新型コロナウイルス感染拡大の収束が見えない中、東京オリンピックをめぐる競泳・池江璃花子選手のツイートが話題になっている。
4都府県の緊急事態宣言の延長が決定した7日夜、池江選手は今の思いを連続でツイート。SNSで寄せられる「辞退してほしい」「反対に声をあげてほしい」という声に対して、次のように綴った。
「もちろん、私たちアスリートはオリンピックに出るため、ずっと頑張ってきました。ですが、今このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事だと思っています。私も、他の選手もきっとオリンピックがあってもなくても、決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけだと思っています。」
「私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません。ただ今やるべき事を全うし、応援していただいてる方達の期待に応えたい一心で日々の練習をしています。オリンピックについて、良いメッセージもあれば、正直、今日は非常に心を痛めたメッセージもありました。この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです」（池江選手のTwitterより一部抜粋）
池江選手が明かした「とても苦しい」という思い。BuzzFeed Japan News副編集長の神庭亮介氏は「選手個人にそういった声をぶつけるのはお門違いだ」と指摘する。
「五輪開催について反対する、おかしいだろうと声をあげるのは全然悪くない。何がなんでも五輪優先という政府の方針が見え隠れしているし、ワクチンを選手に優先接種するという話まで出ている。『五輪はやるのにお店は閉めないといけないのか』とうっ憤がたまっている人も多いと思う。ただ、それを池江さんや選手にぶつけるのは筋が違う」
東京オリンピックの開催をめぐっては、賛成か反対か署名を集める動きもある。弁護士の宇都宮健児氏は、「感染拡大に歯止めがかからない現状では医療もさらにひっ迫し、生活困窮者が増加」「五輪中止で利用可能となった資源を人々の命や暮らしを守ることに使おう」として、開催中止を求める署名を6日に開始。10日時点で31万人超が賛同している。
一方、評論家の竹田恒泰氏は7日、開催賛成への賛同を求める署名を開始し、10日時点の賛同者は約3.6万人。「SNSで池江璃花子選手に『五輪中止』や『反対』の声を上げるべき、との書き込みが溢れたことを知り、五輪開催賛成の署名をすることを決めた」と説明している。
神庭氏は、こうした議論で池江選手を引き合いに出すべきではないと苦言を呈した。
「賛成派も反対派も、池江さんという存在を祭り上げて、自分の陣営に引き入れたいだけなのでは。賛成でも反対でもどちらでもいいが、主語は“自分”に置くべき。『私は賛成』『私は反対』と言えばいいのに、なぜ『池江さんは』と言いたがるのか。ネットでは“社会は”“世論は”といった『大きな主語』ばかり使っていると、『本当はあなたがそう思っているだけでしょ』と批判を浴びるが、これも同じようなこと。賛成派も反対派も、池江さんという『きれいな主語』に自分の主張を紛れさせようと躍起になっている。その争奪戦は見苦しいし、うんざりする」
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