エルサレムにあるイスラム教の聖地「アルアクサ・モスク」。聖地の敷地内からパレスチナ人らが石などを投げる一方、イスラエル側はゴム弾や催涙弾を発射して混乱状態となった。赤新月社によると、パレスチナ側だけでも178人がけがをしたという。
衝突の原因とされているのが、東エルサレムに土地を持つパレスチナ人の家族に立ち退きを迫る裁判などによる、感情の対立。ただ、不満の原因はそれだけではないというのが、国際政治学者の六辻彰二氏だ。
「報じられているように、ユダヤ人の入植者の権利が認められた判決が出たということに対する不満が、直接的な引き金になったようではある。ただ、いろいろな不満がパレスチナ側にはあって、その一つとしてあげられるのがコロナワクチン。パレスチナ側でほとんど接種が進んでいないという現状への不満があると思われる」(六辻氏、以下同)
イギリスのオックスフォード大学の集計では、接種率が60%を超え、ワクチン接種の成功例として紹介されるイスラエル。屋外でのマスク着用義務が解除されるなど、かつての日常を取り戻しつつある。
その一方で、パレスチナではほとんど接種が進んでおらず、この“ワクチン格差”がパレスチナ側の不満を増大させているというのだ。
「実態として、パレスチナを実効支配しているのはイスラエルであって、イスラエルが占領政策を行っている以上、イスラエル側が占領地の人々の医療や保険に関する責任を負うべきとみてもいいんじゃないかと思う。イスラエル側はパレスチナ暫定政権が責任を負うべきだと言うが、それをできなくさせているのはイスラエル側なので、都合よくそこを押し付けている」
その結果、パレスチナはWHOからのワクチンの支給を待つしかない状況に。六辻氏によると、そのワクチンも人口の1%前後分しか届いておらず、周辺をイスラエル軍が囲むガザ地区に関してはより物資の輸送が制限されている状況になっているという。
イスラエルは自国民に対しては世界最速でワクチン接種を進める一方、占領するパレスチナにはワクチンを供給しておらず、国際法違反であると世界的に批判を浴びた。
「(イスラエルは)まったく無反応というわけでもなく、最近だとパレスチナにワクチンを多少送ると。5000回分くらいで、焼け石に水というレベル。国民向けのワクチン接種率では、たしかに世界一なんだと思う。アラブ諸国に囲まれて、四六時中危険と背中合わせの国ということもあって、危機管理能力は非常に発達しているので、コロナという危機に対しても国民の健康を守るという意味ではスピーディな対応をしていると思う。ただ、それはあくまで『国民』に限定した話であって、イスラエル国内にいるパレスチナ人とかイスラエルが占領しているパレスチナ自治区に関しては話が別ということ」
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