前田敦子「ちゃんと責任を感じながら生きる」今振り返る10代の自分 映画『くれなずめ』インタビュー

 成田凌主演の映画『くれなずめ』は、『バイプレーヤーズ』シリーズや『君が君で君だ』などで知られる、松居大悟が監督/脚本。松居作品に焦がれていた成田が、ついに出演することになった好タッグの1本は、非常にセンチメンタルな味わいを残した。

 松居監督自身の実体験をモチーフに書かれた舞台劇を、成田、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹というメインキャストを据えて映画化した本作。高校時代、帰宅部同士でつるんでいた主人公・吉尾(成田)と5人が、友人の結婚式で余興を披露するため、久々に再会。披露宴と二次会の間の時間を、思い出をフラッシュバックしながら描いていく力作だ。

 6人を取り巻くキャスト勢の中でも、ひと際印象深い演技を見せたのが、高校時代、吉尾と一緒に清掃委員をしていたミキエ役の前田敦子だ。気が強く責任感があり、その姿勢を貫き通す当時と今を、変わらぬ中身、変わった風貌で巧みに演じ分ける。作品のこと、10代から続く“仲間”のこと、自分に懸ける思いについて、前田に語ってもらった。

ミキエを演じて感じたこと「女の子って、過去に何があっても、とりあえず進んでいく」

前田敦子「ちゃんと責任を感じながら生きる」今振り返る10代の自分 映画『くれなずめ』インタビュー

――前田さんと松居監督のそもそもの関わりは、どんな感じだったんでしょうか? 

前田: 下北沢の駅で、たまたま松居監督をお見かけしたんです。「あ、松居監督だ!」と思って、私が話しかけました。そのときに「舞台あるけど、どうですか?」とゴジゲン(※松居監督の所属劇団)の観劇に誘っていただいたんです。その舞台がすごく面白くて、『くれなずめ』も、そのゴジゲンの舞台の映画化だったので、「あ、これは絶対面白いに決まってる!」と思って、脚本を読む前に即答しました。

――いわゆる「どんな役でもやってみたい」という感じでした?

前田: そうですね。松居さんは「いつかお仕事したい」と思っていた監督のひとりだったので、自分が選ぶようなことではないですね。呼んでいただけただけで、すごくうれしかったです。

――実際、台本を読んでみていかがでしたか?

前田: 男の子たちの話で、しかも松居さんの実体験が入っているとお伺いしたので、すごく思い入れがある作品だと思いました。私が演じたミキエは、男の子目線でなんかインパクトがある女として思い出に残って、笑い話になっている役。なので、すごく幸せな女の子だなとも思いました。その青春のステージに入れてもらえている感じがうれしかったですね。

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映画『くれなずめ』/©2020「くれなずめ」製作委員会

――現場に入る前に準備したこと、もしくは意識していたことはありましたか?

前田: みんなの仲の良さがすごく伝わる現場でした。実は、リハーサルもすごく重ねて挑まれたと後から知ったんです。だからみんなの輪に要所、要所に入れるように…という意識しかしてなかったです。映画の中でも、実際でも、私は俯瞰で見て楽しませてもらっていました。「私の入る場所がない…」というのではなく、本当に楽しそうだったんですよ(笑)! みんなで下ネタを言って「イエーイ!」みたいな(笑)。「男の子たちって、こんなに楽しそうなんだ」と、見守っている感じでした。

――ミキエは感情をストレートに表しますが、そのあたり前田さんはご自身と比較して、どうですか?

前田: 私も白黒はつけたいタイプではあるのですが、直接ガンっと言えるかどうかと言われたら…そうじゃない。友達に言いたいことがあっても、普通は飲み込むことが多いと思うんですが、ミキエはたぶん男女問わずできちゃう(言える)子なので、いいなと思います。私は結構躊躇するタイプなので、「ん-、ま一いっか」と思って、自分の中でどう処理するか考えます。でも大体、皆さんそうですよね?

――そう思います。楽しそうな男性陣と対照的に、ミキエは今を生きている女性の印象も受けました。

前田: 松居監督はミキエのことを、「ひとりで男6人をやっつける女だ」と言っていて、私も「いろいろな意味でそうだよな」と思いました。男の子たちがハッとする瞬間は、ミキエがひとり先に行っている成長の感じというか、人生の歩み方だと思うんです。女子と男子の人生の進み方の違いについては、私も改めて冷静に思いました。女の子って、過去に何があってもとりあえず進んでいくというか、今というより未来を見て生きているのは、女性のほうが多いのかなって。男の子は、みんな一緒になると当時に戻れちゃう。時空をすぐ戻れる集まりなのかな(笑)? だから、ミキエは男性から見る女性の生き方みたいなのを表しているのかな、と思いました。

10代~20代で変わっていく人付き合い、AKB48・1期生との大切な絆

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――人付き合いのお話で言うと、前田さん自身、10代から20代前半~後半と変化はありましたか? 

前田: 私には幼馴染みたいな存在で、やっぱり(AKB48 の)元メンバーたちがいるんです。そういう部分では、『くれなずめ』の男の子6人みたいな感じですね。1期生で、ずっと残っていた子は7人くらいしかいなくて、付き合いはメンバーによっていろいろです。普段から頻繁に連絡を取る子もいれば、そこまで関わらないけど会えばすごく安心する子もいて。それぞれの距離感が良い感じで、集まるときはみんなで絶対集まる、みたいな。それが大人になってからの友達の付き合い方だなと感じますね。

学生のときは、毎日「親友、イェイ!」みたいな感じでいるけど、みんな卒業していって、1年に1回会える友達こそ、本当の友達なんじゃないかなと私は思っています。池松(壮亮)、高畑(充希)、柄本(時生)のメンバーは、1年に1~2回絶対会うのを10年間続けています。最初の頃はよく会っていたんですが、今はみんな結構いい年になってきたので…(笑)。

――わかる気がします。頻度は変わりますけど、仲間内の絆や距離感は変わらないですよね。

前田: はい。前は朝までみんなでしゃべっていたけど、今は2~3時間で満足して、バイバイしたりして。ちょうどいいんですよね。年に1~2回でも、「ああ、大人になるとこれぐらいの距離感が、一番一生の友達でいられるんだろうな」と思ったりします。もちろん、お互いのことはどこかで思い合っているし、気にはかけている。でも逐一聞かないし、報告しないし、会ったときに「そういえば、あのときのあれはどうだったの?」、「大変だったね」、「よかったね!」とか。

――とても良い人付き合いをされていらっしゃるんですね。

前田: そうかもしれないです。私、これから先、親友と呼べる人はたぶん出会えないんだろうな。もう両手いっぱいくらいいるので(笑)。それで十分だと思っています。

自分に興味がなかった10代から、「昔よりも最近のほうが、すごく濃い」

前田敦子「ちゃんと責任を感じながら生きる」今振り返る10代の自分 映画『くれなずめ』インタビュー

――高校時代が描かれているということで、前田さんが10代の自分に声をかけてあげるとしたら、何て声をかけてあげたいですか?

前田: 学生時代のときですよね。高校のときはもうAKBだったので、そう思うと…半世紀もこの世界にいるんですよね(笑)。今16年目で、あっという間に経ってしまいました。小学生のときの自分は、本当にこの世界に憧れていたので、その夢を恥ずかしがらずに外に言えて偉かったなと思います。言わなかったら入れていないと思うし、親に言う勇気をあのときに持てて「ありがとね、がんばったね」と言いたいです(笑)。

――10代のときを思い返すことはありますか?『町田くんの世界』でも制服は着ていらっしゃいましたが、本作でも袖を通していますよね。

前田: 意外に最近、学生服を着る役が多いんです(笑)。そういえば、『町田くん』のときには、お腹の中に子どもがいました。最近はやっぱり子どもに置き換えて、「このとき、こんなことしたな」と思い出になっています。昔よりも最近のほうが、すごく濃いです。若いときは、「今楽しければいいや」と思っていたときもありましたし、自分にあまり責任を感じていなかったと思うんです。その時よりは、今は子供を産んで、自分の人生において「ちゃんと責任を感じながら生きなきゃ」と思って、そこから過ぎ去る感じがなくなりました。1個1個、かみしめられるようになったと思います。

――前田さんのキャリアや歴史は、10代のときから20代まで見える形でわかりますよね。なので、昔のこともすごく濃いのかと思っていましたが、違うんですね。

前田: ですね。AKBのときは、自分のことにあまり興味がなかったというか、「自分なんか、いいよ」と思っていました。でも、今はそうは言っていられないというか、私がちゃんとしないと「この子を支えていけないじゃん!」「そんなこと言ってる場合じゃないっしょ!」と自分と話し合えたというか。そのきっかけが子供が生まれたときだったので、フリーになってみようという思いにも繋がりました。子供が生まれて、その選択を自分で狭めてはいけないな、子どものせいにしている自分がいけないと思ったんです。自分の人生にも、子どもの人生にも、責任はちゃんと持って、どっちも頑張ろうと思っています。

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――今後は『NODA・MAP』への出演も控えていらっしゃいますし、女優としても「もっともっとやってやる」みたいな気もあるんですね?

前田: あります。もっと前、もっと先を見て生きていきたいなと。「こんなもんか」と思いたくないし、自分の限界を自分で作りたくない。自分はこういう風になりたい、という型には絶対はめたくないです。仕事において、出会いのタイミングはあると思っていて、本当に少しズレたら“ない出会い”が出てきてしまうと思うんです。そのタイミングにいつでもさらっと、ふわっと入れる、風通しのよさは持っていたい。それは自分の最近の人生のテーマだと思います。

――全部手にしていく感じですね。

前田: 乗っかれる部分にはちゃんとさらっと乗っかって、もしそれが違ったらそれはそれで運命だと。そういう生き方をしていけば、諦めもちゃんとついていくというか(笑)、後悔はない生き方ができるかな。人に迷惑をかけずに、自分の中でそういう軸を持てれば、もっと違う世界が見えてくるのかなと思っています。

前田敦子「ちゃんと責任を感じながら生きる」今振り返る10代の自分 映画『くれなずめ』インタビュー
前田敦子「ちゃんと責任を感じながら生きる」今振り返る10代の自分 映画『くれなずめ』インタビュー

取材・文:赤山恭子

写真:You Ishii

映画『くれなずめ』

前田敦子「ちゃんと責任を感じながら生きる」今振り返る10代の自分 映画『くれなずめ』インタビュー

監督・脚本:松居大悟

出演:成田凌、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹/飯豊まりえ、内⽥理央、⼩林喜⽇、都築拓紀(四千頭⾝)/城⽥優、前⽥敦⼦/滝藤賢⼀、近藤芳正、岩松了/⾼良健吾

2021年5月12日(水)テアトル新宿ほかにて全国公開中

©2020「くれなずめ」製作委員会

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