「座る」。ただそれだけでソーシャルディスタンスが確保できる座席が、都内の大学に導入された。いったいどんな座席なのか。
白やピンク、赤に黄色と、色鮮やかなイス。中央大学の多摩キャンパスに導入された「ロールバックチェア」という座席だ。特定の色に座るだけで、近くの人と自動的にソーシャルディスタンスが取れる仕組みになっている。
配色は緻密に計算されていて、350ある座席が17の色に分けられている。何度も検証を重ねて、座る人が楽しくなるような「明るい色」を選んだという。先生の「白と黄色にお座りください」という指示に従って学生が座ると、前後左右で2m以上の距離が保て、ほかの同系色同士の座席ではおよそ1mの距離が保てる仕組みだ。
学生からは「最初入ったときはそういう風に設計されているとは思っていなくて、ただ普通にデザインとして見ていたんですけれど、ソーシャルディスタンスが取れるようにデザインされていると知ってすごくびっくりしました」といった驚きや、「大分から上京してきて、東京に来ること自体コロナの感染リスクがあって怖かったので、この椅子もそうですし感染(防止)配慮がされていて安心な部分は結構あります」と安堵の声も聞かれる。
ロールバックチェアの導入について、中央大学の佐藤信行副学長は「昨年度、とりわけ1年生だった学生のみなさんは、なかなか対面の授業を受けることができずに不安に思っている方も多いと思います。不安をできるだけ軽減していくために、(座席の)ビジュアルを可視化する色分けは大変大きな意味があると考えています」と話す。
コロナ禍でオンライン授業が主流になりつつあった去年、工務店が大学と共同でこの座席を開発することになったきっかけは、緊急事態宣言あけに担当者が見た「座席にまつわるあるニュース」だった。
「映画館を利用されている人が、自分たちで距離を取りながら映画を見ているシーンを映像で見たことがあって、座席の色とソーシャルディスタンスの確保を紐づけて考えることができるのではないかと。たとえ空席があったとしても、にぎやかさや楽しさを座席の色で表現していきたいなというのが中央大学との最初のスタートでした。コロナ禍でも、みなさんが学校に帰ってきて安心して授業を受けて、ちょっとでもいいから安全な居場所を作ってあげたいという気持ちです」(竹中工務店 東京本店設計部の金井謙介さん)
コロナ禍で生まれた新たなスタイルの教室。中央大学・国際経営学部の木村有里教授は「コロナ対策としてはもちろん安心して授業ができると思いますし、学生たちも自ら判断して安全を作っていくということができるので、本当にニューノーマルらしい教室だなと思います」と期待を寄せた。
(ABEMA/『ABEMA Morning』より)