NASA(アメリカ航空宇宙局)が延期を発表した、星出彰彦さん(52)ら4人を乗せて国際宇宙ステーション(ISS)を目指すスペースX社の「クルードラゴン」の打ち上げが、日本時間23日午後6時49分に予定されている。
延期の理由は、悪天候による“波の高さ”。打ち上げ自体に影響はないものの、万が一緊急脱出をした際、星出さんらは海に脱出するが、救出作業に影響が出るとの見方から延期が決定された。
今回搭乗する星出さんは“苦労人”だ。子どものころから宇宙へ強い思いを持ち、大学4年生時、応募資格がなかったにも関わらずNASDA(現JAXA)の宇宙飛行士候補者の募集に応募。当然受け入れられなかったが、宇宙に携わりたいという思いからNASDAへの就職を決める。入社から4年後の1996年、正式に宇宙飛行士候補者選抜試験に応募するも、最終選考で落選。この時に選ばれたのが野口聡一さんだ。それでも星出さんは夢を諦めず1998年、ISSに搭乗する日本人宇宙飛行士候補者として選抜され、2001年に正式に認定された。
星出さんが宇宙へ行くのは、2008年(スペースシャトル「ディスカバリー号」)と2012年(ソユーズ宇宙船)に続き3度目。今回はISSで日本人2人目となる「船長」を務める。滞在期間は約半年間を予定し、星出さんは船長としてISS全体の指揮をとる一方、日本実験棟「きぼう」を利用した主に次の8つのミッションも行っていく。
1.JEM Water Recovery System~次世代水再生システム構築に向けた技術実証~
2.FLARE~火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼現象に対する重力影響の評価~
3.Cell Gravisensing~細胞の重力センシング機構の解明~
4.Anti-Atrophy~無重力や寝たきりによる筋萎縮の予防に有効なバイオ素材の探索~
5.高品質タンパク質結晶生成実験~凍結融解技術および温度維持輸送技術実証~
6.ELF~静電浮遊炉を使用した高精度熱物性測定~
7.J-SSOD~超小型衛星放出ミッション~
8.2nd Kibo Robot Programing Challenge~第2回「きぼう」ロボットプログラミング競技会~
※JAXAの資料より
今回の宇宙飛行の目的について、現地を取材するANNアメリカ総局の中丸徹総局長は「一言でいえば、人類がこれから本格的に宇宙空間や月の表面、さらには火星に進出した時に、長期間生活をおくるために必要な技術を中心に研究することになる」と話す。
人が当たり前に宇宙で生活する時代へ――。その現在地については、「アメリカの『アルテミス計画』に日本も参画していて、2024年に月面着陸、2030年には月の上に基地をつくろうとしている。最初は宇宙飛行士になると思うが、前澤さんが月の周回旅行を計画しているように、その先にはどんどん民間人が入っていくと思う。公の組織だけではなく民間の企業が参入することで、宇宙開発が本格化してきたと感じる」と述べた。