中学校の卒業アルバムの写真とともに、その写真が修整されていたという告白。現在、書評家として活躍する西田藍さんのツイートがネット上で広く拡散され話題を呼んでいる。2007年当時のことについて西田さんに話を聞いた。
「卒業式が終わった後日にアルバムを取りに行く日があって、みんなで寄せ書きとかして持ち帰ったんですけど、そういうもろもろが終わった後に写真が変だと気付いて」
外国人の父親と日本人の母親を持つ西田さん。同じ時期に撮影した写真を見ると、少し明るい色の髪であることがわかる。西田さんは、卒業アルバムを見て明らかに髪の毛を黒く塗る修正がされていることに気づいたという。
「自分の髪色が悪いことのように感じたということですね。どういう制作過程かはわからないですけど、“茶色いものは黒くしよう”と動いてたんだなということ自体が、このアルバム制作に関わった大人は誰もそれを止めずに“これが当たり前だ”と思って黒く塗ったのが悲しかった」
自身のルーツについて入学時に学校側に説明していたため、在学中、特に髪の色が問題になることはなかったという。
「それが、悪意で黒くされたとは思っていないなくて。そもそも卒業アルバムの個人写真は、髪色が本来明るい子全員真っ黒にされていたんです。“黒くすることが当たり前で正しいこと”という前提で進んでいたと思うんですね。ただそれが正しいことではないだろうとは思うんです。外国のルーツがあろうがなかろうが、髪色は全員真っ黒でストレートではないじゃないですか。どうしてそれ(黒髪)が前提になってて、そうじゃないのがおかしいってなっているかですよね」
卒業アルバムの加工は、西田さんを含む髪色が明るい生徒みなに施されていた。「黒髪は善である」とでもいうように押し付けられた価値観から14年経った今も続く、髪の色や服装など校則に関する議論。西田さんは“正しいこと”とされている前提から見直す必要があると訴える。
「厳しい校則とか髪の毛の黒染めを強要されたというニュースを見て、『未だに…』と思ってしまうんですけど、何もしなかったらよくなるってわけじゃないんだなって思います。現在もそういうおかしな指導をしているところも、悪意を持ってやっているわけじゃないと思うんです。それが“当たり前で正しい”と思ってるからやっていると思うので、その前提を変えていってほしいですね」
都立高校の44.6%が地毛証明書の提出を要求している。東京都教育委員会は、事実誤認による指導を防ぐのが目的で、提出は任意であることを説明するよう各学校に通知しているという。
ともすれば“ブラック校則”と言われる厳しい校則について、ニュース解説YouTuberの石田健氏は「子どもを守っているという意識が、逆に子どもをリスクにさらしている」として4点を指摘した。
「1つ目は『経済的なリスク』。髪を染めたりくせ毛をストレートにしなくてはいけない、指定の制服を買わなければならないというのは、家庭の経済的な事情は違う中で大きな負担になる。
2つ目は『命のリスク』。校則で“遅刻は絶対にダメだ”ということで、急いで学校に向かう中で事故にあうといったリスク。もちろん遅刻をしないに越したことはないが、校則が厳格であればあるほど子どもは焦ってしまう。
3つ目は『人権意識のリスク』。例えば、障害やジェンダーなど様々な理由で校則に適合することができない人がいたとして、そういった人に“みんなやってるんだから”というのは人権の制限が行われてしまう。
4つ目は『教育のリスク』。こういった校則を当たり前だと思うことで、適合することができない人がいじめられたり不都合な状況にさらされる。本来、教育は“人権を尊重しなくてはいけない”“多様性を考えなくていけない”という場なのに、みんなやってるんだから当たり前となってしまうのは、教育としては望ましくないのではないか」
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