「注意されないことに戸惑い。社会人として大丈夫なのか」パワハラを恐れ指導が減ってしまった職場に不安を抱く若手社員たち
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 「“パワハラ”だと受け取られてしまうのではないか」と部下への接し方に苦慮する上司たち。一方、注意をしてもらえないことに、どこか“物足りなさ”を感じる部下たちもいる。3日の『ABEMA Prime』では、こうした問題に悩む当事者に話を通して、“指導”のあるべき姿を考えた。

・【映像】パワハラと指導の境界線は?叱れない上司と叱られたい部下

■「社会人としてこのままでいいのか、不安になる」

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 ・厳しい指導や指摘を受けた記憶がなく、ふとした時に“自分はこのままで、果たして社会人として大丈夫なのかな”不安になることがある。私は叱られたりすることでの成長を求めている(女性、IT)

 ・一言で終わるようなところを、ゆるーく、時間をかけて言うことが多い気がする。あまりにも優しく言われるので、逆に自分に興味あるのかなって思っちゃうレベル(男性、IT)

 ・私の上司はズバッと端的に伝えることが多いので、厳しいといえば厳しいのかもしれない。確かに言われて凹むこともあるが、私のために労力を割いてくれているのは有り難いと感じている(女性、広告

 新卒3年目の若手社員たちからは、そんな声が上がる。

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 「ドラマに出てくるような、もうちょっと厳しいことを言われるのかなというイメージがあったので、想像以上に言われないことに戸惑いがある」。そう話すのは、同じく社会人3年目の小野さん(仮名、25)だ。厳しく指導にあたる文化が存在しない企業に入社した結果、やはり「社会人として大丈夫かな」という不安がよぎるのだという。

 「評価をフィードバックしていただくとき、上司から見ればできていないこと、改善点がたくさんあるだろうなと思っているが、そういう話は丸めて、良かった点の方を話してくれる。親身に向き合ってくれるし、不満があるというわけではない。かといって、物足りないというのは言い過ぎかもしれないが、企業全体として見た時にどうなのか、あるいは私が後輩に指導するときはどうしようか、とは思う。私自身は手取り足取り教える文化がないということが分かってからは、周りの空気を察して“こうやったらいいんだ”と能動的に動こうと考えるようになったが…」。

■「他の部下と同じ指導をしたつもりだったが…」

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 一般社団法人「日本ハラスメント協会」の村嵜要代表理事とオンライン面談をしているのは、企業の研究職にある男性(40代、課長職)。部下がミスをした際、「人としてどうかと思うよ」「会社にいなくていいんじゃない」「そんな感じだったら辞めちゃえば」などの暴言を吐いたという。

 「なんで同じこと繰り返すんだとか、なんでできないんだといった言葉もパワハラになりうると思っていただいた方がいい。部下によっては委縮して、“すみません、すみません”しか言わなくなってしまう。そうなれば、“自分の意見を持たない部下だ”と、さらに自分のイライラ度が増してしまう」(村嵜氏)。

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 一方、「営業所長という立場上、指導・教育も仕事の一つだし、それが企業の成長にもつながると思っている。ただ、そのやり方については難しいと感じる毎日だ」と話すのは、50代の中村さん(仮名)。最終的に社内のパワハラ認定は受けなかったものの、その指導が“威圧的”と判断された経験を持つ。

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 「私ども営業所の人間の仕事は杓子定規にいかない場合が多い。営業マンとしてはスピードを求められることもあり、個々人に合った言い方を考えながら指導できるかというと、なかなか難しい面もある。社内で“パワハラ疑惑”とされた言動についても、相手の受け取り方がどうだったのか、その時には分からなかった。地位や権力を使ってということでは全くないし、経験を活かし、他の部下と同じ指導をしたつもりだった。それで成長してくれた部下もいるし、なぜだろうと腑に落ちないところもあった。

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 幸い、同僚や部下たちは私のことをかばってくれるような形だったが、私のような考え方をしているのは少数派で、やはり叱られたくない、注意されたくないという人の方が多いと思う。やはり私の言動も行き過ぎた指導だったと思われるということだし、前の所長も退職していることもあって、今は上司に逐一相談しながら、個人だけで抱えず、会社も巻き込んで生産性を上げていこうと考えている」。

■「それぞれの価値観、優先順位を分かろうとするプロセスを」

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 「今の子は打たれ弱いせいか、強く叱れないので扱いに困る」「成長を願って厳しく接するとすぐ辞める」などと感じて萎縮し、“叱らない上司”になってしまうのは会社にとってもマイナスだと話すのは、日本アンガーマネジメント協会の「パワハラ防止アドバイザー」の阿井優子さんだ。

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 阿井さんは「効果的な指導がなされなければ人材が育たず、新しいアイデアも出にくくなる。結果として数字に繋がらず、組織全体の生産性も下がってしまうかもしれない」と指摘、感情をコントロールするためのトレーニング「アンガーマネジメント」や、様々な価値観を持った人がいることをチーム内で“見える化”する必要があると訴える。

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 「それでも一緒に仕事をしていると、組織としてやるべきことから逸脱してしまうケースが出てくる。そういう場合に、なんでもありだと許容していては、みんなが勝手に動いて生産性が下がってしまう可能性もある。どのような叱り方が効果的なのか、うまく叱ることで育成につなげるにはどうしたらいいのかを考え、チームとして何を目指しているのか、そのための行動規範はどうあるべきかを一緒に作っていくということが大切だ。言われる側もすぐに“パワハラだ”という受け止め方をするのではなく、“私はこのことを大事にしているが、この上司はこのことを大事にしているんだ”と、お互いの優先順位を分かろうとするプロセスが必要だと思う」。

■夏野剛氏「3分の1は3年以内に辞めるという前提で」

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 ドワンゴ社長の夏野剛氏は、IT業界の人材の流動性の高さを踏まえて「僕の場合、学生には“石の上にも3カ月だ”と言っている。3年もいる必要はない。合わないと思ったら3カ月でも環境を変えることが大切だ。職場にもよるだろうが、新卒で入社した人のうち、3分の1は3年以内に辞めるといわれている。つまり、同じ会社に一生いるという価値観ではないということだ。上の世代が若かった頃にはそんなことはなかったと思うので、前提が違うということを理解した上で付き合った方がいい」と指摘する。

 その上で、「お互い社会人である以上、教育とか育成とかではなく、成果を出すために何ができるのかということを真剣に考えればいい。経験が長いから教えられることが多いという時代では無くなってきているし、新しいやり方がいい場合もある。その意味では年齢も関係ない。そう考えると、怒ったりするよりも評価を下げて、気づいてもらうしかないと思う。そこでどういうスタンスになるかが問題で、その状況に対して一生懸命何とかしようとする人と、ただ受け身な人に分かれてくる。後者は怒ってどうにかなる問題ではないので難しいということだ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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