コロナ禍で、急速な普及を見せるリモートワーク。時には自宅、時にはオフィス、さらには観光地と、時間や場所にとらわれない新しい働き方が今や当たり前となっている。
そんな中、リモートワークの究極系とも言える働き方をしている重城聡美さんに、『ABEMAヒルズ』は話を聞いた。
株式会社RevCommで、プロダクトオーナーとして働く重城さん。彼女は日本から約5000キロ離れたシンガポールに住みながら、日本企業の社員として働いている。いま重城さんのように海外で生活しながら日本の企業に勤める「越境ワーカー」が増加しているという。
「元々シンガポールに住んでいて、夫も子どももシンガポールにいる状況。転職活動をしようと思った時に、日本の会社にシンガポールから働いてもいいのかなと思って」(重城さん、以下同)
2年前、家族とともにアメリカからシンガポールへと移住した重城さん。シンガポールの企業を経て去年7月、人工知能を使った音声解析サービスを提供する日本の企業、RevCommに入社した。きっかけとなったのは、出産によるキャリアの中断だった。
「シンガポールにオフィスのある会社に転職したんですけど、その後に出産を機に辞めないといけないことになってしまって。キャリアを中断した後に、シンガポールの会社で現地採用で働くのか、日本の会社で遠隔で働くのかどちらがいいのかなと考えていて、その時に声をかけてもらったRevCommで働きだしました」
気になるのはその働き方。現在、重城さんはシンガポールの自宅からフルリモートで勤務し、日本にいる同僚とは一度も対面で会ったことがないという。だからこそ、日々のコミュニケーションには人一倍の工夫を凝らしているそうだ。
「これまでの転職の中で、自分の会社の人に誰一人対面で会ったことがないというのが初めてで、最初は不安もありました。1対1でミーティングをする時にあえて雑談を挟んでみるとか、チャットと併用してオンライン越しで対話することは心掛けています」
一見いいごと尽くしにも聞こえる越境ワークだが、国境を超えることで、ビザを取得したり税金の納め方を調べたりするなど複雑な事務手続きも必要になり、それらは自分の責任で行わなければならないと重城さんは話す。
「デメリットとしては、国を超えるとなると事務手続き的なところとか、ビザとか税金とかそのあたりの面倒くささはありますよね。そこをどう担保するのかとか、どういう風に税金を納めるのかとか、ビザ的に大丈夫なのかとかは自分の責任でやるしかない。自分の力でやっていけると思えるのであれば、国を超えたリモートワークは楽しいなって思います」
いまは自宅で働きながら、隙間時間で子どもと遊ぶ毎日だという重城さん。家族との時間を大切にしながら、ライフステージの変化に合わせてより柔軟な働き方をしていきたいという。
「普段会社で働いていて、何回かミーティングをしているのに私がシンガポールにいるのを知らなかったという人もいます。それが当たり前のこととして、夫の仕事が違うところになったから私も(夫と)一緒に行って、でもこれまでと同じように働けるなんてことも普通にできるんじゃないかなって思っています。理想的な働き方としては、自分のプライオリティーとかやりたい働き方を柔軟に対応できるようにしたいです。仕事に打ち込みたい時は打ち込めるし、家族と時間を過ごしたい時は過ごせるという風にできるといいなと思います」
重城さんが勤務するRevCommでは現在、従業員の約2割が遠隔地からフルリモートで勤務。重城さんの越境ワークを受け入れた會田武史社長によると、勤務地を問わず働けるようになることで多種多様な人材を採用できるメリットがあると話す。
「物理的な空間を共有しなくていいという話があるので、世界中どこにいたとしても優秀な仲間を迎え入れることができる。潜在的な採用の可能性というのはすごく広がると思っています。いろんな環境で育ってきた多様な仲間が少しでも多くのコミュニケーションが豊かな社会を作るという、我々のミッションを実現すべく頑張る体制が作れるというのは僕自身がすごくワクワクしますし、そのワクワクを社会に還元できるのかなという風に思っています」(會田社長、以下同)
自身も今年3月に娘が生まれ、育休を取得したという會田社長。今後も越境ワークのように社員が働きやすい環境を整えていきたいという。
「いわゆるハイブリッドモデル。みんなが集える場所、オフィスというのはあるけれども、そこに出社するか否かは個人の自由ということを担保するのがすごく重要かなと思っています。社会の課題に対して、何かしら解決できるたった一つのちっぽけな寄与かもしれないですけど、そこから施策を実施して、その取り組みを発信していくことがすごく重要なのかなと思っています」
こうしたRevCommの話を受けて、中学校卒業後に単身インドネシアのバリに渡った経験を持つ環境活動家の露木志奈氏は「その時も日本人のご家族は基本的に母子で海外に住んで、日本の夫から仕送りをしてもらうという形だった。これ(越境ワーク)は妊娠・子育てしながらでも家で働けるということで、女性でも働けるような環境が整ってきたように感じる」と話す。
また、こうした対応は企業の魅力にもつながるとし、「コロナで落ち着いているものの、留学なども普通になってきている世の中なので、移住という選択肢の中にリモートがあると行きやすいのではないかと思う」と述べた。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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