10年間のアイドル活動に幕―「LinQ」吉川千愛“卒業”から考える、芸能人引退後のキャリア
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「LinQ、吉川千愛のアイドル人生に幕を降ろしました。会場に来て下さった皆さま 配信で観てくださった皆さま 本当にありがとうございました!! さぁ、新しい未来に向かって歩き出すぞー!!」(吉川千愛さんのInstagramより)

 先月25日のライブをもってグループから卒業した福岡を拠点とするアイドルグループ「LinQ」のリーダー、吉川千愛さん。2011年4月のグループ結成からおよそ10年にわたり、中心メンバーとしてLinQを支え続けてきた。

【映像】「10年のアイドル人生 幸せでした…」ファンへの思いを書く吉川さんの姿

 結成10周年という節目での大きな決断。ニュース番組「ABEMAヒルズ」では去年、卒業発表直後の吉川さんに卒業に対する思いを聞いていた。

「10年間アイドル活動をしてきて、自分の中でも10年って節目だなって感じるところもあった。メンバーも『一期生からLinQを支えてくれてありがとう。そういう気持ちで心から背中を押して送り出したい』と言ってくれて、本当にうれしい」

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 参加者1000人を超えるオーディションをくぐりぬけ、16歳という若さで飛び込んだアイドルの世界。右も左も分からない吉川さんのアイドル人生を支えたのは、ファンとメンバーの存在だった。

「ファンのみんなの応援が本当に一番で。今は少人数で6人体制ですが、大人数でいたときは、何人もいる中の私を選んでくれたそのファンの人に『すごく嬉しいという気持ちをちゃんと伝えよう』と思っていた。応援が本当に心の支えになった」

「メンバーが支えてくれたのが本当に一番大きかったと思う。卒業していったメンバーから『千愛がこれからのLinQをつないで頑張っていってほしい』と1対1で伝えてもらった。最初はくよくよしていたけど『私がやらなきゃいけない』という決心に変わった」

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 ゼロからのスタートだったグループ結成から10年。30人以上いた同期メンバーも今ではわずか2人になっていた。27歳にして迎える“セカンドキャリア”を前に、吉川さんは卒業についてどのように考えているのだろうか。

「普通に一般の会社で働く子もいれば、LinQの事務所で働く元メンバーもいる。(元メンバーを見て)芸能人じゃなくても、芸能に携わる関係でこの世界を支えることができるんだと、今までの10年で感じることもあった。笑顔で花道を作ってもらうことが、本当に幸せな卒業なんじゃないかと思った。悲しい別れには絶対にしたくないなって」

 吉川さんは、今後は裏方として、陰ながらグループを支えていくという。

■ 夢を諦めることは人生を諦めることではない 芸能人の“セカンドキャリア”支援会社


 年齢問わず、誰もがチャンスをつかむことができる職業・芸能人。ただ、脚光を浴びる一方、そのスキルの特殊さゆえに芸能界卒業後、第二のキャリアがうまく築けない“セカンドキャリア”の問題もある。

 株式会社「俺」は、そんな“元”芸能人を支援する会社だ。株式会社俺では、芸人を中心に転職支援のサービスを行っているが、先日は元アイドルの女性が相談に訪れたという。

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「最初に問い合わせいただいたときは『何も分からないので助けてください』と、そういう雰囲気が見えた。おそらく、転職に対するハードルや難しさがそもそもわかってない印象でした。就職先の企業さんをご紹介する中で、こんな方々が働いてるんだと知ったときに『ちょっと自分大丈夫かな』と。(転職活動の中で)壁を感じていらっしゃった」(以下、杉山さん)

 慣れない転職活動に戸惑っていたという元アイドルの女性。しかし、杉山さんは彼女を支援する中で、アイドル特有の“応援してもらうスキル”に驚いたという。

「周りの助けを得てやりきるところが、すごく能力として高いのかなと思いました。僕らも支援してる中でパソコンの練習で課題を出すことがある。それを周りの人にちゃんと『自分はパソコンが苦手』と自己開示した上で、期限までにやりきった。自分の力だけじゃなくて、周りの力を借りながらしっかりやれる。応援してもらうスキルも高いんだなと思った」

 「夢を諦めたが、人生を諦めてない人に」をコンセプトに、転職支援を行う「俺」。会社設立のきっかけは、かつてお笑い芸人として活動していた中北社長が芸人を引退した後に感じた“ある違和感”だった。

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「僕が実際に転職活動している中で、ある人材紹介の会社から『あなたに紹介できる会社はほぼないよ』と言われたときに、『人生を諦めさせるようことを言われるな』という違和感があった。芸人の夢を諦めて、さらに転職先もない。夢を諦めたけど、人生を諦めていない人達のために、何ができることはないか。そう思って立ち上げた」(以下、中北さん)

 自分と同じ思いをしてほしくないという理由から会社を立ち上げた中北さん。中北さんは芸能人のセカンドキャリアについて、ビジネスマナーなどの課題はあるとした一方、芸能界にいたからこその強みもあると話す。

「例えば100名の方に向けて自分のパフォーマンスをずっとやってきた中で、1対1の営業で商品の良さを伝えれないはずがない。目標に対して逆算してPDCAを回す思考に長けている方が多いので、ビジネスに生かせないはずはないと弊社では思っている」

 また、セカンドキャリアで失敗しないためには、芸能活動などのファーストキャリアで後悔を残さないことも重要だという。

「自分が『やり切った』と思ってない限り、次のキャリアに一歩踏み出せない。本当に本気で(芸能活動を)辞めるんだと。覚悟はすごく重要ですね」

■ 社会人として自己発揮していくために 芸能人の‘‘キャリアカウンセリング’’の意義

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 密着したニュース番組「ABEMAヒルズ」のコメンテーターで、キャリアに悩む現役芸能人や元アイドルのカウンセリングを行っている臨床心理士の藤井靖氏も「現役時代にキャリアカウンセリングを受けられる機会があるといい」と話す。

「長年、経験を積み重ねれば技術やパフォーマンスは上がっていく。アイドルに限っては20代後半になると辞める流れがあって勿体ないなと思うが、現状はピークが10代から20代前半の短期集中型の職業だ」

「そんな中で、個人の鍛錬や努力だけで大成できる世界ではないにも関わらず自分の存在価値を問われ続けることが多いことに加えて、正社員などと違って休んでも給料が入ってくるという仕組みがあるわけではなく、また会社員が転職するように簡単に所属先を変えることもできない。そのような精神的負担も大きい環境の中で、人生の先を見据えて考える余裕も時間もないことが多いと思う」

「アイドルや芸能人の方は夢を売る商売とも言われる。本人たちも夢や目標を持ってやっているだろう。しかしそこへの近づき方は意外と誰も教えてくれないし、本質的には自分で見出すしかない。自分の強みをどう活かすかも含め、キャリア教育やカウンセリングがいきる場合もあるだろうし、心理的な充実は日々のパフォーマンスの向上にもつながりうるので、所属事務所にとってもメリットがあるのでは」

 また、事務所や芸能人同士のつながりだけでなく、別の職業を知って、長い目で「横のつながり」を広げておくことも重要だという。

「待遇改善やキャリア形成に役立つような同業者による組合があってもいいと思うし、他の業界とのつながりを持つことで社会人としても成長できたり、実際にセカンドキャリアに結びつく事例もある。また逆に、今自分が置かれている環境により価値を見出せるということもある」

 夢に区切りをつけ、セカンドキャリアを踏み出す芸能人たち。「LinQ」を卒業した今後の吉川さんにも期待だ。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

【映像】アイドル卒業後の“第二の人生”
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