からすると自然な反応だ」と話す。
その上で、藤井氏は経済政策の「GoToキャンペーン」についても言及。「『お金を出します』といったきっかけや環境があると『行こうかな』という話になる。集団心理は、怖いもので『自分も見に行かなきゃ損をするかもしれない』と思って同調行動が起きるし、多くの人が参加すると、仮に危険な行動を取っても心理的には責任が分散される。幸い今のところ聖火リレーでクラスターが発生したなどの大きな問題は起きていないようだが、人の心理はエスカレートするものなので、安易に成功体験として位置付けるべきではない」と懸念を示す。
しかし、聖火リレーによって笑顔になる人や、一生の思い出として心に残す人もいる。メディアはどのような報道を行えばいいのだろうか。藤井氏は「メディアではインパクトが強い映像が使われがちだ」とした上で、「(カメラが)寄ったら密に見えるが、引いて見るとそうでもないケースもある。そこで何が起こっているかという事実は、時間の関係で切り取られてしまうから、前後関係や文脈が置き去りになってしまう」と指摘する。
「実際に現地に行ってみたら、ランナーが来たときだけ少し声が出たかもしれないが、それまでは静かにしていて、ちゃんとマスクをして感染予防対策を徹底していた、という可能性はある。そういう全体像が見えれば『みんな気をつけながら見に行っているんだな』とわかる。そういう印象があれば、よい意味での同調につなげていくこともできるのではないか」


