施行から8年が経過も現場に浸透しない「いじめ防止対策推進法」…立憲・小西洋之議員「現場が法律を学んでいない」
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 北海道旭川市の公園で3月、当時中学2年生だった女子生徒が凍死しているのが見つかった事件。学校側が当事者などから聞き取りを行った結果、“いじめに該当しない”と判断していたというが、市の教育委員会などによると生徒と複数の中学生の間にトラブルがあったことがわかっているといい、『週刊文春』による報道などを受け、市では学校の対応に問題はなかったかなど、第三者による調査を行うことを決定した。

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 2013年9月に「いじめ防止対策推進法」が施行されて以降も繰り返されてきた学校、そして教育委員会によるいじめへの不適切な対応。6日の『ABEMA Prime』では、同法の制定にも関わった立憲民主党の小西洋之参議院議員に話を聞いた。

 実は近年、いじめの認知件数は2012年を境に増加傾向にある。このことについて小西議員は「いじめ対策として、この傾向そのものはとてもいいことだと思っている」と話す。

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 「やはり隠蔽等が繰り返される背景には、教職員たちの中に“自分たちの学校でいじめが起きるのはマイナスの評価になるのではないか”という考え方があるからだ。文科省の調査に対しても、当初は“いじめゼロです”と報告してくる学校があったが、“いや、子どもが集まっている限り、ゼロということはないはずだ。いじめがあったからといって評価を下げるわけではないし、むしろ子どもや保護者からの相談・通報を漏れなく拾ってくれ”と言った。その結果だ。

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 2011年の大津事件を契機として2013年に超党派で作った『いじめ防止対策推進法』も、いじめは起きうるものであって、起きたこと自体にマイナス評価はしない。そして、予防、早期発見のための取り組み、そしていじめが起きた時に必ず子どもを救い出すとともに、いじめの原因や加害者に対するケアをすることをプラスに評価するという考え方だし、そのために学校は何をしないといけないのか、ということが書かれている」。

 では、その「いじめ防止対策推進法」、文部科学大臣の「教育方針」の具体的な特徴はどのようなものなのだろうか。

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 「要となる2つの仕組みがある。1つは全ての学校に、複数の先生や地域の大人、そして専門家が参加できる『いじめ対策委員会』を設置するというものだ。つまり問題を担任1人、あるいは管理職だけに任せず、複数人の力で子どもを救い出す。これはアメリカで行われている対策を取り入れた。また、いじめを撲滅することはできないが、クラスや学校において起こしにくい文化・環境を作っていくことは可能だという考えに立ち、毎月いろんな教科の中で防止のための授業を行っていく。これはイギリスで行われているものを取り入れた。この2つを持っている法律というのは世界で日本のいじめ防止法だけだ。

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 そして、この法律をもとに平成27、29年に出したのが、『基本方針』だ。そこには、『いじめ対策委員会』の存在を子どもたちも知ることができる形で活動させなくてはいけないと書いてある。先生たちが本気で取り組んでいる姿を見せることが予防にもつながるし、何よりも“先生たちがチームを組んで守ってくれるんだ、救ってくれるんだ”と早期発見の相談窓口として期待してくれるようになるからだ」。

 その上で小西議員は、施行から8年を迎える「いじめ防止対策推進法」が現場に浸透していない」と指摘する。

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 「教育評論家の尾木直樹先生も、文部科学大臣の教育方針と併せて、世界でも最高水準の仕組みだと言ってくれていた。しかし、それが学校現場に浸透していないという現状にある。第三者委員会の設置が遅れたり、その人選が偏ったりする問題も含め、国会議員として慚愧の極みだ。やはり率直に言って、教育委員会や学校の先生方は、ちゃんと読んでいない。あるいは読む機会がない。その後、文科省も通知を出すなどしているが、根本的な解決はできていない。『いじめ対策委員会』に関しても、ご存知ないとか、一部の管理職の先生だけで構成され、担任の先生が入っていないといった致命的な欠陥のある状況に陥っている。それを2018、19年の法改正でやろうとしたが頓挫してしまっているのが現状だ」。

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 一方、2019年4月、その改正案の議論の過程では、検討されていた「いじめを放置した教員の懲戒処分」「学校側がいじめ防止の基本計画を策定」といった部分が削除され、座長を務めた馳浩議員が「自治体の財政状況や地域の実情を考慮し、教員を威圧するような表現は控えた」と説明したことに対し、いじめ自殺被害者の遺族からは「一体どちらを向いて法律を作っているのか」批判の声が上がった。

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「馳浩先生は文部科学大臣を務められた自民党の重鎮だし、超党派の法改正チームを作ってくださった方だ。私も立法時、事務局次長として馳先生をお支えする立場だった。いじめによる自殺事件などの重大事案の報告書を何十冊も読み込んで、法律が機能しない理由を分析し、事務局案を作った。それを基に校長会にヒアリングしたところ、”条文が細かすぎる”などの批判をいただいたことから、法律を成立させるためという大局的な見地から、馳先生が座長試案を作られたということだ。

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 もともと事務局で用意していた条文は、すでに制度化されている『基本方針』の肝であって、実のところ、上乗せされた部分はない。それでも、ある校長会の会長さんに“うちの学校はいじめゼロだ。文科省が調査をしろと言ってくるのが迷惑だ”というようなことをおっしゃった。私も公立の小中高の出身者だが、いじめがない公立校なんてあるわけがないと思っていたので、びっくりした。そういうことをおっしゃる方、しかもそれが校長会の会長になるくらいの方だ。いじめに遭った子どもたちや我々と、学校現場との意識には差があると思う」。

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 数多くのいじめ問題に携わってきたT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚氏は「認知件数が増えていること自体は大きな問題だとは思わないが、やはりまだ氷山の一角しか出ていないのではないかと思う。僕のところに来るようなケースの場合、初動からミスが発生しまくっていて、その隠蔽に走った先生のものや、“子どもたちが怖い”という空気みたいなものに取り込まれてしまっている先生のものが多い」と話す。

 「もちろんちゃんとやっている先生もいるし、非常に忙しいということもあるので、一概に全ての先生がそうだとは言えないが、『いじめ防止対策推進法』は条文がそんないっぱいある法律ではないし、いじめの定義ぐらいは覚えておけよと思うことが多い。僕が現場に行く時にはiPadに入れたスライドで説明してから始める。それをしないと、基本的な知識の部分で揉めて、話が進まないことがあるからだ。やはり子どもの命が関わっている以上、もう少し法律にも向き合ってほしい」。

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 両親、おじ、さらに妹が教員だという慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「いじめは全てが個別案件なので、起きた背景を調べて、解決して…というのはマニュアル的な対応では難しい。学校の先生の人手不足の問題、仕事や部活に追われて時間がないという状況を改善し、いじめの対応にも時間が割ける状況にしなければならない。

 また、場合によっては先生自身も第三者とは言い切れない案件もある。教育委員会というのは本来そのためにあるはずだが、政治からの介入を受けないように作られてきた歴史もあり、ガンガン言っていくことの難しさもある。それでも現職の先生たちの異動先でもあるし、人員も確保されているはずなので、現場を厳しく改善できる組織にするためのテコ入れは必要だ」と訴えていた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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