5月16日に開催された無観客大会『RISEonABEMA』のメインイベントは、3分5ラウンドをフルに使った緊張感のある闘いになった。
RISE QUEENミニフライ級タイトルマッチ。チャンピオン寺山日葵に挑んだAKARIは17歳の新鋭で、2019年のデビュー以来全勝で挑戦権を掴んだ。RISE QUEENの「赤いベルト」は小さい頃からの憧れ。師匠・神村エリカが巻いたベルトだ。その想いの強さから、試合が決まると寺山を「器じゃない」と挑発してもいる。
対する寺山も絶好調だ。昨年秋は強豪が集結したトーナメントで優勝。安定感が増した印象がある。
手足の長い両者の対戦は、距離が大きなポイントとなった。圧力をかけたいAKARIに対し、寺山は足を使う。蹴りの攻防から始まりパンチの打ち合いも見られる中、両陣営のセコンドも指示をしながら闘っていた。AKARIのセコンドには神村、寺山には那須川天心がついていた。
持ち味を出し合うというより隙を見せられない展開。それでも全体に手数が多く、主導権を握ったのは寺山だった。判定は3-0。49-48の接戦だったが寺山の防衛だ。RISE伊藤隆代表の言葉を借りれば「(くぐってきた)修羅場の差」。寺山も勝因は経験値だと語っている。
逆にAKARIは若かったというしかない。インタビュースペースでは「持っているものを出し切れなかった」と涙を見せた。この悔しい経験がAKARIの何を変えるか、ここからどう成長するかにも注目したい。スリップと判定されたものの、最終5ラウンドにはパンチで寺山を転倒させている。やはり底力があるのだ。勝った寺山も内容には満足していない。
「テーマだった“圧勝”ができなかった。嬉しさ5%、悔しさ95%です」
それでも、泣いて反省の弁ばかりを口にするのではなく「課題があるということは伸びしろがあるということなので」と語ることができるのが今の寺山だ。曰く「今年は前向きにいこうって決めてるので」。
言ってみれば開き直り。それができるのも精神的にタフになったからだ。勝たなければ5%の嬉しさすらもない。そういう世界で生き残り、ベルトを守り続ける強さを、寺山は身につけている。
文/橋本宗洋