丸川男女共同参画担当大臣が11日、会見を行い、全国のワンストップ支援センターに寄せられた性暴力や性犯罪の相談件数に言及した。
【映像】マッチングアプリで性被害も「素性の知らない相手を安易に信じないで」
「性犯罪、性暴力はもとより許されるものではございません。被害を受けた直後だけではなくて、長い時間、傷が癒えずに苦しみが残っていくものであると示唆していると（結果を）受け止めております」（丸川大臣）
令和2年度において、全国のワンストップ支援センターに寄せられた性暴力や性犯罪の相談件数は5万1141件。前年度からおよそ2割上回る結果だった。また、月別の相談件数では3月の5291件が最多となっている。
相談件数が増えた理由について、丸川大臣は新型コロナウイルスの影響による在宅時間の増加や、過去に受けた被害を相談するケースが増えたことに加え、マッチングアプリなど、インターネットを通じた被害の件数が増えたと明かしている。
性暴力や性犯罪などの相談を10年前から行っているNPO法人・レイプクライシスセンターの代表・望月晶子弁護士は、マッチングアプリなどで出会い、被害に遭う相談が増えているという。
「特に最近はなかなか実世界で人と接することが減っているからか、アプリで人とのつながりを求められているように感じる。まったく素性が知れない人と会って、被害に遭うという相談は増えている」
マッチングアプリの普及によって、以前よりも増えた出会いの場。望月弁護士は、ネットを通じた性暴力の被害に遭わないために「一人一人がネットリテラシーを身につけることが必要だ」と話す。
「今の時代、ネットで知り合うのは当たり前になっていて、教育などで（ネットを通じた出会いには）危険があると知ってもらうことが必要。ネットの出会い自体を否定するわけではないが、相手に関する情報がそもそも本当かどうか分からない、相手がどういう人なのかも分からないのに、安易に信じることが危険。そこを考えないで安易に乗り越えてしまっている」
現在、性暴力などの被害で悩む人たちに向けて望月弁護士は「自分を責めることなく、いち早く相談をしてほしい」とコメント。「被害者は必ず自分を責めてしまう。（素性の知らない相手に）会って被害に遭うと『なんであんなことしちゃったんだろう』と被害者のみなさんが思う」と語る。
「あなた（被害者）は何も責められる必要はない。何も悪くはない。悪いのは100％加害者。そこは自信を持って、恥ずかしがったり自分を責めたりしないで、私たち相談機関や警察にどんどん相談してください。とにかく早く相談するということが不可欠です」
■ 危険な“強姦神話”に臨床心理士が警鐘「被害者に非はない」
病院や学校などで青少年の心のケアを行っている臨床心理士の藤井靖氏は「圧倒的に女性の被害者が多い」とコメント。コロナ禍で在宅時間が増えたことで家族からの被害が増えたり、経済的困窮に基づく金銭的対価を目的としたネット上のつながりから及ぼされる被害も多いことを指摘しつつ、と望月弁護士と同じく「悪いのは加害者」と断言した。
その上で藤井氏は性被害における“強姦神話”に警鐘を鳴らす。
「性被害に対する認識や考え方が歪みは“強姦神話”とも表現される。加害者や第三者が『大したことないでしょ』『元々仲のよかった関係性の中で起こったことだからそれは性暴力ではない』『必死に抵抗すれば防げたはずだ』などと誤った認識を持っていることも多いが、一方で被害者も非がないのにもかかわらず『原因は自分にもある』と考えたり、ドラマなどを見て『これと比べたら、自分が受けた被害はまだ軽いんじゃないか』と思い込んでしまったりする。そうすると、自分が被害を受けているにもかかわらず『相談しよう』『解決しよう』という行動に結びつかない」とし、
「そのためカウンセリングの中では、『人と比べてどうということではなく、あなたにとって苦しかったり辛いということであれば、それは被害状況があるわけなので、どうすればいいか一緒に考えていきましょう』というところから始めていくことも多い」と説明した。
コロナ禍で増加する性被害の相談件数。丸川大臣は会見で問題の背景に目を向け「検討を進めていきたい」と述べている。
この記事の画像一覧
