将棋界の“忍者ハットリくん”が、まさに忍者らしくとんでもない脱出ルートを見つけ、逆転勝利をもぎ取った。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Bリーグの第1試合、チーム糸谷とチーム菅井の対戦が5月1日に放送されたが、ここで周囲の棋士たちを驚かせたのが新鋭・服部慎一郎四段(21)。チーム糸谷のメンバーとして大会に初参加すると、積極策・慎重策を織り交ぜ、先輩棋士たちにひるまずぶつかっていった。中でもきらめいたのが、ぎりぎりのところで受け、抜け出した一手。これには先輩棋士から「助からないと思っても助かっている」「ホントですか!?」と興奮が止まらない言葉が飛び出した。
服部四段は2020年4月に四段昇段。プロ入りから1年が経ったばかりの新鋭だ。その名前と独創性のある棋風から、自らも「忍者」と名乗り、文字通り将棋界の“忍者ハットリくん”だ。将棋にも「手裏剣を飛ばす」といった言葉があるが、この日服部四段が見せたのは、巧みな脱出術。第5局でベテラン深浦康市九段(49)と対戦すると、序盤からはっきりと形勢を悪くした。
解説していた石井健太郎六段(29)が、服部四段の受けの手順に「危なすぎますね。怖いというか、普通はもう助かっていない気がします」と、早々決着がつくだろうと語っていたところ、さらに服部四段の手は予想外の方向に。受けの手で銀を打たざるを得ない場面で先輩2人とは異なるものを選ぶとリーダー糸谷哲郎八段(32)が「助かってないでしょ、これは」とさじを投げかけたが、これに山崎隆之八段(40)が、かつて大山康晴十五世名人が用いたのと同じ「助からないと思っても助かっている」とコメント。糸谷八段は信じられないとばかりに「ホントですか!?」と声を張った。
この時点で、山崎八段がどこまで読み切れていたか不明だが、既に忍者の脱出劇が始まっていた。▲7八飛という一手が想像以上に服部陣の耐久力を上昇させ、深浦九段も寄せに手こずる状況に。石井六段が「これが詰まないのはすごいですね。これで受かってるのなら(深浦九段は)こんなはずじゃなかったのにっていう感じですね」と語ると、これを聞いた糸谷八段も「これ詰まないのは、でかすぎるぞ!」と、またも声を張った。瞬間的には誰も見えていなかった脱出ルートが、服部四段には見えており、ここから形勢は一気に逆転。105手で勝利を収めた。本人は「序盤にうっかりがあって、だいぶ悪くなった。最後はうまくやれたと思います」と、充実感に浸っていた。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)