9割が山岳地帯を占め、中国で最も貧しいともいわれる内陸部の貴州省に、テンセントやファーウェイ、さらにはアップルなどの巨大IT企業が続々と集結する特区が建設されている。敷地面積は東京23区の3倍に達する“ビックデータバレー”「貴安新区」だ。中国政府は2025年までに約1000億元(約1.7兆円)を投資する見通しだという。
厳しい山道を抜けると見えてきたのは、“ヨーロッパ風”の建物群。チェコの首都・プラハの街並みを模して作られたという、ファーウェイの巨大施設だ。貴州出身のCEOが、従業員が楽しく仕事ができる雰囲気にしたいと考えたといい、ここで170カ国分のデータ管理が行われる予定だ。
南部で海沿いの深センに本社があるファーウェイやテンセントが、なぜ山あいのこの土地に進出したのか。ANNの千々岩森生・中国総局長によると、内陸の貧しい地域に経済の“成長エンジン”を作りたいという政府の意向があり、標高1100メートルで夏は涼しく、冬も東京と同じくらいの気候が、大量の熱を放出するデータセンターの設置にうってつけだからだという。使用される電力も水力や風力発電で賄い、敷地内の公共交通機関はEVに限定するなど、環境にも配慮する予定のようだ。
「貴安新区」に拠点を設置するのは中国のIT企業だけではない。あのアップルも、提携する政府系企業がデータセンターを設置、すでに稼働を開始している。ニューヨーク・タイムズ紙は、ここで中国国内のユーザのメールや写真などiCloudのデータが管理されることから、中国政府による情報へのアクセスを懸念。ただ、アップルは「セキュリティに関しては一切の妥協をしていない」と回答しているという。
千々岩総局長は「私もiPhoneを使って実際に中国国内の友人や取材相手とのやりとりを行っているが、それらの情報は確実にこのデータセンターに集まるということになる。アップルがいくら大丈夫だと言っても、何かあった場合には政府に情報提供をしなければならないという法律もできている。どこまでの情報を、どのように管理されているのか気になるところだ」と話していた。(ABEMA NEWS)