長引くコロナ禍で、疲弊していく経済。感染拡大防止とともに、その経済をどう立て直すかが今後の大きな課題として立ちはだかっている。
世界的なテーマとなっているコロナ禍からの復興で、カギになるとされているのが、近年何かと話題になっている「環境」。いったいどういうことなのか、環境問題に取り組む企業や団体などが集まり発足し、政府に対する提言や意見も行う気候変動イニシアティブ(JCI)の田中健氏に聞いた。
「コロナによって、世界各地で非常に大きい経済的な影響を受けている。『グリーンリカバリー』という考え方があって、コロナ禍が終わって回復していく中で、コロナ前の経済状況や(温室効果ガスの)排出状況にそのまま戻るのではなくて、より良い形で環境対策と両立するような形で戻っていくことが望ましいという考え方」
いま、経済復興のための合言葉として注目されている「グリーンリカバリー」。環境を重視した投資などによって、温室効果ガスの削減をはじめとする脱炭素社会を目指すもので、投資による刺激で経済が回復し、そのうえでクリーンなエネルギー社会が実現するという考え方だ。西村経済再生担当大臣による今年1月の経済演説でも、環境を軸にした経済成長について触れられていた。
いま、先進国を中心に世界各国がグリーンリカバリーを意識した対策を相次いで打ち出している。アメリカでは、バイデン大統領がインフラ整備やクリーンエネルギーなどへの2兆ドルもの投資計画に賛同するよう呼びかけ。イギリスでは去年11月、「グリーン産業革命」を発表し、総額120億ポンドもの投資によって最大25万人の雇用創出を目指すことなどが盛り込まれている。さらに民間企業では、Amazonが初のサステナビリティ―債を発行し、10億ドル(約1090億円)を調達。再生可能エネルギーやクリーンな輸送手段などに投資するとしている。
田中氏は「これからコロナ禍を越えて、日本も含めて世界は回復していくわけだが、環境対策をより前に進めた形でコロナから回復することが非常に重要」だとした。
日本人にはまだ馴染みのない「グリーンリカバリー」という言葉。環境活動家の露木志奈氏は「環境活動をしている自分としては、コロナが始まったぐらいから知っていたワードだが、やはり知れ渡っていないのが現状だと思う」とした上で、「Amazonなどの民間企業でもこういう動きがあるということは、日本国内だけではなく海外とのつながりがあるビジネスは対策をしていかないと、今後の経済成長にとってもダメージが出てくると言えると思う」との見方を示す。
これまでにも金融危機や自然災害などで経済が止まった際、二酸化炭素の排出量は減ったものの、その後の再開で“リバウンド”する事例が繰り返されてきたという。「なのでグリーンリカバリーが大事になってくるという話になっているのではないか」。
では、日本にはどのような対応が求められるのか。露木氏は「政府や企業の対策も必要だが、それでは消費者一人ひとりがやっていくことは変わっていかないと思うので、毎日の選択、選ぶものに目を向けて欲しい」と訴えた。
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