中国の内陸部、湖南省の張家界市にある景勝地「武陵源」。美しい広大な自然が広がり、2009年公開の映画『アバター』のモチーフとなった場所でもある。
中国国内の観光地に人々の姿が戻る中、今この大峡谷にもこぞって観光客が訪れているという。ANN上海支局の南出拓平支局長が現地から伝える。
観光客の目当ては、大峡谷にかかる橋。なんと床の大部分が「ガラス」になっており、300m下を流れる川を望むことができる。橋の長さは430mで、使われているガラスは99枚。観光客はガラスの上に座ったり寝転んだりして“映える”写真や動画を撮り、それをSNSにあげるのだ。こうした刺激的な場所が人気で、中国ではガラス橋だけで2000以上もあるという。
一方で、本当に“怖い”事例も起こっている。別のガラス橋で今月7日、ガラスが強風で吹き飛んでしまい、撮影された写真には取り残された男性が橋にしがみついている様子が写っている。この男性は無事救助されたが、さらに別のガラスの滑り台が崩落した事故では死者が出る事態に。ただ、この“ガラスシリーズ”は観光客から依然人気で、次々と作られているのだという。
橋を訪れている観光客を見るとほとんどマスクをしていないが、中国の感染対策はどのようになっているのか。「現在、屋内や公共交通機関ではまだマスクが必要だが、屋外ではしなくてもよい。中国国内の市中感染はこの1年近くほぼゼロで推移しているので、国内にいれば安心だというのが中国人の本音」(南出支局長)。
5月の5連休では延べ2億3000万人が移動したという。これはコロナの影響で減っていた去年の2倍以上だが、一昨年をも上回っていることからコロナ前の状況に戻っていると言える。
要因としては、コロナ対策で海外旅行ができない中、国内の旅行や消費に向けたこと。去年1年間は、ほぼ全国の主要な観光施設を無料にする、日本における“GoTo”施策が取られた。一方で、人を動かしたくない時の“not GoTo”施策もあり、今年の春節前に市中感染が出始めた時には、春節に帰省しない人に政府や企業がボーナスなどの金を配るなどしてうまく国民をコントロールした。
中国は抑え込みに成功しているように見えるが、日本との違いは何なのか。南出支局長は「根本的な違いは、日本はコロナを認めつつ経済も同時に進める“ウィズコロナ”政策だが、中国はコロナを1人も許さない、いわゆる“ゼロコロナ”政策。コロナ以降私も現地にいるが、短期的には厳しく見えても、あの武漢ですら3カ月のロックダウンの後に経済が回復しはじめていたので、長期的に見ると経済的なダメージは少ないのかなと思う」との見方を示した。
(ABEMANEWSより)