中国南部・雲南省の昆明市。人口800万人を超える大都市にいま迫っているのが、15頭の野生のアジアゾウの群れだ。
車が行き交うはずの道路をずんずんと進むゾウたち。ゾウは興奮すると人を襲う可能性があるため、地元当局は付近の住民を避難させるなど混乱が続いている。
中国メディアによると、ゾウの群れは去年3月、自然保護区から16頭で北進を始めた。去年12月に赤ちゃんゾウが生まれ17頭に。その後2頭は南下し、現在は15頭になっているという。15頭はこれまで500km以上を移動、3日に昆明市に入り、都市部まで数十km、大きな集落まで約5kmの地点にまで迫っている。
ゾウが通り過ぎた玉溪市を取材するANN中国総局の北里純一記者は、「自動車販売店の門がゾウに鼻でつつかれて少し壊れてしまったと。この広い通りを通ったという映像がニュースで何度も放送されてきたが、ここに来て感じるのはあれだけ通ったのに意外と被害が少ない。物を壊したり店に突っ込んだような形跡もないが、動画を見ると怪獣映画を見ているような記憶が蘇る気持ちだ」と説明する。
なぜゾウは北進しているのか。中国メディアは様々な可能性を報じているようだが、「もともと住んでいた南のエリアの食料が不足してきて、エサを探していろいろ動いているうちに迷ってしまったのでは」という説が多いという。
ゾウの群れが今いるのは玉溪市から車で1時間ほどの山の中だそうで、中国当局はドローンなどを使って現在地を補足しているという。では、このまま北進を続け昆明市に入ってしまうとどうなるのか。
「住宅密集地などにゾウの群れが入ってしまうと人や民家への被害も懸念されるので、当局は大きなトレーラーを進路に並べて住宅街に向かわないよう誘導したり、エサを撒いて誘導する、電流が流れる柵を作って入れないようにするなどいろいろな対策をとっている。これまでも自然保護区を出た段階から監視をしていたようだが、去年夏には群れが侵入した集落で1人が亡くなる事件もあった。そういった意味でも、これだけ都市部に来てしまった、多くの人の目につく場所に辿り着いてしまったとなると、『なぜその前に止めなかったんだ』という批判にさらされることになるかもしれない」