半導体は「国家の命運かける争い」 世界的な“取り合い合戦”の中で日本に必要な戦略は
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(5枚)

 「半導体戦略が今後の国家の命運をかける戦略・戦いになっていく。半導体を制するものが世界を制するといっても過言ではない」(自民党・甘利明税調会長)

【映像】麻生大臣「A・A・A。3人そろえばなんとなく政局」

 21日、安倍前総理大臣と麻生財務大臣、甘利税調会長という安倍前政権の中核を担った3人が顔をそろえて立ち上げたのは、半導体に関する議員連盟。菅総裁の任期が半年を切る中、「政局なのでは」と警戒の声も出ている。

 「A・A・A(安倍・麻生・甘利)。3人そろえばなんとなく政局って顔だから」(麻生財務大臣)

半導体は「国家の命運かける争い」 世界的な“取り合い合戦”の中で日本に必要な戦略は
拡大する

 そうした政局も意識してか100人を超える議員が参加し、議連は発足した。ただ、この議連はあくまで半導体産業を強化するための戦略を考える場だという。

 「まさに異次元のものを作らなければいけないと。そうした観点からすると、今日ここに麻生副総理、財務大臣が座っておられる。この議連のかなりの部分を達成しつつある」(安倍前総理)

 「半導体を制するものは世界を制す」とまで銘打たれたこの議連発足には、一体どのような狙いがあるのか。日本の半導体産業を取り巻く現状について、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主任エコノミストに聞いた。

 「半導体は、自動車であるとかパソコン、スマホ、最近だと家電、炊飯器や冷蔵庫などありとあらゆるところで使われている。いわば“産業のコメ”と言われているような、日々の生活になくてはならないもの。これからデジタル化あるいはグリーン化というところで、例えば自動車なら電気自動車といったものが主流になっていく中で、半導体はなくてはならないと位置づけがどんどん大きくなっていく。足元で半導体が足りない、これからますます必要になってくる中で、国家的な戦略として半導体を安定的に手に入れられる環境を用意していく必要があるということが背景にある」(酒井氏、以下同)

半導体は「国家の命運かける争い」 世界的な“取り合い合戦”の中で日本に必要な戦略は
拡大する

 そんな需要の増加に相反するかのように、日本の半導体産業は縮小の一途をたどっている。1988年には50.3%あった日本の半導体産業の世界シェアは、2019年には10%まで落ちこみ、今後さらに低下する可能性が高くなっているという。

 さらに酒井氏は、国内の半導体不足の原因として新型コロナウイルスの影響を指摘する。

 「コロナショックが発生して、去年の春は工場の稼働をストップさせてしまった。自動車の生産ができなくなって、半導体メーカーが自動車に割り当てていた半導体の枠をほかのIT関連のところに回したということが昨年起きた。その後、だんだん世界的に経済活動が再開して工場が動くようになってきて、自動車もかなり需要が戻ってきた。一方、半導体は急に需要が増えても供給は増やせない。急に自動車向けに供給は増やせないということが発生している」

 国内の生産でまかなえないとなった場合、海外からの輸入に頼らざるを得なくなるが、現在世界的にも半導体の需要は増加している。経済産業省によると、AIや5Gの普及により、世界の半導体市場は2030年には100兆円に上るという調査結果もある。世界中で「半導体の取り合い」が起っている状況の中、その中心になっているのがアメリカと中国だ。

半導体は「国家の命運かける争い」 世界的な“取り合い合戦”の中で日本に必要な戦略は
拡大する

 これまで世界シェアで後れをとってきた中国は、半導体の国産化を目指し、国家戦略として大規模な投資を開始。一方で、国内での生産を目指し体制を構築しつつあるアメリカは、技術や情報の漏えいを防ぐため供給網からの中国製の排除を呼び掛けている。酒井氏は、こうした動きを見ながら日本独自の強みを発揮していくことがポイントになると話す。

 「世界的に半導体が足りないという状況なので、市場のシェアが大きい米国、中国を中心に半導体の取り合い合戦になっているという状況。半導体に関しては、軍事に転用可能なハイテク分野の製品だということで、競争や情報の流出を防ぐための取り組みが激化している。半導体に関しても技術がお互いのところに漏れないように、アメリカで言えば中国に技術が転用されないように、中国に対する輸出を管理するといったことをこれまでしてきた。中国の方も、アメリカの輸出管理規制を意識しながら、自国の中で半導体を生産できるように舵を切っているという状況。アメリカや中国によるサプライチェーンの変化、こういった構造変化を見据えながら、それぞれに対してビジネスチャンスを見つけていくか。アメリカ、中国それぞれで国産化の動きがあるのであれば、半導体の材料や製造装置を輸出していく。いかにアメリカと中国の動きを見ながら日本の強みを発揮していくかということが、これからポイントになってくると思う」

 米中の動きと共に日本に影響を及ぼすと考えられているのが、製造能力の一極集中だ。現在、台湾が半導体供給の世界シェア2割を超えていて、最先端の技術を要す半導体に関しては世界の9割のシェアを占めているという。酒井氏は台湾での有事の際、台湾からの半導体の供給が途絶えてしまうリスクがあると危機感を募らせる。

半導体は「国家の命運かける争い」 世界的な“取り合い合戦”の中で日本に必要な戦略は
拡大する

 「TSMCという半導体の大手メーカーがあるが、非常にシェアを伸ばしている。最先端の技術を要する半導体に関しては、世界の9割を超えるシェアを台湾が占めている。そういう意味では、台湾に半導体の製造能力が集中しつつあるというのが今の状況。台湾有事が起こった場合は、台湾からの半導体の供給が途絶えるということもリスクとしてはありうる」

 今後、世界に対抗するため日本にはどのようなことが求められるのか。酒井氏は、「脆弱性の克服」と「競争力の確保」が重要だと話した。

 「『脆弱性の克服』というのは、特定の国・地域に半導体の供給を依存している、例えば台湾に依存していると、何かあった時に半導体を確保できない状況が起きてしまう。半導体を安定的に確保するためには代替的に調達手段を確保しておく必要があるということ。『優位性(競争力)の確保』でいえば、これからデジタル化、グリーン化といったものが世界的な潮流になってくるのは間違いない中で、半導体が重要なキーとなるファクターになっていくということなので、それをいかに確保して日本としての産業競争力を維持していくかということが重要になってくる」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

まるで相手が目の前に Googleの“3D新技術”
まるで相手が目の前に Googleの“3D新技術”
この記事の画像一覧
この記事の写真をみる(5枚)