「このままの状況が続くと、ゴールデンウィークを過ぎても感染者数の増加が続くことになる。感染爆発のタイミングを迎えるかもしれない」
28日、新型コロナ感染者の急増に警鐘を鳴らした東京都の小池知事。都内で感染力が強いとされるインド由来の変異ウイルスの感染者が見つかるなど、大型連休中でも新型コロナウイルスへの警戒が続いている。
【映像】もし自分が新型コロナに感染したら? 話し合っておきたい「治療方針」
新型コロナに感染し、もし重症化した場合、必要になるのは人工呼吸器や人工肺装置「ECMO(エクモ)」だ。この2つの機器に関して、東京大学などの研究チームがある調査を実施し、話題になっている。
調査はインターネットで全国の20~89歳の男女2239人を対象に実施(期間:昨年12月17~21日)。新型コロナに感染し、重症化した際に「人工呼吸器を使う可能性がある」は、93.1%が知っていたが、人工呼吸器の装着時に「鎮静剤を使って意識レベルを下げることを知っていた(何となく知っていた)」は41.7%、「知らない」と答えた人は58.1%にのぼった。さらに「ECMOの装着中は意識が薄れ、コミュニケーションをとれない」という事実は、48.3%の人が知らなかった。
今回の調査をまとめた東京大学医科学研究所・神里彩子准教授は「自分や家族が経験しないとなかなか知ることができない」と話す。
「人工呼吸器やECMO(人工肺装置)の装着は、新型コロナによって知れ渡った機器だと思う。自分や家族がそのような経験をしない限り、実際どのように装着してどのような状況になるのか、皆さん知らない。私自身も非医療者で、あまり具体的には知らなかったという状況があった」
また、調査では、自身や家族が重症化した場合に備えて「受けたい・受けたくない医療について家族などと話し合ったことはあるか」という質問に87.8%が「ない」と回答。もし急速に症状が悪化し、人工呼吸器や人工肺装置を使う事態になった場合、治療方針に関する自らの意思を表明する機会がないと言える。
調査結果を踏まえ、神里准教授は「機器をつける前に“意思表示”をする大切さを知ってほしい」とメッセージを送る。
神里准教授らが発表した調査結果に、ノンフィクションライターで記者の石戸諭氏は「最後は家にいたいと思う患者は少なくない」と述べる。
「人工呼吸器やECMO(人工肺装置)を使った治療は、最高レべルの治療だ。ただ、個人個人にとって、その治療が“最良”にならない場合も起こり得る。過去、在宅診療に取り組む医師たちを取材したが、在宅診療、入院して高度な医療を受けることの双方のメリット、デメリットを説明すると『重症化しても、入院ではなく在宅で治療したい。最期は家にいたい』と考える患者さんは少なくなかったと話していた」(以下、石戸諭氏)
人工呼吸器やECMO(人工肺装置)は、身体にも負荷がかかり、鎮痛剤などの作用で意識レベルはコミュニケーションできないほどに下がる。これを踏まえ、石戸氏は「在宅で治療を受ける選択肢は常に用意されるべき。選択の機会は奪われるべきじゃない」と話す。
「研究者の努力によって知見も広がってきて、新型コロナに感染するとハイリスクになる人たちの特徴が分かってきた。自分の意志でどのような最期を迎えたいのか、特にハイリスクに当たる人は家族や周りと話し合っておくほうがいい。新型コロナは重症化すれば、意思表示は難しくなる。人工呼吸器をつけるのか、つけないのか、どこまで高度な医療を望むのかを家族も慌てている状況で判断することになる。これは、新型コロナに限らず、常に家族で話しておくべきことだとも言える」
今月、日本国内で新型コロナによる死者は累計1万人を超えた。今月中旬からは大阪などを中心に増加傾向が続き、未だ収束の糸口は見えていない。いざというとき、自分がどのような医療を受けたいのか、健康のうちに家族と話をしておく必要がありそうだ。
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