順位戦A級というトップ棋士ながら、出てくるコメントは実に自虐的だった。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Bリーグの第1試合、チーム糸谷とチーム菅井の対戦が5月1日に放送された。チーム糸谷のメンバー山崎隆之八段(40)は、早指し戦に定評があり、今期から初の順位戦A級参加という上り調子の棋士。ただ、その口から出てくる言葉は、低姿勢よりもさらに低い位置からのネガティブなものが多数。思わず視聴者からも笑いが起きることとなった。
山崎八段と言えば、タイトル歴こそないものの、早指しによる一般棋戦で多数の優勝歴がある。またテレビやイベントでの出演も多く、そのトーク力からも人気を博している棋士だ。勝負師が集まる将棋の世界にあって、珍しく自虐的なコメントも多く、そこがまた魅力だというファンも多い。
過去、2回出場した同大会では、プレッシャーもあってか本来の力を出せず、今年の大会前にはバンジージャンプまでして精神を鍛え直した山崎八段。さぞ強靭なメンタルを培ってきたかと思いきや、やはり簡単に性格は変わらなかった。第1局で深浦康市九段(49)と対戦する前には「骨を拾ってください」と、いきなり玉砕覚悟。勝利を収めたものの、最終盤に大逆転を喫しそうになるヒヤヒヤな展開から、対局後にはリーダー糸谷哲郎八段(32)に向かって「いやいやいや、恥ずかしい。自分でもチキンだなと思う手をいっぱい指したにも関わらず、最後あんなスリルを味わうなんて…」と、確実に勝ちに行った手で窮地に陥った自分を反省した。さらに糸谷八段から「連投します?」とイジられると「え、今のチキン将棋を見て…?」と戸惑っていた。
早々に飛び出した自虐トークに、ファンもいきなり反応。「ガッチガチww」「さすが山ちゃんは楽しませてくれる」「自虐w」「ぴよ将棋w」と、ツッコミ大会さながらの盛り上がりを見せた。
さらに自虐語録は続いていく。今回の対戦の決定局となった第7局は糸谷八段と、菅井竜也八段(29)というリーダー対決。独特な指し回しが光り、早指しでもある糸谷八段が、珍しくじっくりと考えている様子に、チームメイトの服部慎一郎四段(21)へこう切り出した。
山崎八段 やっぱり我々と違って警戒されてますからね。
服部四段 何がですか?
山崎八段 糸谷さんが菅井君のこと強いと思っているから、慎重になってますね。
服部四段 あー…。
言い換えれば、自分は強くないから糸谷八段と戦ったとしても警戒されないという意味のやりとり。とはいえ、山崎八段も先述のとおり、今期からA級に参加。糸谷八段、菅井八段と公式戦の場で戦うことになっている。このネガティブ思考を持った一流棋士が、この後にどんな棋譜と名(迷)言を残すのか。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)