2ラウンド終了間際の一撃に対して「(ゴング後に)パンチを貰った」と猛アピール。そのままリングに寝転がり抗議を継続するも、自らがTKO負けという驚きの結末に。前代未聞の出来事に対して「ガス欠でファールをアピール? 出て行け」「戦意喪失」「(倒れて)引っ込みがつかなくなったのかな」など、ファンから厳しい声が寄せられ、ネットで波紋が広がっている。
4月29日に開催されたONE Championship「ONE ON TNT IV」。オマール・ケイン(セネガル)とキリル・グリシェンコ(ベラルーシ)の対戦は2ラウンド終了間際、体力を激しく消耗したケインがゴング後の被弾をアピールしたまま倒れ込んだ末にTKO負けを宣告されるという驚きの決着に。反則アピールが実らず戦意喪失で試合が終わるという前代未聞の結果に、解説陣も「疲れちゃったんだろう」「やりたくなかったのかも」など驚きを隠せなかった。
身長193センチのケインと195センチのグリシェンコ。ともに“KO率100%”を誇るヘビー級の一戦は、思わぬ展開となった。セネガル相撲出身の人気選手であるケインは今年ONEに参戦すると、荒削りながら筋骨隆々の恵まれたフィジカルで押し切るスタイルで1ラウンドKOの山を築いてきた。一方、初参戦のグリシェンコはグレコローマン・レスリング出身で世界選手権に出た実績もある選手。地元ベラルーシでの成績は3戦無敗、ケインの強さのベンチマークという意味でも注目の試合となる。
これまでは試合開始とともに力で振り切ってきたケインだが、この日は勝手が違った。打撃にキレがあり、組んでもケインと互角に渡り合うグリシェンコに苦戦。さらにケインが得意とするケージレスリングに対しても、グリシェンコは冷静に体を入れ替えるともろ差しからヒザやボディ打ちを繰り出し、着実にケインの体力を削っていく。1ラウンド後半になるとグリシェンコの強いプレッシャーに対して、ケインが後退する場面も目立った。
2ラウンド、ケインはハイキックを繰り出すと、力任せに突進しながら大振りなフックなどを打って反撃に出る。ケインがケージ際で差す場面も見られるが、荒い息づかいが場内に響き渡りわたるなど、ケインの消耗は明らかだ。そんなケインの様子にABEMAの視聴者からも「スタミナが切れている」「かなり息があがっている」などの声が上がり始める。一方、スーパーマンパンチをみせるなど、グリシェンコには余裕が感じられる。もはや組んでからケージに押し込むだけのケイン。膠着状態が続いた試合は2ラウンド終了のゴングとともに前代未聞のエンディングを迎えた。
組合いからヒザの攻防、ゴングと同時のタイミングでグリシェンコが右のフックを放つと、ケインがノドのあたりを押さえながらマットに倒れ込み“ゴング後に殴られた反則だ!”とアピール。対するグリシェンコは「何があった?」と言わんばかりに両手を広げ、ただただ困惑を隠せない様子だ。
この日、ABEMAでゲスト解説を務めた秋山成勲は「ゴングと同時にパンチが当たったけど、疲れただけじゃないですか?」と見解を述べると、実況の西達彦アナウンサーも「これは休みたいからこのようなポーズをとってるんでしょうか」と応じる。
リングドクターやレフェリーがケインを囲むなど、リング上は一見すると深刻な状況。しかし、問題のシーンがリプレイされると、秋山は「当たってない…」とポツり。なんとグリシェンコのパンチは、ケインのノドをかすめただけの空振りだった。
体力回復の時間稼ぎかと思われた一連のパフォーマンスだが、そのまま疲れ切ったケインは立ち上がることができずに試合終了に。なんともスッキリとしない形ながらグリシェンコのTKO勝利がコールされた。
混乱気味の解説席で西アナは「(グリシェンコの)攻撃はイリーガルではなく、ケインが棄権をしたという判断になるんでしょうかね」と推測すると、秋山も「棄権するようなパンチではないです。断言します」と補足。さらに「あの距離感から打って危険なパンチでもないし、そこまでの致命傷ではないので、私としてはケイン選手が疲れちゃったのか? もうやりたくない…。それに尽きると思う」と苦笑いを浮かべた。
もうひとりのゲスト解説である平田樹も「(秋山選手の意見に)私もそう思います。まさかの結果にびっくりです…」と微妙な表情。二人の意見を聞いた視聴者からは「戦意喪失」「(倒れて)引っ込みがつかなくなったのかな」の声、さらに海外SNSでは「殴られてアピールするまで2秒くらいの間があったぞ」「ガス欠でファールをアピール? 出て行け」など厳しい意見が飛び交っていた。