新型コロナウイルスのワクチン接種が順調に進むイギリス。外出制限が緩和され、一部の海外旅行も解禁された。現地の最新状況について、ANNロンドン支局の山上暢記者が伝える。
1月からロックダウンが行われているイギリスでは、飲食店は屋外の席であれば利用できるようになっていたが、17日からさらに緩和され屋内(人数制限あり)でも飲食ができるようになった。海外旅行はポルトガルやオーストラリア、ニュージーランドなど感染を抑え込んでいる一部の国への旅行が認められ、ヒースロー空港を取材したという山上記者は「大きなトランク、スーツケースを抱える人がたくさんいて、コロナ前の日常が戻ってきたように実感した」と話す。
イギリスの一日の感染者数は、20日が2874人。今年1月には6万人を超えていたことを考えると、現在は抑え込みに成功している。また、死者数は20日が7人で、6日連続で一桁台が続いている。
感染者数がリバウンドせず、重症化する人も劇的に減ったのは、やはりワクチンの影響が大きいと考えられる。「1月から3度目のロックダウンを実施して、人流をとにかく抑え込んでいる間にワクチン接種を進めた。成人人口の7割が少なくとも1回目を終えていて、2回目を終えたのは約4割。20日に対象年齢を34歳まで拡大したというアナウンスがあったので、順調にいけば今月中か来月中には30代全員に回るのではないか」。
日本ではワクチンの打ち手不足が問題で、歯科医師などにも協力を仰いでいるが、イギリスは医者以外でもワクチンを打てるように法改正。オンラインや現場での講習を受けて合格し、かつ医師の立ち会いの下であれば一般の人でも打てるという。
では、日本の感染対策はイギリスからどのように見えているのか。山上記者は「日本の評価はこの1年でいろいろなトーンがあった。去年の春先の第1波の時は“封じ込めに成功している”“ロックダウンをしていないのにどうして感染者数を抑え込めているのか”“人との接触リスクが少ない文化からだ”という報道が多かったように思う。ただ最近は、オリンピック開催の議論も相まって、緊急事態宣言が延長された時も“タフな制限をするといっていたのに実はタフではなかった”というように、日本の感染対策や制限に疑問を投げかけるような伝え方もあった」とした。
一方で、イギリスのコロナ対策は成功だとは見ていないという。「イギリスはヨーロッパでも最悪の12万人の犠牲者を出してしまった。ここ最近、ワクチン接種が成功して街中に人が戻りつつあるので、“イギリスは非常に成功している”“前向きな国じゃないか”という報じ方もあるが、コロナ対策全般を見れば決して成功だったとまだまだ言えないと思う。最初のつまずきで多くの犠牲者を出した時の教訓を生かすのが早かった、そしてワクチン接種に向けて準備するのが早かったのが、今の状況につながっているとは言えると思う」。