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 1998年に開催された長野オリンピックにて、日本スキージャンプチーム・通称“日の丸飛行隊”はラージヒル団体で日本初の金メダルを獲得。その栄光の裏には、誰も知らない25人のテストジャンパーたちが起こした奇跡があったーー。

 奇跡の金メダルの裏にあった実話を描く映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』が6月18日(金)より公開される。俳優・山田裕貴眞栄田郷敦は、田中圭演じる主人公・西方仁也とともに“テストジャンパー”として日本代表を支える高橋竜二と南川崇を演じる。地上約130mの高さでの“実力派ジャンパー”としての演技、さらに山田の演じた高橋は聴覚障害のある選手という人物だ。二人はこの難役にどのように挑んだのか。長野ロケでの日々を振り返ってもらった。

スタートゲートから見る景色に感動「スキージャンプをしたいという気持ちが分かりました」

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――個人的にもとても印象深い試合で記憶に残っているのですが、裏にあった物語驚きました。

山田:全く同じ気持ちです。当時僕は小学生で、テレビで見ていました。「日本金メダル~!」となった瞬間が、今でも写真のように記憶に残っています。日韓ワールドカップとか、ベッカムがいた!とか、そこまで強く印象に残っている出来事ってあまりないじゃないですか。でもスキージャンプのその瞬間は、それらと同じようにすごく覚えていました。

テストジャンパーという人たちがいるということは、台本を読んで初めて知りました。西方さんのような元メダリストの人もそういったところで活躍していたのだと。しかも吹雪で競技が中断されている中、「テストジャンパーが25人連続で飛ばないとオリンピック終わりです」という。テレビの向こうでは、こんなことが起きていたなんて。衝撃が大きかったです。

眞栄田:実は僕はまだ生まれてなかったので、この話を全く知らなかったのですが、台本を読んで、これがフィクションじゃないんだ、こんなことがあるんだという感覚でした。でも、読んでいくうちに、スッと心に入ってきました。いろんな人の思いが伝わってきて、胸が熱くなりました。

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――綺麗事だけじゃない登場人物たちの心理描写がリアルですよね。お二人はテストジャンパー役ということで、実際には飛ばないにしても、ジャンプ台まで登ったり、動作練習したりと、体力面での役づくりも大変だったのではないでしょうか。

山田:食事制限とかしていましたが、(眞栄田を指して)横にすごくストイックな人がいたので、僕はやっていたとは言えないレベルです(笑)。僕は途中で食べちゃったりしてました。

眞栄田:いえいえ(笑)。

山田:スキージャンプの選手に見えなければいけないので、ボードの持ち方ひとつ、ジャンプ靴をはく動作ひとつ、外す動作ひとつ、すごく意識しました。選手の方は軽々とやっているように見えますが、ジャンプ台のスタートゲートに行くまでも大変なんです。

眞栄田:あれはきつかったですね。自分の腕で体を持ち上げてスターティングバーの上を進んでスタート地点までいくんですけど、大体選手の方は三回くらいの動作でスタート地点に行っていたので、それを目指しました。

山田:板もものすごく長いので、ジャンプ台の階段のようになっている部分に当たってしまうんです。僕らがいかにお芝居を頑張っても、そういう細かな、ジャンプ選手としての仕草ができていないと、選手に見えないので大変でした。

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――スタートゲートの高さは地上130mだと聞きました。恐怖心は湧きませんでしたか?

眞栄田:それが意外に斜面に建てられていたので、地面がずっと続いている感じで「高い!」ってなることもなく怖くなかったです。靴がすべってヒヤッとすることはありましたが、それ以上に「いい景色だな」と感動していました。

山田:僕もそっちのタイプでした。

眞栄田:「きれい~ここ飛んだら気持ちよさそう~!」って思っていました(笑)。

山田:あそこに立ったらスキージャンプをしたいという気持ちが分かりました。アクション部さんが僕らに命綱をつけてくれていたからそう思えているだけなんですけど(笑)。でも、もうちょっと滑っていたいなと思いました。

――お二人は元々スキーはやられていたんですか?

山田:僕は今回が初めてで、屋内スキー場みたいなところで練習させてもらいました。あ!郷敦はカナダで滑っていたので!カナダから来たスキープレイヤーです(笑)。

眞栄田:でも、スキージャンパー役にはそんなに役に立ちませんでした(笑)。

山田:屋内スキー場でも上手に滑っていましたよ!

田中圭と山田裕貴の芝居合戦 眞栄田郷敦「二人を見て燃えました」

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――山田さんが演じたのは聴覚障害のある役。そう言った意味でも難しかったのではないでしょうか。

山田:ご本人の高橋竜二さんと会ってお話もさせていただいて、高橋さんは手話を使っていませんでした。なので手話は使わずにやろうと思いました。

障害のある方々の言葉の出し方、何が発音しにくいのかということを学ぶ勉強会なども参加させていただき、たくさん聞いて口にしながら掴んでいきました。

耳が聞こえない方はずっと相手の口の動きを読んでいる。なので、僕も目線をずっと口にいくようにしたり、音がしてもそれに反応せず、誰かが向いたからそれを見て向くとか、そういった細かなとこに気を遣いました。

実際にやって気づいたのですが、声にしても、自分の出す言葉でうまく伝えられてないかもしれないと思うんです。ちゃんと伝わっているのかと不安になる。なので、表情も大きくなるし、体も動く。ボディランゲージが大きくなりました。伝えたい、読み取りたいという気持ちが自然と強く生まれたので、そこを重要視しました。

――眞栄田さんや田中さんも、高橋(山田)と話しているときは、ゆっくり喋っていて、リアルだなと思いました。

眞栄田:絶対に伝えたいことはゆっくり喋っていました。

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――長野ロケ中は、田中さんと3人でお風呂に入ったりと親睦を深めていたとお聞きしました。

山田:みんなで結構入ってました!

眞栄田:3人と限らず、誰と入ってるかわからなくなるくらい入ってました(笑)。風呂にいったら大体誰かに会う。

――そのコミュニケーションはどのようにして生まれたんですか?

山田:宿に帰って「風呂一緒に行く~?」という声がけが日々あって。「俺卓球行きます~!」って日と「今日は一緒に行こうかな」っていう日がありました(笑)。

――実際に合宿してるような感じだったんですね。

眞栄田:コンビニ行くのにも20分くらいかかるようなところだったので、外に出ることもなく、宿内にいて、風呂に入るか卓球するかビリヤードするか部屋にいるかって感じでしたね。

山田:そのおかげで仲良くなれて楽しかったです。

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――座長としての田中さんはいかがでしたか。

山田: 圭さんは、お芝居を見ていても、痺れるなと思う瞬間がたくさんありました。周りに対して、「自由にやっていいよ」「好きにやっていいよ」というスタンスなんですけど、自分は自分の仕事をちゃんとやっていて、その姿を見て僕らもさらに気が引き締まる。圭さんに僕たちも食らいつけるように、負けないようにという気持ちになりました。

でも撮影が終わればみんなに声をかけて、ご飯に連れて行ってくれたり楽しくワイワイ過ごさせてくれました。

眞栄田:裕貴さんが圭さんを見て引き締まるとおっしゃっていましたが、芝居で返すその姿を見て、僕も引っ張っていただきました。二人を見て燃えました。

山田:郷敦はすごく可愛い後輩でした。「どうですかね?」って聞いてくれることがうれしかった。「そのままでいいんだよ、好きなようにやったらいいんだよ」って背中を押したくなる。

眞栄田:僕は普段、現場で誰かに相談することなんてほぼないんですけど、裕貴さんも「好きにやったらいいんだよ」というスタンスでいてくれたので、相談することができました。

――素敵な関係ですね。チームワークの良さが映画からも伝わりました。最後に見所をお願いします。

眞栄田:登場人物一人一人に個性があり、想いがあり、ドラマがあり、その一つ一つに胸が熱くなる作品です。

山田:表舞台に立つ人の裏側にはたくさんの人が関わり、悩み、支えてくれています。生きているすべての人が主人公であることを伝えたいです。

――本日はありがとうございました。

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ストーリー

 1998年長野五輪。日本スキージャンプチーム・通称“日の丸飛行隊”は国民の期待を一身に背負ってラージヒル団体で日本初の金メダルを狙っていた。そこに、エース原田のジャンプを特別の想いで見守る男がいた。元日本代表・西方仁也だ。前回大会・リレハンメル五輪で西方は原田とともに代表選手として出場。西方は日本代表最高飛距離135mを飛び、金メダル目前だったが、原田がジャンプを失敗。銀メダルに甘んじた。西方は4年後の長野五輪での雪辱を誓い練習に打ち込み、代表候補として有力視されていたが、まさかの落選。悔しさに打ちひしがれる中、テストジャンパーとして長野五輪に参加して欲しいと依頼される。

 テストジャンパーとは、競技前にジャンプ台に危険がないかを確かめ、競技中に雪が降った際には何度も飛んでジャンプ台の雪を踏み固めるジャンパーのこと。西方は裏方に甘んじる屈辱を感じながらも、様々な思いを抱えて集まっていたテストジャンパーたちと準備に取り掛かる。

 そして、五輪本番。団体戦の1本目のジャンプで、またしても原田が失敗。日本は4位に後退してしまう。しかも猛吹雪により競技が中断。このまま競技が終れば、1本目のジャンプの結果のみで順位が決定してしまう。

 そんな中、審判員たちの判断は、「テストジャンパー25人が全員無事に飛べたら競技再開する」というものに。奇しくも、日本の金メダルへの道は、西方率いる25人のテストジャンパーたちへ託されたのだった…!

文:堤茜子

写真:You Ishii

(c)2021映画「ヒノマルソウル」製作委員会

映画『ヒノマルソウル ~舞台裏の英雄たち~』公式サイト
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