静岡市の動物園で令和になって生まれたばかりのレッサーパンダが、親元を離れ名古屋市に引っ越しする。嫁入りだということだが、動物園にとってはある重要なミッションがあった。
りんごを頬張るシセンレッサーパンダの「れいか」。静岡市の日本平動物園で2年前の6月に生まれた。端正な顔立ち、そして器用な食べ方。テーブルマナーもわきまえているようだ。
アメリカ由来の母親と中国の血を引く父親から生まれた貴重な血統をもっているれいかは今月末、親元を離れることになった。
「名古屋の東山動物園が新しいレッサーパンダの獣舎を建てるということで、日本平動物園としても国内の貴重な血統の繁殖を進めていきたいため、今回東山動物園に移動することになりました」(レッサーパンダ担当飼育員の中村あゆみさん、以下同)
同じ動物園内の繁殖ではだめなのだろうか。
「だめではないですが、れいかが貴重な血統の中で一番若かったので、ほかの動物園に出す際に若くて適応能力が高く、長くその動物園で愛されるだろうと。一方で、うちの動物園にもメリットがあり、れいかがいなくなることで弟や妹が生活する場所が増えるんです。レッサーパンダは単独生活の生き物で、1つの部屋に基本は1頭しか飼育ができないため、部屋数を少し確保しなくてはいけない問題になる」
レッサーパンダは毛皮目的の乱獲などで野生の個体数が減り、国際自然保護連合の絶滅危惧種に指定されている。8頭を飼育する日本平動物園は繁殖に力を入れていて、国内にいる個体の種別の調整も担っている。
人気者のれいかを嫁に出すことは貴重な血統を維持するための決断だった。引っ越しは5月31日に迫っている。
「れいかは少し繊細なところがあって、まだ子どもみたいに小さなことに怖がるところが多々見受けられます。そういった意味でほかの子の引っ越しよりもちょっと心配ではあるけど、こういった試練を乗り越えて成長していってほしいという気持ちもあるので、応援したいと思っています」
もともと動物園の動物はそれぞれの園にとって大事な財産として扱われていて、絶滅を防ぐための繁殖という理由であっても、よその動物園に引っ越すということはそんなに簡単ではなかった。今回は「ブリーディングローン」という、繁殖を目的にして動物園同士で動物の貸し借りが無償でできる制度をとっていて、れいかは無償で貸し出されることになる。れいかが暮らしていくのは東山動物園だが、所有するのは日本平動物園になる。
(ABEMA/『ABEMA Morning』より)